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音盤日誌「一日一枚」#304 瀬川洋&トラヴェリン・オーシャン・ブルーバーズ「リブ・イン・ライブス」(キャプテン・トリップ・レコーズ CTCD-257)

2022-09-14 05:00:00 | Weblog

2006年1月29日(日)



#304 瀬川洋&トラヴェリン・オーシャン・ブルーバーズ「リブ・イン・ライブス」(キャプテン・トリップ・レコーズ CTCD-257)

トラヴェリン・オーシャン・ブルーバーズの公式サイトによるディスク・データ

瀬川洋(ひろし)率いるトラヴェリン・オーシャン・ブルーバーズ(以下TOBと略)の二枚目にして初のライブ・アルバム。2000年リリース。瀬川洋プロデュース。吉祥寺「マンダラII」、高円寺「JIROKICHI」にて録音。

瀬川洋といえば、現在もカルト的人気をほこるGS「ザ・ダイナマイツ」のリードボーカルにして中心メンバーだったひと。ギターの山口富士夫(あの「村八分」のひとね)と人気を二分していた。

ダイナマイツが69年に解散した後は、72年にアルバム「ピエロ」でソロ・デビューしたものの、その後メジャー・シーンからふっつりと姿を消していた。

そんな彼が、このTOBを率いてわれわれの前に再び姿を現したのが、97年。四半世紀を経て、まさに不死鳥のように甦ったのである。

このアルバムを録音したメンバーは、瀬川、ギターの大戸敏文、ベースのシゲ(女性)、ドラムスのゆかりこと上原裕、そして準メンバーとしてギターで森園勝敏、キーボードでKYONが加わっている。

みなさん、もう、このラインナップを見ただけで、ワクワクしてくるでしょ。どんなスゴい音を出すんだろうって。

で、その期待を全く裏切らない、ホンモノの手応えガッツリのライブなんです、これが。

オープニングは、J・J・ケイル作の「コール・ミー・ザ・ブリーズ」。レイナード・スキナードでもおなじみのナンバー。いきなり、この選曲かよ。シ、シブ過ぎです(笑)。

続くはTOBのデビュー盤からのナンバー「通り雨」。もちろん、瀬川のオリジナルだ。

彼が日本語で歌を作ると、結構カントリー・フレーバーの強い曲になる。ボーカル・スタイルもそれっぽい。ダイナマイツ以来のパブリック・イメージでいえば、彼は「黒っぽいボーカル」のひとなのだが、意外な一面を持っているのだ。

お次はなんと、デイル・ホーキンスの「スージーQ」。おなじみのCCRスタイルで演っているのだが、これが実にカッコいい。歌も、演奏も。

瀬川のボーカルは、格別太い声でもないし、声量で勝負するタイプでもないが、R&Bやロックン・ロールのツボを見事におさえた歌いぶりである。「エイゴのウタの歌いかたをわかっておるのぉ、おぬしぃ~」といいたくなる。

日本人で、これだけちゃんと海のむこうの曲の歌いかたをわかっているひとは、そういるものではない。30年以上、エイゴの歌と悪戦苦闘してきたこの筆者がそう言うんだから、間違いない(笑)。

ある意味で、クワタ以上に「それ系」の音楽のツボをこころえているのではないか。そう思う。さすが、米軍キャンプで鍛えられてきただけのものがある。

さて、その後も、涙ちょちょ切れな選曲は続く。ユーモラスなカントリー調オリジナル「フーズ・ゴンベ?」をはさんで演奏されるのが、ニュー・オーリンズ系のR&Bシンガー、クラレンス・フロッグマン・ヘンリーの「流れ者(AIN'T GOT NO HOME)」と、こちらもまたNO産の名曲「ROCKIN' PNEUMONIA AND THE BOOGIE WOOGIE FLU」(ヒューイ・スミス作)。瀬川の歌がごきげんなのはいうまでもなく、バックのモリも、ドクター・キョンも、最高にノリノリなプレイを聴かせてくれる。必聴です。

そしてきわめつけは、ルーファス・トーマスの「ウォーキン・ザ・ドッグ」。ダイナマイツ時代にもカバーしていたこの名曲を再び熱唱。もう、聴いていて、目頭が熱くなりまっせ。

「あの娘のレター」もいいすな。ボックス・トップスとも、ジョー・コッカーとも異なる、TOBならではのちょっとひねったアレンジが聴かせる。

そしてたたみかけるようにして、ゼムの「グロリア」で聴衆をノックアウト。シンプルなリフの繰り返しが、ヘビー級ボクサーのボディ・ブローのように、聴く者の体にずっしりと効いてくる。

最後はひたすら快調に飛ばしまくる「ルート66」。オリジナル曲「さよならベイビー」の歌詞も折り込みつつ8分半、最後までグイグイとオーディエンスを引っ張っていくパワーはスゴいの一言。ホンマもののアーティストだけがなしうる力技である。

最後にアンコール「楽しい日曜日」でステージは幕を下ろすが、11曲、これぞR&B、これぞロックン・ロールといえる濃ゆ~い演奏が目白押し。

この一枚を聴けば、日本人にだって十分エイゴのウタを歌えることが判る。

阿佐ヶ谷の不良少年・瀬川洋も、はや50代後半。でも、いまだに枯れることなく不良を続けているのはうれしい限りだ。筆者も彼を見習って「死ぬまで不良」、これで行くつもりでっせ。

<独断評価>★★★☆


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