2024年2月22日(木)
#322 ジュニア・ウェルズ「Hoodoo Man Blues(Delmark)
#322 ジュニア・ウェルズ「Hoodoo Man Blues(Delmark)

ジュニア・ウェルズのファースト・アルバム「Hoodoo Man Blues」のタイトル・チューン。65年リリース。ウェルズ自身の作品。ボブ・コースターによるプロデュース。
ジュニア・ウェルズは本名エイモス・ブレイクモア、1934年テネシー州メンフィス生まれ。
周囲にジュニア・パーカー、サニーボーイ・ウィリアムスンIIといったミュージシャンが多い環境で育ち、幼少期よりブルースハープに馴染む。
10代半ばよりシカゴに移住、酒場やパーティなどでミュージシャンとして活動するようになる。マイヤーズ兄弟、フレッド・ビロウのジ・エイシズに参加、アンプリファイド・ハープの演奏で注目されるようになる。
52年、弱冠17歳にして大御所マディ・ウォーターズのバンドに迎え入れられ、マディ・バンドと共に初のリーダー・レコーディング。
50年代以降はチーフ・レーベル、プロファイル・レーベルにて「Messin’ with the Kid」「Come On in This House」「It Hurts Me Too」などのシングルをリリース。
中でも60年リリースの「Little By Little」はR&Bチャートで23位のスマッシュ・ヒットとなり、彼を人気シンガーたらしめた。
人気、実力共にトップ・ミュージシャンとなっていた65年に制作されたのが、「Hoodoo Man Blues」というデルマークでのファースト・アルバムだ。
パーソネルはウェルズの他にバディ・ガイ(当初フレンドリー・チャップという変名でクレジット)、ジャック・マイヤーズ、ビル・ローレンス。
当時のブルース・レコードはまだまだシングル曲が主流で、アルバムも既存のシングル曲の寄せ集め的な性格が強かった。また、リスナー側もアルバムを通しで聴くという習慣がほとんど無かった。
そんな時代の作品としては珍しく、このアルバムはコンセプトをきちんと持ち、トータリティを感じさせる出来に仕上がっている。(プロデューサー、コースターによる雰囲気のあるジャケット写真も含めて)
今の時代も、名盤、ウェルズの最高傑作(マスターピース)と評価されているゆえんである。
筆者が思うに、ウェルズの魅力とはそのアグレッシブはハープ演奏はもちろんのことだが、やはり彼の声の持つ独特の「スゴみ」だという気がする。
今日取り上げた「Hoodoo Man Blues」もまさに、そのスゴみが遺憾なく発揮されたナンバー。
バディ・ガイの弾く、レスリー・スピーカーを通した揺らぐようなギター・サウンドをバックに、おどろおどろしいウェルズの歌声が響きわたる。
妖しげな歌詞、呪術とさえ感じさせるウェルズの唸り声、そういった全てが、独自の世界を築き上げている。
歌詞はぜひ、上記のサイトで原文を確認して欲しい。
ウェルズの作詞家としての異才ぶりもまた、彼の魅力のひとつであるから。