2001年1月20日(土)
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ピーター・フランプトン「フランプトン・カムズ・アライヴ!」(A&M)
またもやライヴ盤だが、これは全世界で1200万セット以上を売った、ベストセラー中のベストセラーである。
もちろん、個人のライヴ・アルバムとしては、史上最高のヒット。
発表は1976年1月。今からちょうど四半世紀前である。
その年のアルバム・チャート上位を独占しつづけ、アメリカ国内では、ほとんど「一家に一枚」状態だったらしい。フランプトンは、一躍、時代の寵児となった。
発売の年、筆者はしがない浪人生。金欠病のため、このアルバムはFMをエアチェックして、テープで聴いていたという記憶がある。
でも、その年で一番リピートして聴いたテープではなかったかと思う。それくらい、あきのこない充実した作品であった。
ロック、ファンク、ジャズ、フォーク…。さまざまな味わいの音楽がブレンドされた絶妙なサウンド。フランプトンのヘタウマ的ボーカルが、みょうに耳になじんだ。
その「フランプトン・カムズ・アライヴ!」を、妻が昔購入したというCDでひさびさに聴くと、発表当時は見えなかったものが、見えてきた。
フランプトンは、あれだけの大成功をおさめたにもかかわらず、決してショー・ビジネスの才にたけた(たとえばコンピュータ業界におけるビル・ゲイツのような)ひとではなかった。
それは、彼がこのアルバム以後、余波で「アイム・イン・ユー」をクリーン・ヒットさせた以外は鳴かず飛ばずだったことでよくわかるだろう。
彼はきわめて純粋な、「音楽バカ」なひとなのである。
いってみれば、頑固な職人肌のひと。そんな彼とその音楽が、たまたま当時のアメリカ人の嗜好に(そのルックスも含めて)見事にハマったことで、人気が爆発しただけなのである。
ミーハーなアメリカ人は移り気だから、いつまでも彼を追いかけようとはしなかった、ということだ。
最近、彼の最新ライヴビデオが出ているのを山野楽器で発見し、そのパッケージ写真に絶句した。
1950年生まれのフランプトンは、現在50才、4月には51になる。
約20年ぶりに見た彼は―以前から、あのくるくるチリチリパーマは髪にヤバいんじゃないかと思っていたのだが―みごとな●ゲ頭となっていたのである。
おまけに眼鏡までかけ、かつての美男ロックスターの面影はどこにもなかった。
往時のファンならば、絶対に見たくはないであろう、そういう写真だった。
でも、彼は、昔とかわらぬ満面の笑みをうかべ、嬉々としてギターを弾いていたのである。
これでいいのだ、と筆者は思った。
「ロックスター」としての彼に世間から押しつけられた「期待」「思惑」、そういったものがきれいさっぱりと消えたとき、本物のミュージシャン、プレイヤーとしての人生が始まったのだ。
だから、今の彼は、25年前よりずっと幸福なはずである。
最後に76年当時の、彼のインタビューでの発言を記しておこう。
現在の彼を予見していたかのような、含蓄のある言葉だ。
「ぼくはいま、やっと自分の本当の夢に向かって歩き始めたんだ。
ぼくは、シンガーやソングライターとしてよりも、ただギタリスト
として認められたいんだ」/ピーター・フランプトン。