2023年1月11日(水)
#420 DR. FEELGOOD「DOWN BY THE JETTY」(ワーナーミュージック ジャパン UA WPCR-15503)
英国のロック・バンド、ドクター・フィールグッドのデビュー・アルバム。75年リリース。ヴィック・メイルによるプロデュース。
ドクター・フィールグッド(以下DF)はリー・ブリロー(Vo、Hca)を中心に結成された4人編成のバンド。
エセックス州のローカル・バンドとして結成されたのが71年なので、レコードデビューまでは結構時間がかかっている。
しかし、メジャーデビュー、即大人気となり、76年のライブ盤「殺人病棟」は全英1位の大ヒット。
しかし、主要メンバーのウィルコ・ジョンスン(G)が77年に脱退したことにより、一時盛り上がった人気も冷めてしまう。
ブリローが94年に亡くなった後も、新ボーカルでバンドを継続して現在に至っているが、ジョンスンに言わせると「自分が脱退した時にDFは終わった」とのことである。
筆者も、DFの最大の魅力はジョンスンの指弾きによるギター・プレイ、そして彼の作る曲にあると思っているので、彼らの全盛期は2年で終わったのだと思う。
このデビュー盤は、全13曲。ほとんどが3分前後の、短い曲ばかりだ。60年代前半のポップ・アルバムの大半がとっていた、シングル曲の寄せ集めみたいなスタイルだが、これが複雑化、難解化、重厚長大化の一途であった当時の英国ロック界に新鮮な衝撃を与えた。
いわゆるパブ・ロックの誕生、台頭である。
オープニングの「She Does It Right」は、軽快なロックンロール。単純なリフの繰り返しが快感なナンバー。これこそが、DFの真骨頂なのだ。
彼らのライブを観たことがある人なら覚えているだろうが、演奏時の、メンバーの奇妙な往復歩行運動が笑える曲だ。
続く「Boom Boom」はもちろん、ジョン・リー・フッカー62年のヒットのカバー。ブリローのブルース・ハープがイカしている。
ブルース、ブギといった黒人音楽もまた、DFの重要なエレメントだ。
「The More I Give」は、どことなくニューオリンズR&B風の明るいナンバー。この脳天気さが、難解になったロックを解きほぐしてくれる。
「Roxette」はシングル・カットされたナンバー。シンプルなビート、印象的なリフの繰り返し、そしてハープのブロー。ノリの良さだけで、最後まで突っ走る曲調、これぞDF。
「One Weekend」は、ひたすらネアカなロックンロール。「That Ain’t the Way to Behave」は、ミディアム・テンポのシャッフル。ジミー・リード風のひなびた雰囲気のブルースだ。「I Don’t Mind」は典型的なDFサウンド。ボ・ディドリー風のジャングル・ビートにハープ。かつてヤードバーズが得意としていたスタイルだ。
彼らはヤードバーズやストーンズといった、英国のビート・バンドの原点、すなわちロックンロール、ブルース、R&Bへの回帰を目指していたということなんだろう。
「Twenty Yards Behind」はスカ・ビートがめちゃカッコいいナンバー。ステージでは絶対盛り上がったに違いない。ツートーンが流行るよりずっと前にこれをやっていたDFはスゴい。
「Keep It Out of Sight」は黒人ブルースのビートをベースにした、ヘビーなナンバー。軽めの曲が多い中では、異彩を放っている。
「All Through the City」は「She Does It Right」によく似たスタイルのロックンロール。ソリッドなテレキャスター・サウンドが耳に残るナンバー。「Down by the jetty」という歌詞で分かるように、実質的なアルバム・タイトル・チューン。
「Cheque Book」は英国のロックミュージシャン、ミッキー・ジャップの作品。ギターのカッティング、リズム隊の刻むビートに、DFならではのグルーヴが感じられる。
「Oyeh!」は英国のロック・ギタリスト、ミック・グリーンの作品。グリーンといえば、ジョニー・キッド&ザ・パイレーツのメンバーとして有名だが、DF、とりわけジョンスンがグリーンから受けた影響はハンパないようだ。そのリスペクトの表明として、こんなインスト曲をわざわざやっているのだから。
前出の「Keep It Out of Sight」も、パイレーツの影響のもとに生まれたナンバーだそうで、
ラストは「Bonie Moronie」「Tequila」のメドレーのライブ録音。
前者はニューオリンズのシンガー、ラリー・ウィリアムズがヒットさせたロックンロール。後者はチャック・リオが書き、チャンプスがヒットさせたラテン・ナンバー。ホーン・セクションも含めた編成で、乗りに乗りまくるDFが実にいい感じだ。
つまりは、「パーティ・バンド」として最高なんだな、ドクター・フィールグッドは。
「七面倒な理屈は他のバンドに任せておけばいい。オレたちはひたすら楽しい音楽を提供するぜ!」
こういう気概を感じさせてくれるデビュー盤。
同じ阿呆なら、踊らにゃ損損。テンションアゲアゲになりたいなら、この一枚ですぜ。
<独断評価>★★★★
英国のロック・バンド、ドクター・フィールグッドのデビュー・アルバム。75年リリース。ヴィック・メイルによるプロデュース。
ドクター・フィールグッド(以下DF)はリー・ブリロー(Vo、Hca)を中心に結成された4人編成のバンド。
エセックス州のローカル・バンドとして結成されたのが71年なので、レコードデビューまでは結構時間がかかっている。
しかし、メジャーデビュー、即大人気となり、76年のライブ盤「殺人病棟」は全英1位の大ヒット。
しかし、主要メンバーのウィルコ・ジョンスン(G)が77年に脱退したことにより、一時盛り上がった人気も冷めてしまう。
ブリローが94年に亡くなった後も、新ボーカルでバンドを継続して現在に至っているが、ジョンスンに言わせると「自分が脱退した時にDFは終わった」とのことである。
筆者も、DFの最大の魅力はジョンスンの指弾きによるギター・プレイ、そして彼の作る曲にあると思っているので、彼らの全盛期は2年で終わったのだと思う。
このデビュー盤は、全13曲。ほとんどが3分前後の、短い曲ばかりだ。60年代前半のポップ・アルバムの大半がとっていた、シングル曲の寄せ集めみたいなスタイルだが、これが複雑化、難解化、重厚長大化の一途であった当時の英国ロック界に新鮮な衝撃を与えた。
いわゆるパブ・ロックの誕生、台頭である。
オープニングの「She Does It Right」は、軽快なロックンロール。単純なリフの繰り返しが快感なナンバー。これこそが、DFの真骨頂なのだ。
彼らのライブを観たことがある人なら覚えているだろうが、演奏時の、メンバーの奇妙な往復歩行運動が笑える曲だ。
続く「Boom Boom」はもちろん、ジョン・リー・フッカー62年のヒットのカバー。ブリローのブルース・ハープがイカしている。
ブルース、ブギといった黒人音楽もまた、DFの重要なエレメントだ。
「The More I Give」は、どことなくニューオリンズR&B風の明るいナンバー。この脳天気さが、難解になったロックを解きほぐしてくれる。
「Roxette」はシングル・カットされたナンバー。シンプルなビート、印象的なリフの繰り返し、そしてハープのブロー。ノリの良さだけで、最後まで突っ走る曲調、これぞDF。
「One Weekend」は、ひたすらネアカなロックンロール。「That Ain’t the Way to Behave」は、ミディアム・テンポのシャッフル。ジミー・リード風のひなびた雰囲気のブルースだ。「I Don’t Mind」は典型的なDFサウンド。ボ・ディドリー風のジャングル・ビートにハープ。かつてヤードバーズが得意としていたスタイルだ。
彼らはヤードバーズやストーンズといった、英国のビート・バンドの原点、すなわちロックンロール、ブルース、R&Bへの回帰を目指していたということなんだろう。
「Twenty Yards Behind」はスカ・ビートがめちゃカッコいいナンバー。ステージでは絶対盛り上がったに違いない。ツートーンが流行るよりずっと前にこれをやっていたDFはスゴい。
「Keep It Out of Sight」は黒人ブルースのビートをベースにした、ヘビーなナンバー。軽めの曲が多い中では、異彩を放っている。
「All Through the City」は「She Does It Right」によく似たスタイルのロックンロール。ソリッドなテレキャスター・サウンドが耳に残るナンバー。「Down by the jetty」という歌詞で分かるように、実質的なアルバム・タイトル・チューン。
「Cheque Book」は英国のロックミュージシャン、ミッキー・ジャップの作品。ギターのカッティング、リズム隊の刻むビートに、DFならではのグルーヴが感じられる。
「Oyeh!」は英国のロック・ギタリスト、ミック・グリーンの作品。グリーンといえば、ジョニー・キッド&ザ・パイレーツのメンバーとして有名だが、DF、とりわけジョンスンがグリーンから受けた影響はハンパないようだ。そのリスペクトの表明として、こんなインスト曲をわざわざやっているのだから。
前出の「Keep It Out of Sight」も、パイレーツの影響のもとに生まれたナンバーだそうで、
ラストは「Bonie Moronie」「Tequila」のメドレーのライブ録音。
前者はニューオリンズのシンガー、ラリー・ウィリアムズがヒットさせたロックンロール。後者はチャック・リオが書き、チャンプスがヒットさせたラテン・ナンバー。ホーン・セクションも含めた編成で、乗りに乗りまくるDFが実にいい感じだ。
つまりは、「パーティ・バンド」として最高なんだな、ドクター・フィールグッドは。
「七面倒な理屈は他のバンドに任せておけばいい。オレたちはひたすら楽しい音楽を提供するぜ!」
こういう気概を感じさせてくれるデビュー盤。
同じ阿呆なら、踊らにゃ損損。テンションアゲアゲになりたいなら、この一枚ですぜ。
<独断評価>★★★★