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音盤日誌「一日一枚」#305 アルバート・キング「Truckload of Lovin'」(Rhino/TOMATO RS 70399)

2022-09-15 05:00:00 | Weblog

2006年2月5日(日)



#305 アルバート・キング「Truckload of Lovin'」(Rhino/TOMATO RS 70399)

AMGによるディスク・データ

アルバート・キングのトマト・レーベルにおける最初のアルバム。76年リリース。バート・ド・コトー、トニー・シルバースターによるプロデュース。LA録音。

古巣のスタックスからユートピアに移り心機一転、リリースされた本作は、西海岸の名うてのスタジオ・ミュージシャンでバックを固めている。

クルセイダーズのメンバーとしてもおなじみのジョー・サンプル、プロデューサー兼任のバート・ド・コトー(ともにキーボード)、ギターのワー・ワー・ワトスン、ベースのチャック・レイニー、そしてデレク&ドミノスにも在籍していたドラムスのジム・ゴードン、などなど。

楽曲はすべて他のアーティストの作品。プロデュースも含め、完全に「おまかせ」のスタイルで歌とギターに専念しているアルバートなわけだが、これがなかなかリラックスした、いい感じのプレイを聴かせてくれる。

バックのサウンドは、スタックス時代に比べると、いかにも「軽い」感じなのはいなめない。オルガンよりはピアノがメインのキーボードといい、明るめの女声コーラスといい、ストリングス・アレンジといい、南部サウンドのあのドロッとしたイメージはほとんど消えてしまっている。これは聴き手によっては、好き嫌いのわかれるところだろう。筆者的には、西海岸系フュージョンも嫌いでないので、これはこれでありかなという感じだ。

ま、バックの音がどう変わろうと、主役のアルバートの歌・ギターに変化が出るわけではない。相変わらず、黄金のワンパターンで通している。それでいいのだ(笑)。

全体に、当時のブラック・ミュージックの流行、すなわちディスコ・サウンドの隆盛を意識して、スローよりはアップ・テンポ中心、ダンサブルでノリのいいナンバーが多いような気がする。

たとえば二曲目の「GONNA MAKE IT SOMEHOW」とか、四曲目の「I'M YOUR MATE」とか、六曲目の「HOLD HANDS WITH ONE ANOTHER」とか。特に最後のはアレンジにもろ、ディスコ・オリエンテッドなものを感じとれる。ベースのレイニーも張り切っていて、ノリのよさではアルバム随一かも。

もちろん、一般ウケを狙った曲だけでなく、アルバート本来のよさが一番出る、スローでディープなブルース・ナンバーもしっかり演っているから、ご安心を。

たとえば三曲目の「SENSATION, COMMUNICATION TOGETHER」や七曲目の「CADILLAC ASSEMBLY LINE」がそれだ。前者などは女声コーラスや弦がフィーチャーされていて、いつもとはひと味違ったスロー・ブルースなのだが、それでも十分、アルバートの十八番、泣きのギターを堪能出来る。これがなくちゃ、アルバートじゃないもんな。

また後者の、重量感あふれるビート、マイナーなメロディ・ラインも、実に魅力的だ。

ホーンにストリングスもからみ、複雑な味わいを醸し出すバック・サウンドもいい。雄大なスケール感がある。

が、なんといっても、そういった「集団」の音にたったひとりで向き合い、それらすべてと拮抗した歌、ギター・プレイを披露するアルバート、彼の存在感はスゴい。「圧倒的」のひとことである。

やはり、何十人が参加していようが、誰がプロデュースしていようが、本盤はアルバート・キングの作品に他ならないのだ。

アルバートの歌って、声量とか声域とかそういった切り口では、BBやフレディら他の「王様」たちには劣るけど、むしろ、あの「力み」のないリラックスした歌いぶりこそが、彼ならではの魅力なのだと思う。

歌とは「力技」だけがすべてではない。肩の力を抜いた歌にこそ、実は説得力があったりする。なんとも奥が深いのである。

全体に軽く、明るめ。ディープなドロドロのブルース・サウンドを求めるリスナーには、肩すかしかも。

名盤という括りには入りそうにない本作ではあるが、アルバートらしさの出たアルバムであると筆者は思っている。

聴けば聴くほど、新たな魅力を発見する。そういう一枚なのだ。

<独断評価>★★★


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