2002年4月14日(日)
ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ「A HARD ROAD」(LONDON 820 474-2)
1.A HARD ROAD
2.IT'S OVER
3.YOU DON'T LOVE ME
4.THE STUMBLE
5.ANOTHER KINDA LOVE
6.HIT THE HIGHWAY
7.LEAPIMG CHRISTINE
8.DUST MY BLUES
9.THERE'S ALWAYS WORK
10.THE SAME WAY
11.THE SUPER-NATURAL
12.TOP OF THE HILL
13.SOMEDAY AFTER A WHILE(YOU'LL BE SORRY)
14.LIVING ALONE
ジョン・メイオール率いるブルースブレイカーズ、67年リリースのアルバム。
当時のメンバーは彼のほか、ピーター・グリーン(g)、ジョン・マクヴィー(b)、エインズリー・ダンバー(ds)。
クラプトンに代わって参入したグリーンの、初お目見え盤ということになる。
タイトル曲(1)はメイオールの作品。彼のおなじみの「泣き節」が印象的なピアノ・ブルース。
筆者的には、この「うわずった声」がちょっと苦手なんで、今ひとつ好みではない。彼のピアノはいい味を出していると思うが。
(2)は同じくメイオールのオリジナル。彼のオルガン、ハープをフィーチャーしたシャッフル。
ま、可もなく不可もなくといった出来。ここまではギターはほとんど前面に出てこない。
(3)はウィリー・コブス作のアップ・テンポのブルース。前にメイオールのコンピ盤を取上げたときにも書いたが、オールマンズがこのアレンジをまんま使ってしまったという、いわくつきの曲。グリーンの弾くリフが、なかなかイカしている。
(4)はフレディ・キング作の、グリーンのギターをフィーチャーしたインスト。クラプトン参加のアルバムにおける「ハイダウェイ」的ポジションのナンバー。
ここでのグリーンのプレイは若さとガッツにあふれ、、ECのそれと優るとも劣らぬ出来。ブルース・ギターを弾く者ならぜひ使いたくなる、おいしいリック満載である。コピーに最適。
(5)は、ホーン・セクションも加えた、重厚なブルース。メイオールの代表作品のひとつといえよう。
聴きものは、なんといっても、へヴィーなビートに載って展開される、グリーンの泣きのギター。
激情ほとばしるプレイは、すべてのギタリスト必聴だ。
(6)はメイオールの多重録音ヴォーカルによる、ピアノ・ブルース。メイオールのオリジナル。
「泣き節」の二乗は、ちょっとトゥー・マッチな印象あり。これも、筆者的にはパス。
(7)もメイオールの作品。彼のハープとオルガンを全面にフィーチャー。ホーンも加えて、分厚い音作りをしている。
こちらのヴォーカルも多重録音のようだが、(6)に比べれば、まだあっさりした感じで聴きやすい。
(8)はおなじみのブルース・クラシック。でもタイトルが「ブルーム」ではなく「ブルース」であることからわかるように、ロバジョンというよりは、エルモア・ジェイムズのヴァージョンがお手本。
当然、メイオールのエルモアばりのスライド・ギター、そして迫力に満ちたヴォーカルが聴ける。これは結構いけます。
(9)はオリジナルのインスト。ハープと、ハミング(というかグロウル、唸りというべきか?)を絡めた、短いナンバー。ちょっと息抜きしてみました、という印象。
(10)はグリーンの作品。ミディアム・スローなブルース。枯れた味わいのあるヴォーカルも、彼によるもの。
おなじみの、レス・ポールから紡ぎ出される艶のあるトーンが、グー。短めながら、いいソロだ。
(11)はコンピ盤にも登場していた、グリーン作のインスト。「フリートウッド・マック」にそのままつながって行く、マイナー・ブルース全開のサウンドだ。
エコーを効果的に利かせたギターがたまらなく官能的。身もだえしそう(笑)。とにかく名曲にして、名演。
(12)はメイオール作の、ミディアム・テンポのブルース。
彼のピアノに、グリーンの切れ味鋭いギターが絡む。歌のほうは「泣き節」の多重録音なので、いまイチ。
(13)はこれまたフレディ・キング作の、R&Bバラード・ナンバー。
ゆったりとしたテンポで、歌い上げるメイオール、そしてフレキンばりにギターを派手にスクウィーズさせ、泣かせまくるグリーン。
ギターは100点満点。うーむ、もう少し歌がうまければねーとは思うが、あまりひとのことは言えない(笑)。
(14)はメイオールの作品。ミディアム・ファスト・テンポのブルース。
ここではスライド・ギターを弾きつつ、ハープを聴かせるメイオール。
他の曲ではオルガン、ピアノ等も弾いているし、そして作曲&アレンジも。まさに八面六臂の活躍ぶり。
歌はともかく、他の楽器は実に巧みに弾きこなすひとだなーと思う。
しかしながら本作では、主役をグリーンに見事に食われている。やはり、グリーンのプレイは天才のそれ以外のなにものでもない。
フレージング、トーン、そして何よりも天性のブルース・フィーリング。完璧の一語。
アルバムも、明らかに、メイオール主導のトラックと、グリーン主導のトラックではカラーが違う。そして、出来ばえも。
酷な言い方だが、グリーン主導のトラックのほうが、断然出来がいい。これでは、どちらがリーダーだか、って感じ。
当然ながら両雄は相並び立たず、早い時期にグリーンはメイオールのもとを巣立ち、自分が主導するバンドを結成することとななる。
ピーター・グリーンのほんの短い在籍期間中に作られた当アルバムは、天才グリーンの足跡を知る上で欠かせない一枚だ。
<独断評価>★★★★