2023年2月23日(木)
#463 DAVID LEE ROTH「A LITTLE AIN’T ENOUGH」(Warner Blos. 9-26477-2)
米国のロック・シンガー、デイヴィッド・リー・ロスのサード・アルバム。91年リリース。ボブ・ロックによるプロデュース。
78年、ヴァン・ヘイレンの初代リード・ボーカリストとして登場。85年に脱退してソロとなったロスは、その後どのような道を辿ったのだろうか。
アルバムは「A Lil’ Ain’t Enough」でスタート。いかにもヴァン・ヘイレン・ライクなハード・ロック・ナンバー。ロスとシンガーソングライター、ロビー・ネヴィルとの共作。
ファースト、セカンド・アルバムではエディ・ヴァン・ヘイレンに代わる新しい相方としてギタリスト、スティーヴ・ヴァイと組んだが、今回彼とは袂を分かち、気鋭の若手と組むことになった。それが69年生まれのジェイソン・ベッカーだ。
オープニングからベッカーは、ハードでど派手なプレイを聴かせてくれる。つかみは十分オッケーだ。
「Shoot It」はホーンをフィーチャーした賑やかなロックンロール・ナンバー。お祭り男ダイヤモンド・デイヴが好きそうな曲調。要所要所でギターの決めフレーズが入る。
「Lady Luck」はミディアム・テンポのロック・ナンバー。ヘビーで粘り腰なビート、マイナーなメロディに第3期ディープ・パープルのような雰囲気がある。
「Hammerhead Shark」はアップ・テンポのナンバー。陽性のロックンロールだ。
ボーカルで引っ張って、ギターで盛り上げる。手だれの職人のワザだな。
ギターはベッカーの他にもうひとり、スティーヴ・ハンターがいて、主にリズム・ギター、スライド・ギターを担当している。この曲ではベッカーとハンターのスリリングな掛け合いもあって、聴きものだ。
「Tell the Truth」はダークでダウナーな曲調のロック・ナンバー。曲作りにはハンターも加わっている。
そのハンターのメロウな泣きのギターもいい。彼は特に突飛で独創的なことはしないが、常に合格点をクリアしてくるタイプだ。
「Baby’s on Fire」はアップ・テンポのハード・ロック。ロスの野獣じみたシャウト、ベッカーのバイオレンスなギター・プレイが全開だ。
「40 Below」もまたアップ・テンポのロックンロール。マットとグレッグ、ピソネット兄弟というリズム隊の切れ味バツグンのビートが、この曲の陰の主役だ。このリズムなくして、本盤のサウンドは成り立たなかっただろう。
「Sensible Shoes」は異色のブルーズィなナンバー。印象的なハープ演奏はロスによるもの。
シャウトではなく、少しくぐもったような声で歌うロスが新鮮に聴こえる。ハンターのソリッドなギターもいい感じだ。
「Last Call」は一聴して分かると思うが、明らかにロス版「ウォーク・ディス・ウェイ」。エアロスミスばりのギター・サウンドに乗せて、ラップしまくるロス。
ベタ過ぎて笑ってしまうが、これも先輩バンドへのオマージュなのだろう。
「The Dogtown Shuffle」はミドル・テンポのプギ・ナンバー。ノリのいいビートがなんとも心地よい。
「It’s Showtime!」はスーパー・アップテンポ、歌もギターもひたすら派手なお祭りロックナンバーだ。
これには「コテコテですがな」という、最上級の褒め文句を差し上げたい。
ラストの「Drop in the Bucket」はとどめの一撃ともいうべきヘビー&ハードなナンバー。ロスとベッカーの共作。
ベッカーのトリッキーなギターが、これでもかと暴れまわり、聴き手を満足させる。
以上12曲。ダイヤモンド・デイヴの陽気で派手好きなキャラクターが全面にフィーチャーされ、それに負けじと新進ギタリストがアクロバティックなプレイで盛り上げる、サービス精神満点の一枚。
言ってみれば、それ以上でも、それ以下でもないけどね。
リスナーから求められるものをすべて披露してはいるが、何かしら新しい方向性を打ち出しているわけではないので、移り気なリスナーにはいずれあきられてしまいそう。そんなマンネリの予感はどうしても付きまとうのだ。
そういうわけで金太郎飴っぽさは否めないが、気分をアゲアゲにする曲が目いっぱい詰まっているので、とにかくストレス解消したいリスナーには、もってこいの一枚だろう。
ひとつだけ悲しく残念なことを付け加えると、ベッカーはこのアルバム制作中に難病「ALS」を発症してしまい、なんとかアルバムは完成したものの、コンサート・ツアーにも参加出来なかった。以後彼はロスのアルバム制作に携わっていない。
せっかくの将来有望な才能が、たった一枚で終わってしまったのは、惜しいとしか言いようがない。
不運の天才ギタリスト、ジェイソン・ベッカーのギター・プレイをフィーチャーした唯一の作品として、筆者は今後もこの「A LITTLE AIN’T ENOUGH」を、聴き続けていきたいと思っている。
<独断評価>★★★☆
米国のロック・シンガー、デイヴィッド・リー・ロスのサード・アルバム。91年リリース。ボブ・ロックによるプロデュース。
78年、ヴァン・ヘイレンの初代リード・ボーカリストとして登場。85年に脱退してソロとなったロスは、その後どのような道を辿ったのだろうか。
アルバムは「A Lil’ Ain’t Enough」でスタート。いかにもヴァン・ヘイレン・ライクなハード・ロック・ナンバー。ロスとシンガーソングライター、ロビー・ネヴィルとの共作。
ファースト、セカンド・アルバムではエディ・ヴァン・ヘイレンに代わる新しい相方としてギタリスト、スティーヴ・ヴァイと組んだが、今回彼とは袂を分かち、気鋭の若手と組むことになった。それが69年生まれのジェイソン・ベッカーだ。
オープニングからベッカーは、ハードでど派手なプレイを聴かせてくれる。つかみは十分オッケーだ。
「Shoot It」はホーンをフィーチャーした賑やかなロックンロール・ナンバー。お祭り男ダイヤモンド・デイヴが好きそうな曲調。要所要所でギターの決めフレーズが入る。
「Lady Luck」はミディアム・テンポのロック・ナンバー。ヘビーで粘り腰なビート、マイナーなメロディに第3期ディープ・パープルのような雰囲気がある。
「Hammerhead Shark」はアップ・テンポのナンバー。陽性のロックンロールだ。
ボーカルで引っ張って、ギターで盛り上げる。手だれの職人のワザだな。
ギターはベッカーの他にもうひとり、スティーヴ・ハンターがいて、主にリズム・ギター、スライド・ギターを担当している。この曲ではベッカーとハンターのスリリングな掛け合いもあって、聴きものだ。
「Tell the Truth」はダークでダウナーな曲調のロック・ナンバー。曲作りにはハンターも加わっている。
そのハンターのメロウな泣きのギターもいい。彼は特に突飛で独創的なことはしないが、常に合格点をクリアしてくるタイプだ。
「Baby’s on Fire」はアップ・テンポのハード・ロック。ロスの野獣じみたシャウト、ベッカーのバイオレンスなギター・プレイが全開だ。
「40 Below」もまたアップ・テンポのロックンロール。マットとグレッグ、ピソネット兄弟というリズム隊の切れ味バツグンのビートが、この曲の陰の主役だ。このリズムなくして、本盤のサウンドは成り立たなかっただろう。
「Sensible Shoes」は異色のブルーズィなナンバー。印象的なハープ演奏はロスによるもの。
シャウトではなく、少しくぐもったような声で歌うロスが新鮮に聴こえる。ハンターのソリッドなギターもいい感じだ。
「Last Call」は一聴して分かると思うが、明らかにロス版「ウォーク・ディス・ウェイ」。エアロスミスばりのギター・サウンドに乗せて、ラップしまくるロス。
ベタ過ぎて笑ってしまうが、これも先輩バンドへのオマージュなのだろう。
「The Dogtown Shuffle」はミドル・テンポのプギ・ナンバー。ノリのいいビートがなんとも心地よい。
「It’s Showtime!」はスーパー・アップテンポ、歌もギターもひたすら派手なお祭りロックナンバーだ。
これには「コテコテですがな」という、最上級の褒め文句を差し上げたい。
ラストの「Drop in the Bucket」はとどめの一撃ともいうべきヘビー&ハードなナンバー。ロスとベッカーの共作。
ベッカーのトリッキーなギターが、これでもかと暴れまわり、聴き手を満足させる。
以上12曲。ダイヤモンド・デイヴの陽気で派手好きなキャラクターが全面にフィーチャーされ、それに負けじと新進ギタリストがアクロバティックなプレイで盛り上げる、サービス精神満点の一枚。
言ってみれば、それ以上でも、それ以下でもないけどね。
リスナーから求められるものをすべて披露してはいるが、何かしら新しい方向性を打ち出しているわけではないので、移り気なリスナーにはいずれあきられてしまいそう。そんなマンネリの予感はどうしても付きまとうのだ。
そういうわけで金太郎飴っぽさは否めないが、気分をアゲアゲにする曲が目いっぱい詰まっているので、とにかくストレス解消したいリスナーには、もってこいの一枚だろう。
ひとつだけ悲しく残念なことを付け加えると、ベッカーはこのアルバム制作中に難病「ALS」を発症してしまい、なんとかアルバムは完成したものの、コンサート・ツアーにも参加出来なかった。以後彼はロスのアルバム制作に携わっていない。
せっかくの将来有望な才能が、たった一枚で終わってしまったのは、惜しいとしか言いようがない。
不運の天才ギタリスト、ジェイソン・ベッカーのギター・プレイをフィーチャーした唯一の作品として、筆者は今後もこの「A LITTLE AIN’T ENOUGH」を、聴き続けていきたいと思っている。
<独断評価>★★★☆