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音盤日誌「一日一枚」#395 JOHNNY WINTER「JOHNNY WINTER 」(Columbia CK 9826)

2022-12-14 06:15:00 | Weblog
2022年12月14日(水)



#395 JOHNNY WINTER「JOHNNY WINTER 」(Columbia CK 9826)

ギタリスト、ジョニー・ウィンターのコロムビアでのデビュー・アルバム。69年リリース。彼自身によるプロデュース。

68年に初レコーディングした自主制作盤「ザ・プログレッシヴ・ブルーズ・エクスペリメント」が認められて、ウィンターはCBSと契約する。

その契約金が、当時の金額で数十万ドルと破格であったことから「100万ドルのギタリスト」という呼び名がついた。ま、売り上げの期待値込みのネーミングだな(笑)。

完全したデビュー盤は、さすがにそれだけのセールスは出せなかったが、全米24位とブルース系のロック・ミュージシャンとしては、なかなかの成果を上げることが出来た。

オープニングの「アイム・ユアーズ・アンド・アイム・ハーズ」はウィンターのオリジナルのブルース・ロック。

バックはベースのトミー・シャノン、ドラムのアンクル・ジョン・ターナーという前作以来のメンツだ。

この曲、一聴して既聴感を覚えたリスナーも、けっこういるだろう。

それもそのはず、アルバムを発表して数か月後、ブライアン・ジョーンズ追悼コンサートを英国ロンドンのハイド・パークで開いたローリング・ストーンズが、オープニングに選んだ曲がこれだった。

その時はリハーサル不足のせいかグダグダで、ちょっと残念な演奏だったが、ダブル・スライド・ギターという編成が妙にカッコよかったのを筆者も覚えている。

オリジナル・バージョンのこちらも、ウィンターの多重録音によるスライド・プレイが、なんともスリリングだ。

「ビー・ケアフル・ウィズ・ア・フール」はB・B・キング作のスロー・ブルース。前曲同様トリオ編成でロックっぽいアレンジ。

この曲では、ウィンターのウリである超・超・速弾きを前面に押し出している。

ウィンターのギター・プレイは、基本的に「間」「タメ」を置かず、矢継ぎばやにフレーズを繰り出すタイプ。

彼はこのハンパないスピード感で、当時の全米リスナーの度肝を抜いたのである。

50年以上経った現在聴くと「プロならフツーじゃね?」というレベルのスピードだけど、そこはまあ、時代というものっしょ。

「ダラス」はウィンターのオリジナル。リゾネーターを使った、スライド弾き語りのナンバー。

ジョン・F・ケネディ大統領暗殺の悲劇を題材にしたブルースだ。

純正デルタ・ブルースのスタイルで弾き、ガナるように歌うウィンター。実にシブいっす。

「ミーン・ミストリーター」はマディ・ウォーターズでおなじみのブルース・ナンバー。歌詞はマディ版からだいぶん改変を加えている。

マディ・ウォーターズはB Bと同じく、ウィンターが最も敬愛するブルースマンのひとりである。絶対外せない一曲だったといえる。

この曲には、ふたりのビッグなブルースマンがゲスト参加している。

ウッドベースのウィリー・ディクスン、そしてハープのビッグ・ウォルターである。

この重鎮たちが加わることで、サウンドは見事にオーセンティックなブルースにまとまる。ホンモノの出す音の威力、恐るべし。

ウィンターの歌もギターも、テクニック以上にブルースな雰囲気がある。「ブルースは黒人に限る」と主張する頑固なファンにも、「白人だけど、ちょっとやるじゃん」と思わせてしまう出来ばえだ。

「レランド・ミシシッピー・ブルース」は、ウィンターのオリジナル。当時のフリートウッド・マックあたりにも共通した感触を持つ、ワイルドなブルース・ロック・ナンバー。

うねるようなギター・プレイが迫力満点。さすがウィンターである。

「リトル・スクール・ガール」は戦前活躍したブルースマン、サニー・ボーイ・ウィリアムスン一世の作品。ジュニア・ウェルズのカバーでも知られている。

だが、ウィンターは時代の近いウェルズのタイプのアレンジはあえて選ばず、本来のツービートを活かしたオーソドックスなブルースに料理している。

サウンドのいいアクセントになっているのが、バックのホーン・セクション。そのうちアルト・サックスは、ウィンターの実弟エドガーである。

「いい友だちがいるならば 」は原題が「When You Got a Good Friend」。ご存知、ロバート・ジョンスン作のブルースである。

エリック・クラプトンがクリームで「クロスロード」を取り上げて以来、白人ロック・ミュージシャンがロバジョンの曲を演奏することが増えて来た。

ストーンズが「レット・イット・ブリード」で「むなしき愛」を取り上げたように、ウィンターもこの曲でジョンスンへの敬意を表明した。

再びリゾネーターを弾き、オリジナルに極めて近いデルタ・スタイルのサウンドを聴かせてくれる。

前曲もそうであるが、ウィンターは、時代の古い曲は現代風にアレンジするよりは、オリジナルのスタイルに近づけるほうが、その曲本来の良さを出せると考えているようだ。

故に自作曲のアレンジとカバーのアレンジは、おのずと違って来る。

ウィンターのブルースに関する、意外と保守的なポリシーが汲み取れるナンバーだ。

「アイル・ドラウン・イン・マイ・オウン・ティアーズ」は、このアルバムの中ではちょっと毛色の変わったバラード・ナンバー。

トランペッターにして作曲家のヘンリー・グローバーによるヒット曲で、レイ・チャールズをはじめ、アレサ・フランクリン、エタ・ジェイムズらによって歌われている。

このセンチメンタルで、なかなか難しいバラード曲を、ウィンターはわりとすんなり自分のものにしている。

いつものガナりスタイルだけではない、思い入れたっぷりな歌いぶりが味わえる一曲。バックのホーン、そして女声コーラスもご機嫌だ。

そしてこの曲でも、弟エドガーが得意のピアノで参加して、兄を盛り立てている。エドガー、グッジョブ!である。

ラストの「バック・ドア・フレンド」はテキサス・ブルースマンとしてはウィンターの大先輩にあたるライトニン・ホプキンスの作品。

オリジナルは弾き語りアレンジだが、ここでは自分のバンドをバックに、スライド・ギター、そして自身のハープも披露して、ダウンホームなバンド・サウンドを作り上げている。

ライトニン・ホプキンスの持つ、アーシーな匂いを損なわずに、ディープなブルースを紡ぐウィンター。

オリジネーターへの深い尊敬なくしては、こういう音は出せるものではないね。

センセーショナルな話題だけではない、ホンモノの音楽がそこにある。乞う一聴。

<独断評価>★★★★


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