2014年1月19日(日)
#303 ギャラクティック・ウィズ・ウォルター・ウルフマン・ワシントン「I Want To Know」(Jam Cruise)
#303 ギャラクティック・ウィズ・ウォルター・ウルフマン・ワシントン「I Want To Know」(Jam Cruise)
youtubeのような動画サイトでは、かつては海外に行かないことには絶対目にすることのできなかったミュージシャンのライブ映像を、毎日好き放題観ることが出来る。これってどう考えてもスゴいことだよな。思わず「ネット万歳!」と叫びたくなる。
きょうは日本でオンエアされることのない、アメリカの音楽番組「Jam Cruise」からのピックアップだ。2009年6月収録、CD/DVD未発売。
ニューオーリンズのジャム・バンド、ギャラクティックと、同じくNO出身のシンガー/ギタリスト、ウルフマン・ワシントンの共演ライブとくりゃあ、好事家にはヨダレが出るような代物だ。
ワシントンは、43年生まれの70才。ジャンル的にはブルースになるんだろうが、NO出身だけにその音楽性はR&B、ファンク、ジャズなど多様性に富んでいて、一筋縄ではいかないミュージシャンだ。ワイルドな歌いぶりから、そのウルフマンという異名がついたようだ。
かたやギャラクティックは、90年代初頭から活動しているバンドで、現在は5人編成。歌もの、インストともにこなし、その音楽性もジャズとファンクをベースに、ロック、ヒップホップまで取り込んだ先端的なサウンドで知られる。この二者ががっぷり四つに組んだんだから、聴きごたえがあるのも当然だろう。
ギャラクティックは、結成当初から2004年まではセリル・デクロウというリード・ボーカリストを擁していただけに、歌伴にも長けたバンドだ。このライブでは、メンバーに加えてトロンボーン・ショーティ(tb)、ビッグ・サム(tp)というゲストも加えての三管体制、分厚いホーン・サウンドを聴かせてくれる。
ホーンのイントロを聴いて「おや?」と思ったかたもいることだろう。ジョニー・ギター・ワトスンの「I Want To Ta Ta You Baby」にクリソツなんである。曲調も、ほぼおんなじ。
ワシントンはNOのシンガー、リー・ドーシーのバックからスタートしたが、その後、同じくNOを代表する人気シンガー、ジョニー・アダムスのバックを20年の長きにわたってつとめており、そこから独立してソロとなった。だから、ジョニー・アダムスの歌には多大な影響を受けている。でも、曲作りとかに関しては、テキサス系のジョニー・ギター・ワトスンのほうに、より強くインスパイアされたようだ。ギター・ソロを聴くと、そのペケペケしたタッチは、ジョニー・Gそっくりだ。
というわけで、オキニなミュージシャンからの影響がモロに出てしまうワシントンなのだが、ステージングは実にカッコいい。自分の息子ぐらいの世代にあたるギャラクティックの連中を従えて、ときには色っぽく、ときには激しくシャウトしまくるそのさまは、日本の60代シンガーには求めるべくもないものだ。彼岸の歌文化の厚み、これは真似ようったって真似られるもんじゃないね。
日本にも、ギャラクティックに負けないくらいの演奏力を持ったプロミュージシャンは大勢おり、メンバーの粒の揃ったバンドも少なからずある。だが「歌」に焦点を絞れば、此岸の状況はあまりにお寒い。
現在レギュラーシンガーをもたないギャラクティックでさえ、現メンバーがちゃんと「歌える」。それだけ、歌うという行為がバンドマンとして当たり前の文化土壌があるのだよ、彼の国には。この差は、大きい。
ともあれ、グッド・ミュージックには、くだくだしい説明は、これ以上不要だろう。とにかく、このヒップなライブを観て、熱いものを感じてくれ。