2008年11月16日(日)
#58 ルーズヴェルト・サイクス「Sweet Old Chicago」(Blues by Roosevelt "The Honey-Dripper" Sykes/Smithsonian Folkways)
ルーズヴェルト・サイクス、61年の録音。彼のピアノによる弾き語り。おなじみロバート・ジョンスン「Sweet Home Chicago」を改題したナンバーである。
ブルース界には、やたら「キング=王」が多いが、「プレジデント=大統領」とよばれるアーティストは特にいないようである。
ジャズ界においてプレス(プレジデントの略)といえば、当然、レスター・ヤングということになっているが、もし、ブルース界でひとりプレスの称号を与えるとすれば、このルーズヴェルト・サイクスをおいてあるまい。
なにせ、名前からしてルーズヴェルトである。フランクリン・ルーズヴェルト大統領にちなんで命名された出生時(1906年)から、彼の大物ぶりは始まるといってよい。
戦前・戦後を通して、常に第一線で活躍、約50年に渡ってアメリカ国内でレコーディングを続けただけでも、その実力はハンパでない。
チョビ髭にオールバック・ヘアといい、押出しのいい体型といい、ミュージシャンにならなければ政治家になっていそうなキャラ。まさにブルース界のプレスである。
さて、今日紹介するのは、ロバート・ジョンスンの作品を、サイクス流にピアノ弾き語りにアレンジしたもの。タイトルも、都会風にちょっと洒落た「Sweet Old Chicago」に変えてあり、歌詞も結構変えてある。
ロバート・ジョンスンの原曲が、田舎に住みながら大都会シカゴを思う、そういう曲であるならば、サイクスのこの曲は、シカゴに長年住む者が、古きよき時代をしのぶ、そういう曲に仕立てられている。まさにアーバンなブルース。
弾き語りながら、原曲ではギターの低音弦が紡ぎ出していたブギのリズムを、ピアノの左手に置き換え、見事なノリを生み出している。
さすが、かのメンフィス・スリムにピアノを手ほどきしたというサイクス。そのリズムには、寸分の隙もない。
そして、特徴ある高めの声で、思い切りシャウトするボーカル・スタイル。これもサイクスならではの強烈な個性だ。
ロバート・ジョンスン、そしてその影響を受けたエルモア・ジェイムズ、マジック・サムらの、一連の流れとはまた違った、見事なアレンジに、ただただ感服。
他人の曲を演っても、自分の味にきちんと仕立てる、これが一級のミュージシャンの証明だと思う。
ジャズィな雰囲気を持ちながらも、ブルースのダイナミクスを持ち続けた、ワン・アンド・オンリーなサイクス。その歌声とピアノに酔ってくれ。
【追記】
本日、ある方から、本欄についてご意見のメールを頂戴しましたので、この場を借りて、レスさせていただきます。
「本欄の記述につきまして、事実との違いは多々あろうかと思います。それにつきましては、当方の浅学を恥じるしかございません。
しかしながら、ここは報道あるいは学術的なサイトではございません。いわば個人のひとりごと、趣味に関するオダを、脈略なく書き連ねたページにすぎません。たかだか一日数件のアクセスしかないサイトですから、社会的な責任など、あろうはずもないと思っています。
「こんなバカなことを書いている人もいるんだ。笑止千万」と呵々大笑されるのが、本欄に対する、もっとも正しい反応ではないかと思っております。
さまざまなご指摘をいただいたことは、ありがたく存じますが、本欄は今後もこのスタイルを変えずにやっていくつもりです。
よろしくご了解をお願いいたします。MAC拝」