2008年10月18日(土)
#54 フェントン・ロビンスン「Slow Walking」(Night Flight/Alligator)
フェントン・ロビンスン、84年のアルバムから、彼のオリジナルを。
本HPでフェントンを取り上げることは、これまでほとんどなかったですが(「パクりの殿堂」でECの「レイラ」のパクり元が、彼の作品「As The Years Go Passing By」だったなんて、小ネタぐらいですな)、ひと頃は日本でも、非常に人気の高いブルースマンだったんですよ、お若いの。
70年代、「ポストB・B・キングの急先鋒」みたいにいわれていた時期もあったぐらいで、人気投票でもつねに上位。現在のかすみ方が信じられないくらい。
それはともかく、フェントンといえば「Somebody Loans Me A Dime」(シングルは67年、アルバムは74年発表)、これでキマリ!みたいに片付けられがちですが、寡作ではありますがその後も何枚かのアルバムを出して90年代まで活動を続けていたんですよ。
で、これはアリゲイターからの3枚目ということになっていますが、実はオランダはブラック・マジック・レーベルが原盤という、いわくつきの一枚。
フェントンといえば、特徴あるメロウなギター・プレイばかり語られがちですが、もちろんシンガーとしても確かな実力を持っていて、それがあの「Somebody Loans Me A Dime」として結実したといえます。
力んで派手にシャウトしたりすることはあまりないですが、非常に深みのある、説得力のある歌声。繊細な高音と、包容力を感じさせる中低音をたくみに使いわける、見事な歌いぶりです。
フェントンの師匠格、レジー・ボイドのアレンジによる重厚なホーン・サウンドをバックに、彼のリズム感あふれるギターとボーカルが躍動する一曲。
メロウだけがフェントンじゃない、これを聴いてあなたもそう思うに違いありません。ご一聴を。