2006年4月16日(日)
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#315 山下達郎「JOY」(アルファ・ムーン 50XM-95~96)
新年度なんで、またフォーマットを少し変えてみます。
山下達郎、89年リリースのライブ盤。81年の六本木ピットインから、89年の宮城県民会館に至るまで、8年分のライブ音源を集大成。CD2枚、22曲がたっぷり楽しめる。78年の「IT'S A POPPIN' TIME」以来、実に11年ぶりのライブ盤。
達郎ライブのクォリティの高さには定評があって、80年代に入って彼がメジャーブレイクして以来、ライブ盤のリリースが熱望されていたものの、なかなか出ずにいた。
ファンの飢餓状態は年ごとに募り、業界内の流出音源による「海賊盤」みたいなものまで登場したぐらい。
ようやくこのアルバムで、それが沈静化されたという、いわくつきの一枚なのである。
構成としては、一回のライブを収録したものでなく、いわば「ベスト・オブ・ライブ・レコーディングス」だから、クォリティはほぼ最高水準といっていい。筆者的には、出来にばらつきがあっても、一回のステージをフル収録したものも聴いてみたい気がするが。
収録曲のほうも、足かけ9年にわたっているから、70年代の昔の曲から、89年当時最新の曲に至るまで、実にバラエティに富んでいる。
個人的にジーンときてしまったのは、86年サンプラザにての「RAINY DAY」、89年宮城での「LA LA MEANS I LOVE YOU」、86年郡山の「ふたり」、85年神奈川県民大ホールの「メリー・ゴー・ラウンド」あたりかな。どれも、それらが発表された当時の、自分の青春(とよべるようなカッコいいもんじゃないが)の一曲だったもので。
ときにはバック演奏を止めさせ、アカペラだけで歌う達郎。また、観客席側に降りて、マイクなしで歌う達郎。
これがまた、素晴らしくいい。ゴージャスなバッキングの曲も、もちろん文句なしのクォリティなのだが、彼の「素」の声の美しさ、張りは、さすがに本物であるな。
どんなに人気が上がっても、ハコの規模は中野サンプラザを上限とし、けっして大規模ホールではライブをやらないというポリシーもさすがだ。今の達郎の人気なら、武道館はいうまでもなく、東京ドームだって満杯に出来るだろうが、絶対そういうことはやらない。音楽はクォリティが命だから。
ポップスによらず、ロックによらず、およそライブをやるアーティストにとって、理想形のようなものが、このアルバムには示されている。
音楽を奏でること、聴くことの喜び、楽しさ、感謝、感動。そういったものを包括した一枚。つまりは「JOY」というタイトルに、すべては集約されているのだ。
日本にファンキーな音楽を根付かせた(おそらく最大の)功績者、山下達郎の「粋(すい)」がここにある。
日本人アーティストが作り出した、あまたあるライブ盤の中でも、五指には入ること、間違いない。サウンド・プロダクション、歌やコーラスのクォリティ、どれをとっても、「妥協」というものがない。
要するに、聴かない手はないよ、ってことです。
<独断評価>★★★★☆