2012年4月7日(土)
#211 リトル・リバー・バンド「Reminiscing」(Sleeper Catcher/One Way Records)
#211 リトル・リバー・バンド「Reminiscing」(Sleeper Catcher/One Way Records)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5e/58/3741e75bbc8b844a5b78610aa7d86776.jpg?1697920079)
オーストラリアのロック・バンド、リトル・リバー・バンド、1978年の大ヒット曲。メンバーの一人、グレアム・ゴーブルの作品。
リトル・リバー・バンドは75年にメルボルンにて結成後すぐにアメリカに進出、キャピトルよりデビューアルバムを発表し、「It's a Long Way There」のヒットで一躍注目されるようになる。ドゥービーズやイーグルスを彷彿とさせるウェスト・コースト系の音で人気を博し、きょうの一曲「 Reminiscing(邦題:追憶の甘い日々)」は、ビルボード3位という、彼ら最大のヒットとなった。なんと、ラジオで400万回以上オンエアされ、14週連続チャート・インしたというから、ハンパではない。
その後も現在に至るまでアルバムを出し続けているが、彼らの全盛期はやはり、70年代後半~80年代前半といえるだろう。当時、トップ30に12曲ものヒットを送りこんでいたのだから、今でこそ覚えているリスナーは少ないものの、実にスゴいバンドだったのだ。
彼らが出てくるまでは、オーストラリア出身のバンドで、アメリカで成功した例はなかった(広義ではビージーズが最初の例かもしれないが、ギブ兄弟はもともと英王室属領マン島の出身だからね)。だから、本当の意味でパイオニアだった。彼らの成功によって、後続のメン・アット・ワークなどの豪州出身バンドが世界進出する道がひらけたともいえるだろう。
78年といえば、いまや死語となった「AOR」が全盛だったころ。大人の鑑賞にも耐えうる高い音楽性を持ったリトル・リバー・バンドは、まさにAORの代表選手的な存在として、出す曲出す曲をヒットさせていったのだ。
きょうの一曲は、その中でも名曲中の名曲といえるな。甘美なメロディ、キーボードとトランペットを主軸にしたジャズィで粋なバック・サウンド、そして歌とコーラスのうまさは特筆ものだろう。グレン・ミラーやコール・ポーターなどにインスパイアされた音と詞は、古き良きアメリカを感じさせる。ジャズへの深い造詣なくしては生み出しえなかった楽曲であり、彼らがいかにアメリカ人以上にアメリカ的であるかがよくわかる。
彼らは、ロック・バンドとしてはいわゆるケレンがまったくといっていいくらい見られない、音楽の質そのもので勝負するタイプのバンドだった。メンバーを見ても、みな実直な感じの人たちばかりで、それゆえにミーハーな人気はなかったのだが、本国ではいまだに絶大な人気があるという。
ミュージシャンは、派手なメイク、奇矯なパフォーマンスではなく、自らが生み出した曲、そして歌や演奏そのもので勝負すべきだという哲学が、彼らの音楽活動から強く感じとれるのだ。
本当の実力をもったミュージシャンとは、こういう曲を生み出せる人々のことをいうのだ。今聴いても、めちゃめちゃイケてまっせ。