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音盤日誌「一日一枚」#388 THE BEATLES「アビイ・ロード」(Odeon/東芝EMI CP32-5332)

2022-12-07 05:00:00 | Weblog
2022年12月7日(水)



#388 THE BEATLES「アビイ・ロード」(Odeon/東芝EMI CP32-5332)

ザ・ビートルズ、69年リリースのスタジオ・アルバム。ジョージ・マーティンによるプロデュース。

いうまでもなく、ビートルズの最高傑作と呼ばれる一枚である。

65年12月にアルバム「ラバー・ソウル」をリリースして以来、ビートルズはコンサート活動を一切行わず、作品づくりに注力するようになった。

その成果は以降のアルバム「リボルバー」(66年)「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」などでたどることが出来る。

その間、ビートルズのメンバーたちは、バンド内のみならず、他のさまざまなミュージシャンとの関係を深めていくことになり、それがビートルズの音楽性にも反映していく。

いい例が、エリック・クラプトンとジョージ・ハリスンとの関係であるし、テレビ番組「ロックンロール・サーカス」で共演したジョン・レノンとストーンズとの関係であったりする。

その他、ジミ・ヘンドリクスのような新進のロッカーの台頭にも目配りして、常に自分たちの音楽をアップデートする姿勢が彼らにはあった。

一方、メンバー自身のプライベートにも、いろいろと変動が訪れる。ハリスンがパティ・ボイドと結婚し、レノンが妻シンシアと別れてオノ・ヨーコと再婚し、ポール・マッカートニーが恋人ジェーン・アッシャーと別れてリンダ・イーストマンと結婚する、などなど。

そして、約十年良好な関係が築かれてきた、メンバー間のつながりにもヒビが入っていく。ことにバンドの要である、レノンとマッカートニーが不仲となり、バンド自体の存続が危うくなっていく。

そんな微妙な状態の69年2月、バンドは最後のクリエイティヴィティを絞り出すかのように、アルバムの録音に取り掛かる。

およそ半年のレコーディングを経て、この「アビイ・ロード」は9月末にリリースされる。

世間の反応、評価は、とてつもないものだった。

本国である英国では17週連続1位、米国でもビルボードで連続11週1位、キャッシュボックスで連続14週1位と、記録破りのスーパー・ヒットとなった。

これはもちろん、ビートルズの過去の実績に基づくリスナーの「期待」がもたらしたものでもあったが、だがそれだけでは全米で年間4位となるだけのセールスは達成出来なかっだはずだ。

やはり、アルバムそのものの素晴らしさ無くしては、全世界で3000万枚以上のベストセラーにはならなかったであろう。

実際、どの一曲を取っても、シングル・ヒットして当然のような名曲揃いであると同時に、サウンド・プロダクションの質は、その後50年以上ポピュラー音楽が進化を遂げてきたにもかかわらず、決して容易に凌駕出来ないような高みに達している。

これが「アビイ・ロード=最強アルバム」の理由である。

レノンとマッカートニーという最強のソングライティング・タッグは、既に実質的に解体されたようなものだったが、それでも各々が自らの個性をフルに発揮した曲づくりをしており(「カム・トゥゲザー」「オー・ダーリン」ほか)、そして何年にもわたって作曲の力を蓄えてきたハリスンが「サムシング」「ヒア・カムズ・ザ・サン」で才能を開花させた。

こういった個性とバラエティが溢れる曲群だけでも、十分に名アルバムの評価を得られたであろうが、これにダメ押しをしたのが、「ザ・ロング・ワン」と呼ばれるB面3曲目からの、8曲にわたるメドレーである。

8曲中5曲はマッカートニー、3曲はレノンが作ったと思われるが、主たるテーマを提示して、全体に統一感のある構成にしているのは、やはりマッカートニーの手柄だろう。

中にはちょっと面白い曲もある。レノン作の「サン・キング」の演奏は、どう聴いてもフリートウッド・マックの「アルバトロス」を元ネタとしているとしか思えない。

レノンはA面の「アイ・ウォント・ユー」でもマック風のヘビーなブルース・ロックをやっているので、当時はそういう系統のバンドを意識的に聴いていたんだと分かる。

他にもサウンド的にザ・フーを意識したかのようなパワー・コードが「ポリシーン・パン」で聴かれる。

メドレー形式、趣向の異なる曲を組み合わせるという組曲形式も、考えてみれば、ザ・フーが「クイック・ワン」でやっていることに刺激されてのことかもしれない。

ビートルズは、決して人気という「王座」に安住していた愚王ではなかったのだ。

常に自分たちを追いかけて来る2位以下の連中の動向、新たな試みにもしっかりと目を配る、抜かりのないキングであった。

だからこそ、「アビイ・ロード」は半世紀後にも聴き継がれる、エバーグリーンな名盤になり得たのである。

すべてのミュージック・ラバーの手元にあって欲しい、そんな一枚である。

<独断評価>★★★★★

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