2002年4月20日(土)
エリック・クラプトン「TIMEPIECES」(Polydor 800 014-2)
1.I SHOT THE SHERIFF
2.AFTER MIDNIGHT
3.KNOCKIN' ON HEAVEN'S DOOR
4.WONDERFUL TONIGHT
5.LAYLA
6.COCAINE
7.LAY DOWN SALLY
8.WILLIE AND THE HAND JIVE
9.PROMISES
10.SWING LOW, SWEET CHARIOT
11.LET IT GROW
本HPの掲示板でもなにかと話題になることの多い、エリック・クラプトン。今日はそんな彼の、何種類も出ているベスト盤のうちのひとつ。82年リリース。
70年発表のファースト・ソロ・アルバム「ERIC CLAPTON」から、78年の「BACKLESS」にいたるまでの、70年代のECの軌跡がたどれる一枚だ。
「ERIC CLAPTON」からは、(2)の1曲。ごぞんじ、名シンガー・ソングライター、J・J・ケールの作品。ノリのいいアップテンポのナンバー。
同じく70年に結成したデレク&ザ・ドミノスのファーストにして、ロック史上不朽の名盤の誉れ高い「LAYLA AND OTHER ASSORTED LOVE SONGS」からは、もちろんタイトル曲の(5)。
これは後にも何度かリヴァイヴァル・ヒットしたという、きわめつけのロック・スタンダード。
クラプトンの激情ほとばしるようなヴォーカルが、出色のできだ。
しばらくドラッグ漬けとなり、実質引退状態だった彼が、ようやく復帰した74年のアルバム「461 OCEAN BOULEVARD」からは、大ヒット曲(1)、カバーものの(8)、そしてオリジナルの(11)、計3曲。
(1)はボブ・マーレィ&ザ・ウェイラーズがオリジナル。レゲェというジャマイカ音楽を、一躍世界中にひろめる契機となった1曲だ。
(8)はジョニー・オーティスの作品。クラプトンはこれをモダンなビートで見事、70年代によみがえらせた。
(11)は、クラプトンがアメリカ音楽に開眼、次第にアコースティックな傾向を強めるようになったのがよくわかる作品。
「461~」以降、彼は再びコンスタントにアルバムを発表するようになる。「THERE'S ONE IN EVERY CROWD(安息の地を求めて)」は75年の作品。
商業的にはあまり成功したとはいえない一枚だが、隠れた名演もいくつか含んでおり、本アルバム収録の(10)はその代表。
トラディショナルな黒人霊歌、つまりゴスペルをレゲェ・ビートでリニューアルした、クラプトンならではのアイデアが光る。
イヴォンヌ・エリマン、マーシー・レヴィというふたりの強力な女声コーラスを従え、心にしみる名曲に仕上がった。
同年には、ボブ・ディランの名曲をカバーしたシングルもリリース。(3)である。
このベスト盤で初めてアルバムに収録。シングル盤による入手が困難となった現在、このアルバムでチェックする価値は十分あるだろう。
その年にはライヴの名盤「E.C. WAS HERE」、翌76年には「NO REASON TO CRY」もリリースしているが、そのへんは飛ばして、77年リリースのヒット・アルバム「SLOW HAND」へ。
そこからは(4)、(6)、(7)の三大ヒットを収録。道理で売れたわけだな(笑)。
(4)はオリジナルのバラードで、彼のベスト・ヒットのひとつ。ウェディング・ソングとしての人気も絶大だ。
こういう非ブルース的な歌のヒットにより、彼のネームは世界的なものとなった。
(6)は(2)同様、J・J・ケールの作品。他人のいい曲を探し出してきてカバー、しっかり自分の十八番にしてしまうあたりが、クラプトンの商売上手なところ。
(7)はそのケールの影響のもとに書かれた作品。マーシー・レヴィ、ギターのジョージ・テリーとの共作。
いわゆる「レイドバック」した、カントリー風サウンド、そして枯れたギタープレイが印象的。従来のようにバリバリ弾きまくるのではなく、「味わい」で勝負するギタリストに脱皮したといえる。
78年には「BACKLESS」を発表。前作ほどの精彩は感じられないアルバムだったが、ここからは(9)を収録。
(7)の延長線上にある、カントリー・サウンド。クラプトンがドブロ・ギターを弾いているのが聴きものだ。
以上、7枚のアルバムからの11曲。まだまだほかにいい曲あったんじゃないの!?というツッコミは十分入れられるだろう。
あるいは、逆に「これはいらないんじゃないの?」というご意見もいろいろ出そうだな。
が、まあ、「理想のコンピ盤」はクラプトン・ファンの皆さんひとりひとりに作っていただくことにして、これだけの多彩なヒット曲群を長年にわたって生み出してきた、クラプトンの才能を素直に賛美しようではないの。
ただ、ギターが上手いというだけでは、ここまで数多くの曲をヒットさせることは絶対ムリ。
ヘタウマとか何とかいわれようが、彼の歌にはえもいわれぬ「味」があり、人々の心を捉えて離さない「サムシング」がある。
70年代、それは彼のヴォーカル、演奏にもっとも脂がのっていた時期。
ぜひもう一度彼のアルバムを引っぱり出して聴き、あなた自身のベスト・セレクションを作ってみてはいかがでしょう?
<独断評価>★★★★☆