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音盤日誌「一日一枚」#204 ピエール・バルー「シエラ」(ALFA ALC-28053)

2022-06-06 05:03:00 | Weblog

2004年2月1日(日)



¥204 ピエール・バルー「シエラ」(ALFA ALC-28053)

フランスのシンガー=ソングライター、ピエール・バルー、84年のアルバム。

ピエール・バルーといえば、何と言っても「男と女」の主題歌で有名だろうが、日本にもYMOやムーンライダーズら、彼に影響を受けたミュージシャンがけっこう多かったりする。

このアルバムは、82年に立川直樹氏のプロデュースにより制作された「ル・ポレン-花粉-」(日本コロムビア)の後をうけて、同じく立川氏のプロデュースにより作られたもの。

彼の人脈により、呼び集められたミュージシャンの顔ぶれが、なかなかスゴい。

YMOの坂本龍一と高橋幸宏、加藤和彦、ムーンライダーズの鈴木慶一、かしぶち哲郎、白井良明ら、YEN系列から立花ハジメ、清水靖晃、バルーとゆかりの深いフランシス・レイ、ローラン・ロマネリ、ルイス・ヒューレイといった人々が演奏や作・編曲で参加しているのだ。

日仏の代表的なミュージシャンのコラボレーションにより生まれたアルバム。まさにコスモポリタンな一枚といえよう。

<筆者の私的ベスト3>

3位「ワン・ニャン・ワン」

「CHATS CHIENS CHATS」という仏題をつけられたこの曲は、聴けばすぐわかるが、小学校の音楽の教科書には必ず載っている「おもちゃのチャチャチャ」(越部信義作曲)。

ただの童謡と思われがちなこの曲だが、バルーがユーモアあふれる詞をつけ、かしぶち哲郎が小粋なアレンジを施すことで、見事なポップス・チューンへと変身している。

バルーの素朴でちょっとおトボケな歌い方が、曲調にうまくマッチしていてナイス。バックの生き生きとした演奏もいい。

なんとも愛すべき一曲であります。

2位「ケ・ビバ・ヴィラス」

無国籍ポップス、日本製童謡の次は、アルゼンチン・タンゴである。

詞はバルー、曲はフランシス・レイが担当、これにローラン・ロマネリ、ヤニック・トップが格調高いタンゴ・アレンジを加えている。

ここでのバルーでの歌唱が本当に素晴らしい。彼は大声量で朗々と歌い上げるような技巧派ではないのだが、一語一語、かみしめるように歌うのが実にいい。

日常生活を離れた旅での驚き、とまどい、歓び、そういった情感が、ダイレクトに伝わって来る。こういうのを、説得力がある歌というのだろうね。

いい歌はやはり、テクニックではない。「こころ」なのだよ。

1位「愛の苦悩」

唯一、ピエール・バルー自身の作曲によるナンバー。ローラン・ロマネリの編曲。

当然ながら、彼自身の思い入れが一番色濃く投影された曲で、文句なしにベスト・トラックだ。

ピアノとギター、ストリングスによるオーセンティックな演奏にのせて、語るように、ささやくように歌われる、悲しき恋心。

ことばと旋律、そしてサウンド。すべてが相まって、ひとつの「詩」を作り上げている。

わずか数分の曲が、こんなにも人を揺り動かす。そんなこと、他の芸術に出来る芸当だろうか?

これこそが、ピエール・バルーの魅力なのだなと再認識した。

自ら歌を作り、うたう全ての人々に聴いていただきたい。クリエイトするとは、こういうことなのだよ。

<独断評価>★★★☆



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