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音盤日誌「一日一枚」#308 エクストリーム「THE COLLECTION(THE BEST 1200)」(ユニバーサルミュージック UICY-9916)

2022-09-18 05:19:00 | Weblog

2006年2月26日(日)



#308 エクストリーム「THE COLLECTION(THE BEST 1200)」(ユニバーサルミュージック UICY-9916)

エクストリームのベスト盤。2002年リリース(日本ではTHE BEST 1200シリーズのひとつとして2005年リリース。初回生産限定)。

エクストリームといってもピンと来ないかたもおられるかもしれないが、今をときめくスーパー・ギタリスト、ヌーノ・ベッテンコートが在籍していた米国のハード・ロック/へヴィー・メタル・バンドといえば、おわかりいただけるだろう。

エクストリームの活動期間は約11年。85年に結成、89年にアルバム・デビュー、セカンド・アルバムにも収録されている「モア・ザン・ワーズ」が全米チャート1位のヒットとなり、トップ・グループへと躍り出る。96年に解散。

ポルトガル出身という異色のギタリスト、ヌーノの超絶技巧プレイをフィーチャーした演奏は、テクニカルのひとこと。とにかく、どんなスタイルのサウンドでもさらりと演奏してしまうのだ。

大ヒットした「モア・ザン・ワーズ」はアコースティック・バラードだが、彼らの本領はむろんスピーディでアグレッシブなハードロック・ナンバーにある。

本盤でいえば「マザー」「リトル・ガールズ」「キッド・イーゴ」「デカダンス・ダンス」あたりがその代表例といえそう。

ベースはごくオーソドックスな、エアロスミス、ヴァン・ヘイレン的な陽性アメリカン・ハードロックなのだが、これにヨーロッパ的なクラシックの香りを溶かし込んだウルトラハイテク・ギターが絡んで、90年代ならではのネオHR/HMとなっている。きわめてアメリカンな音である一方、時にディープ・パープル、レインボー、クイーンのような英国系のセンスも感じられる。

常にコーラスが前面にフィーチャーされている、ハデめな音なのも彼らの特徴で、そのあたりはキッスとかボン・ジョヴィ、ミスター・ビッグなどの先輩バンドの影響が色濃く感じられる。

つまるところ、それまでの先行バンドのおいしいところを全部取りしてトッピングした、スーパー・プレミアム・アイスクリームってとこか。

それもこれも、メンバー4人全員の抜群の演奏力と歌唱力あってこそのことなのだが、裏を返せばとてつもなく「器用貧乏」なバンドといえなくもない。

なんでも出来てしまうため、逆にいうと「これっきゃできません」みたいな、エクストリームならではのオリジナリティは、ほとんど感じられない。どこか聴いたことのあるフレーズ、アレンジが多いという印象はぬぐえない。

そんな過去の名曲クローン的なナンバーが多いなか、ナンバーワン・ヒットとなった「モア・ザン・ワーズ」は演奏テクニックに頼らず、メロディそのものの美しさだけで勝負しているのが、好感が持てる。

70年代の大ヒット「天国の階段」に相当する、90年代ロックの代表的ナンバ-といってもいいだろう。

他の曲が「作り込み過ぎ」の感が強い中で、ライブ演奏に近い音録りをしているのも、成功の原因といえる。

筆者はもうひとつのアコースティック・ナンバー「ホール・ハーテッド」も結構好きだ。ブルース感覚をうまく隠し味にしているのがいい。

ホーンも導入、ファンクをうまく自分たち流に料理したナンバー「ゲット・ザ・ファンク・アウト」も面白い。ヌーノのトリルばりばりなギター・ソロは、ファンキーな曲調とじゃなんか違和感があるけどね。

「ソング・フォー・ラヴ」は、ミスター・ビッグの「トゥ・ビー・ウィズ・ユー」をなんとなくほうふつとさせるバラード。さらにいえば、源流はビートルズかもしれんが。ここでのコーラスは、厚みがあって超強力だ。日本のバンドじゃ絶対出来ないね、こういうのは。

オレはヌーノのギターを堪能したいんじゃあ!というむきには「キューピッズ・デッド」がおすすめ。いわゆるリードギターでなく、リフを延々と弾いているんだが、その抜群のリズム感は圧倒的!のひとこと。

「ウォーヘッズ」も、ギタ-キッズ必聴の一曲。全編、アップテンポでゴリゴリ弾きまくるヌーノは、カッチョいいのひとこと。

筆者的には、あのトリルとかタッピングみたいな装飾過剰なフレーズよりも、リフの弾き方のカッコよさにしびれている。結局、ハードロックのキモは、いかにキャッチーなリフを作れるかにあると思うので。

オルタナ、グランジ系をハンパに意識した「ヒップ・トゥデイ」はあまり成功しているとは思えないが、同様の系統でも「ゼア・イズ・ノー・ゴッド」はなかなかイカしてると思う(いずれも95年リリースの「ウェイティング・フォー・ザ・パンチライン」収録)。

メロディよりもリズムを重視、コーラスを極力省いてソロ・ボーカルにスポットを当てたそのサウンドは、初期のエクストリームにはほとんど見られなかったタイプのものだ。これが、筆者的にはけっこうツボだったりする。

ただし、ここではヌーノのギターはほとんど出番がない。オルタナには華麗なるリード・ギタリストはいらんってことなのだ。

かくして、バンドは曲がり角を迎え、翌年には解散する。ヌーノは自らのギターをより生かすべく、ソロ活動に入ることになる。

バンドのサウンドの変遷も感じられて、なかなか興味深い一枚。どの曲も演奏クォリティは高く、これで一曲80円は安い! お買い得です。

<独断評価>★★★★



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