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音曲日誌「一日一曲」#384 ロリー・ギャラガー「Messin’ With The Kid」(Polydor)

2024-04-24 08:41:00 | Weblog
2024年4月24日(水)

#384 ロリー・ギャラガー「Messin’ With The Kid」(Polydor)





ロリー・ギャラガー、72年リリースのライブ・アルバム「Live! In Europe」からのオープニング・ナンバー。メル・ロンドンの作品。ギャラガー自身によるプロデュース。

アイルランド出身のギタリスト/シンガー、ロリー・ギャラガーについては、テイスト時代を主に取り上げて、71年にソロになってからのライブアルバムを1枚しかピックアップしていなかったので、今回はソロ時代の彼にスポットを当ててみたい。

テイストを70年いっぱいで解散させたギャラガーは、翌年5月、アルバム「Rory Gallagher」をリリースして、ソロ活動のスタートを切る。

新たなバンドメンバーとして、オーディションにより選ばれたベースのジェリー・マカヴォイ、ドラムスのウィルガー・キャンベルを迎えレコーディングされたこのアルバムは、全英32位のセールスとなり、まずまずのスタートとなった。

同年11月、早くもセカンド・アルバム「Deuce」をリリース、トップ20に1週チャートイン。

そして翌72年5月に、同年2〜3月に行ったヨーロッパ・ツアー(英語・イタリア・ドイツ)の模様を収録したこの「Live! In Europe」をリリースしたのである。

これが過去の記録を塗り替えるヒットとなった。全英9位と初めてトップ10に入り、全米でも101位、初のゴールド・ディスクとなったのだ。

テイスト時代から、ロリー・ギャラガーはそのライブの内容には定評があった。スタジオ・アルバムを大きく上回るダイナミックな生演奏は、彼の最大の魅力であり、その評判がファンを増やしていく原動力でもあった。ライブ・アルバムが強く待たれていたゆえんである。

ヨーロッパでの演奏は、ファンの期待をさらに上回る熱い出来であった。オープニングの「Messin’ With The Kid」からパワー全開、フルスロットルなロリーが聴けたのだから。

この「Messin’ With The Kid」のオリジナルは、ジュニア・ウェルズ1960年リリースのシングル。ウェルズが珍しくハープを吹かずにボーカルのみのバージョン。66年にはバディ・ガイと共に再録音しており、こちらではハープも吹いている。作曲者はチーフレーベルのオーナーにしてプロデューサーのメル・ロンドン。

ギャラガーはこのひと昔前のブルース・ナンバーをロックに大胆にアレンジして、1972年に鮮やかに甦らせた。

彼のひたすらアグレッシブなギター・プレイ、そしてラフではあるがエネルギッシュなボーカルを前面に押し出した本バージョンには、ギャラガーの魅力がすべて詰まっていると言っていい。

このアルバムにより、ファンのみならず音楽ジャーナリズムも、改めて彼のギター・プレイに注目するようになった。それは同年、メロディ・メイカー誌によってギャラガーが1972年の「ギタリスト・オブ・ザ・イヤー」に選ばれたことでもよく分かるだろう。

翌73年には「Blueprint」「Tattoo」の2枚のアルバムをリリース、日本でも人気上昇の兆しが見えるようになる。「ミュージック・ライフ」あたりのロック誌でも、毎月のように記事になり始める。

そんな気運の中、「Tattoo」のプロモーションも兼ねて74年1月、ギャラガーはついに初来日公演を果たしたのだった。

実は筆者も、1月25日の中野サンプラザ公演に、観客のひとりとして参加していた。

音楽仲間の友人の伝手があり、入手したチケットはなんと真正面のかぶりつきというプラチナ席!

登場したロリー・ギャラガーはチェックのシャツにジーンズ、スニーカーという、至って飾りっ気のないスタイル。ロックスター的な華やかさとはまるで無縁の、素朴な25歳の青年だった。

だが、いったんギターを手にするや、にこやかな表情は一変し、真剣なアーティストのそれに変わった。

一曲目は…そう、筆者の、そしておおかたの観客の予想通り、「Messin’ With The Kid」だった。

激しいリズム隊のビートをさらに上回る、火を吹きそうなギター・プレイ。特にピッキング・ハーモニクスのカッコよさといったら!

緊張感に満ち、オープニングから観客席も超ヒートアップした、最高のパフォーマンスだった。

ジュニア・ウェルズ、そしてブルース・ブラザーズでよく知られているナンバーではあるが、筆者にとっての「Messin’ With The Kid」は、何よりもまず、ロリー・ギャラガーなのである。その理由は、上記のライブ体験であることは、いうまでもない。

1995年、わずか47歳の若さで亡くなるまで、全力で駆け抜けるようにギターを弾き続けた男、ロリー・ギャラガー。

筆者にも74年の「あの日」の熱演を思い起こさせる、彼の本気のライブを堪能してくれ。


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