2007年4月1日(日)
#353 フリートウッド・マック「ビハインド・ザ・マスク」(ワーナーパイオニア WPCP 3430)
フリートウッド・マック、90年のアルバム。グレッグ・ラダニイおよびフリートウッド・マックによるプロデュース。
87年のアルバム「タンゴ・イン・ザ・ナイト」の発表直後脱退したリンジー・バッキンガムの後釜として、ビリー・バーネット、リック・ヴィトーのふたりのシンガー/ギタリストが加入、6人編成となったマック最初のオリジナル・アルバム。
13曲中8曲でこのふたりがペンを取り、かつボーカル&コーラスもやっているのだが‥‥。
はっきりいって、リンジーの抜けた穴は余りにも大きかった。
「ファンタスティック・マック」以降の中期マックの魅力は、やはり個性的なボーカルが3人も揃っていたこと、それに尽きるのだ。
ビリー、リック、ともに下手なシンガーではないが、声質が没個性的というそしりは免れないだろう。
リンジーの声は、かつてのシンガー3人の中では一番シャープで、エッジが立っていたが、新メンバーにはそういうピリッとした辛さは感じられない。ごくごく及第点的な声なのだ。
4人ボーカル体制になることで、コーラスに厚みはついたのだが、そのハーモニーの魅力も、リンジー在籍時のそれには劣るようにさえ感じられる。
また曲作り&サウンド作りの面でも、あまりにもアメリカナイズされてしまったという印象が強い。たとえば、新メンバーコンビ作の、M7とか。
英国出身のバンド、マックがここまでアメリカに同化してしまうと、バンドのアイデンティティはどーなってるの?といいたくなる。
とはいえ、従来からのボーカル、クリスティンやスティーヴィーが曲を書き、リードをとる曲では、これまでのマックの魅力はほとんど損なわれていないのが、まあ救いといえば救いか。
だが、新メンバーが歌うナンバー(M3など)では、「どこのバンド、これ?」状態である。
バンドにおいてシンガーの「声」のもつ独自の魅力というか、威力というものは、それを失ってみて初めてわかる。
「ビハインド・ザ・マスク」は、残念ながらそれを証明してしまった作品だ。
これまで生み出してきた諸作品の素晴らしさに比べると、正直聴き劣りしてしまう。
もちろんサウンドの質の高さは変わっていないのだが、リンジーの不在は、たとえふたりの実力派ミュージシャンを投入しても、穴埋め出来ていない。
何人ものメンバーがいるバンド。でもたったひとりのメンバ-が抜けるだけで、バンドの魅力が大きく損なわれてしまったりする。バンドって、実に難しいものですね。
<独断評価>★★★