2006年9月3日(日)
#328 ブラインド・ブレイク「キング・オブ・ザ・ブルース エントリー2」(P-VINE PCD-2253)
ブラインド・ブレイクの、26年から32年までのレコーディングから20曲をセレクトした編集盤。91年リリース。
ブラインド・ブレイク、1895年フロリダ州ジャクスンヴィル生まれ、1937年に亡くなっている。この夭折のギタリスト/シンガーは、さほど知名度はないものの、実はブルース史において、非常に重要な人物だ。
なんといっても、かのブルース・ボス、ビッグ・ビル・ブルーンジーが彼のギター奏法に強く影響を受けており、ブルーンジーを通して、その後のさまざまなミュージシャンに影響を及ぼした、そういう「ミュージシャンズ・ミュージシャン」なのである。
まずは、一曲聴いてみよう。トップの「ブラインド・アーサーズ・ブレイクダウン」はラグタイム・スタイルのインスト・ソロ。見事なリズム感、 華麗にして確かな指づかい、もうこの一曲だけで彼がただ者でないことがわかる。
ニ曲目の「ポリス・ドッグ・ブルース」は、ライ・クーダー、アーニー・ホーキンスなど他のミュージシャンによってカバーされることも多い、ブレイクの代表曲的存在。
軽快なギター演奏にのって、歌声も披露してくれるわけだが、この歌がギターとは対照的にヘタウマ系というか、素朴のひとこと。
力まず、まるで鼻歌を歌うかのようにボソッと自然に歌う。これがなんともいい味わいなのだ。
三曲目は再びインストの「ウェスト・コースト・ブルース」。語りを入れながら、リズミカルに演奏される。ラグタイム・ギターに挑戦してみたい人には、格好の教材になりそうな、コンパクトにまとまった佳曲である。四曲目の「ドライ・ボーン・シャッフル」は、かなり難度の高い、アップテンポのインスト。
そんな感じで、インスト曲、歌もの、ミドルテンポ、アップテンポと各種織り交ぜた構成。でもどれも、ハッピーな雰囲気の曲だ。
ブルーンジーについてもいえることだが、基本は非常にネアカな音楽で、高度の技術に裏打ちされていながら、そのいなたい歌声のおかげで、聴き手をほのぼのとした気分にしてくれる。
「スキードゥル・ルー・ドゥー・ブルース」では技術的に結構むずかしいスキャットをやったり、ハープを吹いたり、他のシンガー(バーサ・ヘンダースン)のバックで達者なピアノを弾いたりと、多才ぶりを見せている。ギター、ピアノの二刀使いとは、それだけでも凄くないですか?
演奏家としても、コンポーザーとしても、高い才能を持ち、でもひたすらシンプルでわかりやすい音楽をやる、これがブレイクの身上といえよう。
ロバート・ジョンスンのような、狂気と隣り合わせな才能とはまた違った意味で、ブレイクも天才なのである。
残念ながら、彼の音楽を知る人は、決して多くない。が、彼の生み出した、リズミックなギター・スタイルは、ロック、ブルースなどの「グルーヴ」のある音楽を演奏するギタリストならば、間違いなく受け継いでいる、そういう類いのものだ。
「リズムこそがギター・プレイの命」、彼のプレイはそう語っているように見える。
もっとギターがうまくなりたい、そう思っているすべての人々に聴いて欲しい一枚であります。
<独断評価>★★★★