2010年9月18日(土)
#139 シカゴ「25 or 6 to 4」(Chicago II/Columbia)
#139 シカゴ「25 or 6 to 4」(Chicago II/Columbia)
ブラスロックの大御所グループ、シカゴ、70年リリースのシングル。メンバーの一人、ロバート・ラムの作品。
これを聴いて「懐かしい!」と思わない50代の人間はそういるまい。シカゴの日本での出世作ともいえる大ヒット、「長い夜」である。アメリカ本国では70年6月にリリースされ、ビルボード4位のスマッシュ・ヒット。日本でヒットしたのは翌年に入ってからぐらいだったか。
いま、約40年ぶりに聴いてみると、実に新鮮なサウンドだ。いまどき、こういうサウンド・プロダクションをするロックバンドなんて絶対にないだろうと思うくらい、ユニークだ。
いきなり、ギター、ベースのみのシンプルかつ重厚なリフで始まるんだが、当時はこれがやけに衝撃的だった。ストーンズの「ブラウン・シュガー」に匹敵する、インパクトあるイントロだった。シカゴのシの字も知らなかったリスナーも、このイントロで一気にやられた。
キーボーディストであるラムが作った曲なのに、彼が歌うでもなく、キーボードが表に出てくるわけでもない、といった点も、いま考えてみればスゴいことに思える。ラムはこの曲においては、完全にバンド内プロデューサーに徹していたのだ。
この曲における主役はふたり。一人はいうまでもなく、リード・ボーカルをとったピート(あるいはピーター)・セテラ。彼の特徴ある甲高い声は、この曲や「Make Me Smile」あたりの曲により、シカゴの表看板として認知された。どちらかといえばポップとはいいがたい曲調のこの曲をヒットたらしめたのは、セテラの抜群の歌唱力によるところ大だろう。
もう一人の主役はリード・ギタリスト、テリー・キャス。愛器テレキャスターのソリッドな音がいかにも印象的だ。2分53秒のシングル・エディットではソロの大部分がカットされているが、4分50秒のアルバム・バージョンでは、ワウ・ペダルをフルに駆使して延々と弾きまくっている。
ワウ・ペダルというものも、まだあまり一般リスナーに認知されていなかったころなのだが、これがまたインパクト大だった。
当時中学生だった自分とそのクラスメート周辺では、キャスの超速弾き(いまなら、このくらい当たり前の速度になってしまっているが)を真似してみたり、挫折したり、みたいなヤツが結構いたような。まあ、なんとも牧歌的な時代だったのだ。
そんな、われわれAround Fiftyにとってみてはさまざまな思い出がリンクした名曲、リアルタイムで聴いたことなんかねーよ、とおっしゃるお若い方も、もう一度じっくり聴いてみてはいかが。
いろんな発見があって、実に興味深いのですよ。