NEST OF BLUESMANIA

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音盤日誌「一日一枚」#262 安全地帯「Remember to Remember」(KITTY 28MS 0025)

2022-08-03 05:00:00 | Weblog

2005年2月20日(日)



#262 安全地帯「Remember to Remember」(KITTY 28MS 0025)

"N"'s Home Pageによるディスク・データ

安全地帯のファースト・アルバム。83年リリース。星勝プロデュース。

知らぬ人もいないと思うが、安地は北海道旭川市出身の、リード・ヴォーカリスト玉置浩二を中心とした5人組。82年、シングル「萌黄色のスナップ」でデビュー。

このアルバムは「ワインレッドの心」の大ヒット(83年末~84年)で一躍メジャーブレイクする前にリリースされた、彼らの原点ともいうべき一枚だ。

ひさしぶりにレコード棚から引っ張り出して聴いてみると、その音の完成度には本当に舌を巻く。

サウンドの基本はヘヴィー・メタルなんだが、それにジャズやブルースやカントリー・ロックやブラック・コンテンポラリーなどさまざまなジャンルの音が融合されて、言ってみれば安地独自のサウンドに昇華されている。

とにかく、歌唱力や演奏、歌作りのうまさはデビュー当時から、折り紙付きであった。

ところが、デビューしてしばらくは、なかなか人気に火が付かなかった。

その理由は、アナログ盤ジャケットの裏の写真を見れば、明白だろう。

もう、フツーのアンちゃんたちの集団。芸能人オーラまるでナシ(笑)。衣装もダサダサ。



一応バンドの立役者のはずの玉置でさえ、ヘンなカーリーヘアでえらくイモっぽい。後は推して知るべし。

これではアカンということで、「ワインレッドの心」リリースの頃からは、アパレル・メーカーと衣装タイアップをし、髪型やメイクもバッチリ決めて、メディアに露出するようになった。

これが功を奏したのか、彼らも黄色い歓声を浴びるような、アイドル(?)・ロックバンドへと脱皮したのであった。

それ以降の、破竹の大進撃ぶりはみなさんご存じであろうから、特に記さないが、このアルバムをリリースした頃までの安地は、ただの「実力はむやみにあるが、まるで売れない玄人好みのバンド」のひとつに過ぎなかったのだ。

一曲目の「ラスベガス・タイフーン」から、そのサウンドには際立ったものがある。

玉置の張りつめたようなドラマティックなヴォーカル、矢萩のアグレッシヴなソロ、武沢の緻密なアルペジオ、六土と田中のタイトなビート。

さらには、プロデューサー星による、サックス、ハープ等を駆使した精緻なアレンジがバンド・サウンドに絡み合い、極上のサウンド・カクテルをリスナーに提供している。

特に感じるのは、6thや9thやメジャー7thといったコード遣いのうまさ。単調で平板になりがちなヘヴィメタ・サウンドに堕していないのは、やはりこういう音楽的に複雑なことをさらりとこなしているからだと感じる。

個人的に好きな曲は、シングルカットもされている「オン・マイ・ウェイ」や、「アイ・ニード・ユー」あたりかな。歌、コーラス、演奏ともに出来がいい。「エイジ」「サイレント・シーン」も、後のヒット群へと連なる黄金パターンの曲だな。

「ラン・オブ・ラック」「ビッグ・ジョーク」あたりの、シンコペーションを多用、リズムに凝った曲もいい。こういう音の捻りが出来るバンドは、そうそういないと思う。

長い活動休止の後に復活、一昨年には10枚目のアルバムをリリースした安地。いわゆるバブリーな人気とは無縁になった彼ら、今後は自分たちのペースで地道に活動していくのだろうな。

大人のリスナーも納得出来るロック・サウンドを生み出せる稀少なバンド、安全地帯。

デビュー以来不動のサウンド・クォリティで、いまの低レベルなミュージック・シーンに喝を入れて欲しいもんだ。

そのためにも、ぜひ今年はガツンと一発、ヒットを出していただきたい。期待してます。

<独断評価>★★★☆



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