2004年1月25日(日)
#203 ザ・ダークネス「PERMISSION TO LAND」(ATLANTIC 5050466-7452-2-4)
英国のハードロック・バンド、ザ・ダークネスのデビュー盤。2003年リリース。
「ひさびさにイキのいいバンドが出てきた!!」と評判の、一枚なのだよ。
<筆者の私的ベスト4>
4位「BLACK SHUCK」
ザ・ダークネスは、ジャスティンとダン(ダニエル)のホーキンス兄弟を中心とするバンド。
フロントマン、ジャスティンはヴォーカル、ギター、キーボード、ダンはリード・ギターを担当。泥鰌ヒゲのベーシスト、フランキー・プーレイン、ドラムのエド・グレアムの四人でザ・ダークネスというわけだ。
「I BELIEVE IN A THING CALLED LOVE」のヒットで、すでに日本でも人気に火がつき始め、昨年11月には初来日公演まで果たしている。
彼らを形容する言葉で一番多いのが「クイーンの再来」というもの。
確かに、ジャスティンのべらんめえ調の歌いぶり、ファルセットを多用、幅広い声域を生かしたオペラチックで派手な歌唱法は、フレディ・マーキュリーに酷似しているし、要所要所で聴かれるヴォーカル・ハーモニーもクリソツ。
ダンのギター・プレイも明らかにブライアン・メイに強い影響を受けており、音色、フレーズ、ツイン・リードによるハーモニー、いずれもクイーンを彷彿とさせるものだ。
その顕著な例のひとつとして、この「BLACK SHUCK」を上げておこう。
とにかく全編、コテコテのハードロック・サウンドなんだわ。ヘヴィーなリズム、炎の如きギター、そしてひたすら情熱的なシャウト。
もう、「待ってました!」と掛け声をかけたくなる。
他には「GET YOUR HANDS OFF MY WOMAN」「GROWING ON ME」あたりも、同様のウルトラ・へヴィ・チューンだ。
このスパー・へヴィなグルーヴは、ザ・ダークネスの大きな魅力のひとつといえよう。
3位「HOLDING MY OWN」
とはいえザ・ダークネスは、ただのクイーンの猿真似バンドではない。
クイーン以外にも、シン・リジィ(ダンがロゴ入りTシャツでライヴに登場するくらいだから、相当なマニアなのだろう)、エアロスミス、ヴァン・ヘイレン、ミスター・ビッグ、さらにはバドカン、10CC等の影響まで受けていると思われる。
それらのバンドの、一番美味しいところを持って来て、絶妙にブレンドしたという感じ。
言ってみれば、メロディアス、かつゴリゴリ系の70年代風ロック・サウンドを集大成したのが、このザ・ダークネスなのだ。
日本でいえば…、実はB'Zあたりに近かったりする。(あ、こーゆーこと言っちゃマズかったかな?)
ともあれ、ひたすらハードで、しかも泣かせるメロディ・ラインをきっちり持っており、歌唱力もバッチリというのは強いやね。売れないわけがない。
本国イギリスはもとより、アメリカでも火が付き始めているのは当然という気がするね。
さて、3位はアルバムのラスト、エアロスミスあたりが演ってもおかしくないバラード調のナンバー。
ノリノリのドライヴィング・ナンバーもいいが、しっとりとした曲調にも、ジャスティンのヴォーカルはピタリとハマる。
ひさびさに、大物ヴォーカリスト登場!という印象がある。
こういう「ポップスの王道」的ナンバーもソツなくこなすあたり、実に「商売」がうまいねえ。
ZEPは「天国への階段」、クイーンは「ボヘミアン・ラプソディ」のヒットによってアメリカでの地位を不動のものにしたくらいだから、彼らも、メロディアスなバラード路線で一発当てそうな予感がする。
2位「GIVIN' UP」~「STUCK IN A RUT」
重たいサウンドばかりが、ザ・ダークネスやおまへん、という好例。彼らの引き出しは多いのだ。
この2曲はシームレスに演奏されるのだが、一曲目の「GIVIN' UP」は軽快なギター・リフで始まる、ロックンロール・ナンバー。
ブリティッシュ・ハードロックの本流とはまた違った、アメリカ人にも受けそうな明るさが新鮮だ。
先日取り上げた、リック・デリンジャーあたりにも通じるものが多いサウンドだ。
それはアコースティックな味わいの「LOVE IS ONLY A FEELING」、ポップな「FRIDAY NIGHT」や「LOVE ON THE ROCKS WITH NO ICE」あたりの曲についても、言えそう。明らかにアメリカ・オリエンテッドな音なんである。
一方、後半の「STUCK IN A RUT」では、見事に雰囲気を変え、よりへヴィに、ハードに迫る。
デビューしたばかりなのに、大物の貫禄さえ感じさせる、重量感あふれるサウンド。文句なしです。
1位「I BELIEVE IN A THING CALLED LOVE」
1位はやはりこれだな。彼らのデビュー・シングルにしてスマッシュ・ヒット。
彼らの曲はすべて四人の共作。歌詞はたぶん大半がジャスティンによるものだろう。
この歌詞がかなりエロティックだということで、CDのケースには「PARENTAL ADVISORY EXPLICIT LYRICS」なるシールが貼られているのが、なんとも笑わせる。
ロックなんて、存在そのものが「R指定」みたいなものじゃん。もう、アフォかと(笑)。
まあ、英国では最近、かつてのBCRみたいな人畜無害のアイドル・バンドがいないから、年端もいかない子供達もザ・ダークネスを聴いちゃう。そういうことに対する配慮なんだろうね。
英国では、ジャケ写のフライト・アテンダント(平たくいえばスッチー)のお姐ちゃんのお尻丸出しヌードが問題となって、コンビニエンス・ストアでは売っちゃダメとかいうことになっているみたいだけど、それに対してフランキーが「じゃあ、前を見せた写真に変えてやろうじゃん」とタンカを切っているそーな。いいぞ、やれやれ!って感じだ。
そういう、威勢のいい発言をするところもザ・ダークネスの魅力のひとつで、他にも彼らが渡米した際、インタヴューにこたえて「オアシスはアメリカでのプロモーションを怠っている」という主旨の、刺激的な発言をしたというのが記憶に新しい。
当然、「あいつら(オアシス)はやれなかったが、オレたちはやれる」という確たる自信があってのことだろうから、まことに頼もしい。
さて、この「I BELIEVE IN A THING CALLED LOVE」はデビュー・シングルに選んだだけあって、彼らの魅力がギュッと凝縮された、ショーケース的ナンバー。
ジャスティンのフリーキーな歌声をあくまでも前面に押し出し、ひたすらタイトでヘヴィなバンド・サウンドがそれを支える。
隠し味的なコーラス、そしてギター・ハーモニーが、他のハードロック・バンドの曲とは「ひと味違うな」と感じさせる。
後半ではいよいよダンのソロが炸裂、このグループのもうひとつの魅力をファンにアピールするという仕掛けだ。
うん、実によく出来てます。
この曲のヒット後、たたみかけるように「CHRISTMAS TIME(DON'T LE THE BELLS END)」をヒットさせている彼ら、いま一番波に乗っているバンドのひとつであることは間違いないだろう。
デビュー盤としては、手ごたえ十分な出来。いや、出来過ぎかも知れない。
が、たぶん、こんなレベルで終わるくらい、彼らの才能はハンパなものではないハズ。
今後は、何かといえば比較対象にされるクイーンとはまた違った、彼ら独自の音世界を築いていってくれるに違いない。
ひさびさの大型新人。絶対要チェキ!です。
<独断評価>★★★★