NEST OF BLUESMANIA

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音盤日誌「一日一枚」#297 トーマス・ドルビー「アストロノーツ&ヘラティックス」(東芝EMI VJCP-28123)

2022-09-07 06:20:00 | Weblog

2005年12月4日(日)



#297 トーマス・ドルビー「アストロノーツ&ヘラティックス」(東芝EMI VJCP-28123)

きょうは年末ライブの当日でもあるので、手短かにて失礼。

トーマス・ドルビー、92年のアルバム。ドルビー自身によるプロデュース。

寡作の人、ドルビーが「ALIENS ATE MY BUICK」以来4年ぶりに発表した作品。

この人のアルバムは、一作一作ごとにリスナーを驚かせてくれるが、本作も例外ではない。

聴く前から人を驚かせるのは、インナースリーブのポートレート。清朝中国の弁髪のような奇抜な髪型と軍服姿で、われわれの度肝を抜くドルビー。天才のやらかすことは、まるで予想がつかんわい(苦笑)。

サウンドの方も、かつてのエレクトリック・ポップ系の音のみにとどまることなく、ワールドミュージック的な広がりを見せている。

そのあらわれのひとつが、89年に彼がアルバムをプロデュースしたイエメンの女性シンガー、オフラ・ハザをゲスト・ボーカルに迎えていること。「愛はなぞだらけ(THAT'S WHY PEOPLE FALL IN LOVE)」でふたりのデュエットを聴くことが出来る。レゲエ・ビートをモダンにアレンジした音に、非アメリカ的というか、非ソウル的な独自のテイストのコーラスが乗っかっていて、実に面白い。

他には、東アジア的なムードの強い(YMOにも通じるものがある)「I LOVE YOU GOODBYE」、前衛的で物憂いイメージの「CRUEL」、深遠かつ内省的な「NEON SISTERS」(これも坂本龍一っぽい)みたいな非ポップ路線がある一方で、ケイジャン・ミュージックをドルビー流に消化した「SILK PYJAMAS」(ピアノがまるで長髪教授風)、ボ・ディドリーのジャングル・ビートを本歌取りし、それにエディ・ヴァン・ヘイレンのハードなギター・プレイを融合させてしまった意欲作「EASTERN BLOC」(どことなくデイヴィッド・ボウイの「モダン・ラヴ」に似ている)のような、王道ポップにドルビー流アレンジを加えたものもある。まさに、百花繚乱の趣きだ。

イントロで「クイーンか?」と一瞬思わせておいて、まるきり違うオリジナルな方向へ展開していくポップ・チューン「シガーにご用心!(CLOSE BUT NO CIGAR)」とか、エルトン・ジョン、ビリ-・ジョエルばりのしっとりしたボーカルを聴かせるバラード「BEAUTY OF A DREAM」あたりに、ドルビーのハンパでない名人芸を感じるね。

曲作り、サウンド作り、そして歌&演奏。すべてがとてつもなく高い水準だ。GENIUSという言葉は、まさにドルビーのためにある。

新作を10年以上出していないトーマス・ドルビー。次はとんでもなくスゴいものを準備しているに違いない。ホントに楽しみだ。

<独断評価>★★★☆


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