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音盤日誌「一日一枚」#220 ドゥービー・ブラザーズ「FAREWELL TOUR」(ワーナーパイオニア P-5619~20)

2022-06-22 05:01:00 | Weblog

2004年6月6日(日)



#220 ドゥービー・ブラザーズ「FAREWELL TOUR」(ワーナーパイオニア P-5619~20)

ドゥービー・ブラザーズ、83年のアルバム。初期ドゥービーズのラスト・アルバムであり、また最初のライヴ盤でもある。

71年のデビュー以来、着実にヒットを飛ばし、人気を獲得してきた彼らも、諸々の事情により82年に解散することとなる。そのラスト・ツアーの模様を収録している。

だから、全盛期(72年~78年ころか)の破竹の勢いはさすがにない。スタジオ盤の、あの高い完成度も求めることが出来ない。

でも、腐ってもドゥービーズ。演奏のクォリティに関しては、さすがトップバンドだなと、唸らせるものがある。

たとえばA面2曲目の「ドゥービー・ストリート」。この、おなじみのイントロを聴いただけで、「あぁ、こういう安定感のあるグルーヴを出せるロックバンドは、日本には絶対存在しないな」と思ってしまう。もちろん、偏見だけど(笑)。

歌もやっぱ、上手い。マイケル・マクドナルドとか、特に日本では人気があるシンガーじゃないけど、生歌を聴いているとものすごい「余裕」を感じる。いっぱいいっぱいで歌ってるのでなく、実力の7がけぐらいで歌っているけど、フツーに上手い。そんな感じだ。

もちろん、彼に限らず、メンバーの大半が歌えるというのは、相当な強みだよな。3曲目の「ジーザス・イズ・ジャスト・オールライト」みたいなコーラスを聴くと、ホント、そう思う。

先日取り上げたリトル・フィートにしても、彼らにしても、まずバンドの基本が「歌うこと」であるという、この一点においてわが国のバンド群とは、大きな懸隔がある。

歌うために、演奏する。これこそが、ロックという"ヴォーカル"・ミュージックの本来のあり方だろう。

4曲目の大ヒット曲「ミニット・バイ・ミニット」、これもマイケルをフィーチャーした作品だが、そのバック・コーラスの強力さは特筆もの。

B面1曲目の初期ヒット「リッスン・トゥ・ザ・ミュージック」。リードヴォーカルはオリジナルのトム・ジョンストンではなく、マイケル。ふたりの声質の違いにより、ニュアンスも違って来ていて(マイケルの方がブラック・ミュージックっぽい)、興味深い。

続く77年の作品「エコーズ・オブ・ラヴ」も、マイケル色の強いナンバー。いかにも、典型的AORだ。

ダメ押しの一曲は「ホワット・ア・フール・ビリーヴス」。マイケルとケニー・ロギンズの共作。78年のヒットだから、あれからもう四半世紀以上たってるんだよなあ。

結局、後期のドゥービーズは「マイケル・マクドナルド&ヒズ・バンド」状態だったってことなんだろうな。後期ヒット群の大半は彼が書いていたんだから、しょうがないか。

でも、他にもドゥービーズの「顔」と呼ぶべきメンバーは存在する。そう、パトリック・シモンズである。

B面ラストの「ブラック・ウォーター」は、彼の代表曲。フォークやカントリー、ブルーグラス等、ドゥービーズの非ブラック・ミュージック的な側面を彼がおもに担っていたことが、アコギやヴァイオリンをフィーチャーしたこの曲を聴くとよくわかる。

C面の「SLACK KEY SOQUEL RAG」、「STEAMER LANE BREAKDOWN」、「SOUTH CITY MIDNIGHT LADY」も彼の作品。

いずれも、カントリー色が濃厚なナンバー。中でもジョン・マクフィーのペダル・スティールが実にいい感じだ。こういう、陽光と土の匂いを感じさせるナンバーがときおり織り交ぜられていると、ホッとするのは筆者だけではあるまい。

マイケルによるドゥービーズのAOR化は、他のメンバーに「別にバックはオレたちでなくてもええやん」という気持ちをもたらしていたのではないか、そんな感じがするね。

筆者的にはやっぱり、ホワイト・ミュージックとブラック・ミュージックが絶妙なバランスでブレンドされていた時代のドゥービーズが好きだなぁ。

アメリカン・バンドながらブルース色は比較的稀薄なドゥービーズであったが、たまにはそういうルーツも垣間見せてくれるのがD面2曲目の「ドント・スタート・ミー・トーキン」。ご存じ、サニーボーイ・ウィリアムスンIIのナンバーである。

これがまた、軽快なアップテンポのビートで、耳に心地よい。

ラストの2曲では、なんと、オリジナル・メンバーのトム・ジョンストンがゲスト参加。

彼らの出世作、「ロング・トレイン・ランニン」と「チャイナ・グローヴ」を熱く歌ってくれる。

作者本人が歌うと、さすがにぴったりとハマる。マイケルだと、この切れ味は出せないかも。この2曲はやっぱり、トムのヴォーカルでなくちゃという感じ。

名盤とはとても呼べないにせよ、トムの生歌が聴けるだけでも、この一枚、入手するに値すると思う。

89年にマイケルを除くメンバーで再結成、マイペースでアルバムを発表しているドゥービーズではあるが、「時代」と見事に切り結んでいた71年~83年の音は、格別の味わいがある。

皆さんもたまには、レコード・ライブラリーから引っ張り出して、聴いてみてはいかが?

<独断評価>★★★


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