NEST OF BLUESMANIA

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音盤日誌「一日一枚」#329 エリック・クラプトン「安息の地を求めて」(POLYDOR 531 822-2)

2022-10-09 05:43:00 | Weblog

2006年9月10日(日)



#329 エリック・クラプトン「安息の地を求めて」(POLYDOR 531 822-2)

AMGによるディスク・データ

エリック・クラプトン、75年のアルバム。キングストンおよびマイアミにて録音。トム・ダウドによるプロデュース。

ソロ名義のオリジナル・アルバムとしては3作目にあたる本盤(「461オーシャン・ブールヴァード」と「ノー・リーズン・トゥ・クライ」の間に位置する)、世間の評価はさほど高くはないが、非常によく出来たアルバムだと思う。

サウンド的には前作「461~」を基本的に踏襲した、レイドバック・スタイル。レゲエ、ブルース、R&B、そしてゴスペルといった音楽を、ジャムセッション的な雰囲気の中でリラックスしながら演奏している、そういう一枚だ。

トップはゴスペル・ナンバーをカントリー・ブルース風味で料理した「ジーザス・カミング・スーン」。ECのドブロ・ギターがなんともシブい味わいを加えている。ジョージ・テリーのアコギもいい感じだ。

続く「揺れるチャリオット」も有名なゴスペル曲。レゲエ・アレンジに意表をつかれるが、これが意外といけるんだな。イヴォンヌ・エリマン、マーシー・レヴィ。ふたりの女声コーラスも、やや地味めなECの声を、うまくバックアップしていてグー。

「小さなレイチェル」は、ロッキン・ジミーことジム・バイフィールドの作品。R&B風味のこのナンバーを、ECはリラックスして歌っている。バック演奏がやや単調に流れ過ぎて、盛り上がりに欠ける感じはあるが、それもまたセッションっぽくていいんでないの。

レゲエ・スタイルの「ドント・ブレイム・ミー」は「アイ・ショット・ザ・シェリフ」のアンサーソング。ECとテリーの共作。ECの歌も味わい深く、すっかりこの手のサウンドが、板についた印象がある。

アナログ盤A面ラストの「ザ・スカイ・イズ・クライング」は、エルモア・ジェイムズの作品のカバー。

エルモアの声をめいっぱい張り上げたボーカル・スタイルとは対極の、ECのボソボソッとした歌いぶりも、これはこれで悪くない。次第に感情を高めていくさまがいい。また、スローなアレンジにのせての、スライド・プレイにも注目。ワウを加えたその演奏は、スリリングのひと言だ。

ECは以後も「イット・ハーツ・ミー・トゥー」を取り上げるなど、エルモアへのリスペクトを明らかにしている。激情のブルースマン・エルモアは、ECにとってロバート・ジョンスンなどと並んで、永遠の憧憬の対象なのだろう。

「ブルースを唄って」は、レオン・ラッセル夫人としても知られるメアリー・マックリアリーの作品。「アフター・ミッドナイト」を思わせるノリのいいR&Bナンバーで、バック・コーラスが実に効果的。ふたりの女性抜きでは、このアルバム、実にしまりのないサウンドになっていたであろうね。

「ベター・メイク・イット・スルー・トゥデイ」は、ECの作品。ディック・シムズによるオルガンの響きが印象的な、内省的なムードのスロー・バラード。

ナチュラルで美しいメロディは、ECのコンポーザーとしての高い実力を、いまさらながら認識させてくれる。

ラテン・ミュージックなノリから一転、ビートルズ・ライクな美しいハーモニー・サウンドとなる「可愛いブルー・アイズ」は、これまたECの音楽的な幅の広さを感じさせるオリジナル。

ECのガットギター・ソロもいい。のちのアンプラグドな音世界は、ここに原点があるといっていいだろう。

「心の平静」も、メロディの美しさがキラリと光る、オリジナル曲。そのアレンジは「アビー・ロード」から「オール・シングス・マスト・パス」に至るあたりのサウンドをほうふつとさせる。

ECの非ブルース的な側面を代表する一曲といえよう。

ラストも、自作バラードの「オポジット」。どこか「レイラ」を思い出させるメロディ、繊細なアレンジ。申し分のない、極上のラブ・バラードであります。こんな曲、隣りでギターを弾いて歌われた日にゃ、どんな女性だってオチてしまうでありましょう。にくいね、コンニャロ! そんな感じであります。

オトコのファン向けには、ブルースやR&B路線、オンナのファン向けにはポップなラブ・バラード&レゲエ路線。幅広い音楽性でリスナーをがっちりつかまえる彼は、やはりホンマモンの世界的スターである。

常に最高レベルの楽曲を世界中のファンから求められるプレッシャー、これは大変なものがあるだろうが、それさえも見事に作品に昇華してしまう才能。EC、あんたはやっぱりスゴいお人ですわ。脱帽。

<独断評価>★★★★☆



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