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音盤日誌「一日一枚」#445 相川七瀬「Red」(カッティング・エッジ motorrod CTCR-18001)

2023-02-05 06:13:00 | Weblog
2023年2月5日(日)



#445 相川七瀬「Red」(カッティング・エッジ motorrod CTCR-18001)

女性シンガー、相川七瀬のデビュー・アルバム。96年リリース。織田哲郎によるプロデュース。

相川は75年大阪生まれ。中学生で歌手を目指してオーディションを受けたものの、不合格。

しかし、審査員のひとりだったミュージシャン、織田哲郎の目にとまり、彼の元で約4年間修業した末にデビューまでこぎつけたという、根性の座ったひとである。

95年のデビュー曲「夢見る少女じゃいられない」がいきなり大ヒットして、織田の見る目の確かさを証明することとなった。

いわゆるアイドルとは対極にある、ヤンキー系、やさぐれ系女性シンガーの代表格である。

ダブル・ミリオンを売ったというデビュー・アルバムを、久しぶりに引っ張り出して聴いてみた。

「夢見る少女〜」以下、「バイバイ。」「LIKE A HARD RAIN」「BREAK OUT!」の4枚のヒット・シングルが収められているだけに、オリコン週間1位、年間10位のセールスも納得なのだが、ただのヒット寄せ集めとはいえない「サムシング」をそこに感じた。

それは、相川とプロデューサー織田が共有する、ロック・スピリットだ。

織田はご存知のように、まずはTUBEの諸作品の作家として名を上げ、「おどるポンポコリン」の大ヒットで地位を不動のものとし、そしてZARDの坂井泉水をスーパースターにした。

この3連コンボを成し遂げてもなお、織田にはまだやり足りないことがあった。

それは、彼自身のルーツである「ロック」を体現するアーティストを生み出すことなのだった。

それまで彼がその作曲能力を発揮していたのは、ポップな路線ばかりだったが、そこではどうしても出せない「ロック」を、どこかで実現したかった。

その夢を具現化するディーバとして突如現れたのが、相川七瀬という少女だったのだ。

いたいけな少女にあえて「お前のロックを歌ってみろ」と突きつけ、そしてその課題をクリアさせる。

こういう甘え一切抜きのロックな試練が、相川をリアルなシンガーに変えたのだ。

年齢もあってどこかまだ舌足らずな声ではあるが、相川の歌いぶりは十分にロックだ。

なぜなら、ロックとは「永遠に転がり続ける、未完成なもの」なのだから。

完成形をそこに求めることこそ、間違いなのだ。

そして、プロデューサー織田も、彼女との仕事では本来の自分を出して、のびのびと好きなことをやっているようだ。

ほぼ全曲の作曲、アレンジも担当している織田は、T・レックス、ハンブル・パイ、シン・リジィ、スージー・クアトロといった70年代のロック・スターたちのイメージをそこかしこに散りばめて、自ら大いに楽しんでいる。

一方、相川はその元ネタなどろくに知らないだろうが、織田の提供するアイテムを自分のものとして見事に消化している。

個人的には「夢見る少女〜」「バイバイ。」「SHAKE ME BABY」「GLORY DAYS」あたりが好みのナンバーだ。レトロだけど、心底ロックな音なのだ。

半数以上の曲で披露される、相川自身による歌詞もまた聴きもの。

嘘くさいアイドル・ポップスにはない、ハタチ前後の女性のナマの気持ちが、そこに感じとれるのだ。

決してスカートじゃない、ジャンプ・スーツが一番似合う女性シンガー、相川七瀬の精一杯のツッパリがなんとも初々しいデビュー盤。

ロックとは未完成形にあり、なのだ。

<独断評価>★★★☆

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