物語の中の手仕事
江戸川乱歩「押絵と旅する男」
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押絵が出てくる文学作品、江戸川乱歩の短編小説
「押絵と旅する男」をご紹介しましょう。
押絵の中の美しい女性に恋焦がれるあまり、
自ら押絵の中に入り込んでしまう男の物語。
望遠鏡で町を眺めていた時に、
一瞬目に映った美しい女性・・
彼女に一目惚れしてしまった青年は
一生懸命彼女を探し回ります。
しかし、やっと見つけたその女性は、
「のぞきからくり」の押絵の人形だったのです。
それでも彼女をあきらめきれず、
青年は、弟に望遠鏡を逆向きにして自分を
見てくれるよう頼み、人形のように小さくなって
押絵の中に入ってしまうのです。
押絵の世界で恋焦がれた女性と恋人同士になり、
幸せな時が流れていくのですが・・
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この小説が発表されたのは1929年のこと。
この当時、いかに「押絵」が人々を熱狂させる魅力を
持っていたかがわかります。
青年が一目惚れするほど美しく精巧に作られた押絵細工・・
「押絵の細工の精巧なことは驚くばかりであった。・・・・
娘の髪は、ほんとうの毛髪を一本々々値えつけて、
人間の髪を結うように結ってあり・・・
娘の乳のふくらみといい、腿のあたりのなまめいた曲線といい、
こぼれた緋縮緬、チラと見える肌の色・・・」
まるで生きているかのような押絵細工を
「のぞきからくり」のレンズの穴から覗いてみたら・・
押絵の立体感とあいあまって、3次元の別な世界が
広がっているように見えたことでしょう。
現代なら、バーチャルなゲームの世界の美女に一目惚れして、
自分もゲームの中に入り込んでしまう感じかしら?
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押絵の中の二人は・・
やがて何十年もの歳月が流れ、額や背景の紙はすすけ、
鮮やかな着物は色あせてしまっても、押絵細工の女性は
いつまでも若く初々しいままなのに・・・
もともと人間であった青年はやがて皺だらけの老人に
なってしまうのです。
人の手になる細工物が長い年月を経た時の、ある種の怖さ。
いつでもリセットできるデジタルの世界では
表現できない、残酷で幻想的な怪談物語です。
「押絵と旅する男」はこちらから読むことができます。
興味のある方はどうぞ。
今はインターネットで無料で小説が読めちゃうんですね。
デジタルな世の中はやっぱり便利です。
※写真はすべて「野村サークル50周年展」の作品です。
江戸川乱歩「押絵と旅する男」
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押絵が出てくる文学作品、江戸川乱歩の短編小説
「押絵と旅する男」をご紹介しましょう。
押絵の中の美しい女性に恋焦がれるあまり、
自ら押絵の中に入り込んでしまう男の物語。
望遠鏡で町を眺めていた時に、
一瞬目に映った美しい女性・・
彼女に一目惚れしてしまった青年は
一生懸命彼女を探し回ります。
しかし、やっと見つけたその女性は、
「のぞきからくり」の押絵の人形だったのです。
それでも彼女をあきらめきれず、
青年は、弟に望遠鏡を逆向きにして自分を
見てくれるよう頼み、人形のように小さくなって
押絵の中に入ってしまうのです。
押絵の世界で恋焦がれた女性と恋人同士になり、
幸せな時が流れていくのですが・・
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この小説が発表されたのは1929年のこと。
この当時、いかに「押絵」が人々を熱狂させる魅力を
持っていたかがわかります。
青年が一目惚れするほど美しく精巧に作られた押絵細工・・
「押絵の細工の精巧なことは驚くばかりであった。・・・・
娘の髪は、ほんとうの毛髪を一本々々値えつけて、
人間の髪を結うように結ってあり・・・
娘の乳のふくらみといい、腿のあたりのなまめいた曲線といい、
こぼれた緋縮緬、チラと見える肌の色・・・」
まるで生きているかのような押絵細工を
「のぞきからくり」のレンズの穴から覗いてみたら・・
押絵の立体感とあいあまって、3次元の別な世界が
広がっているように見えたことでしょう。
現代なら、バーチャルなゲームの世界の美女に一目惚れして、
自分もゲームの中に入り込んでしまう感じかしら?
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押絵の中の二人は・・
やがて何十年もの歳月が流れ、額や背景の紙はすすけ、
鮮やかな着物は色あせてしまっても、押絵細工の女性は
いつまでも若く初々しいままなのに・・・
もともと人間であった青年はやがて皺だらけの老人に
なってしまうのです。
人の手になる細工物が長い年月を経た時の、ある種の怖さ。
いつでもリセットできるデジタルの世界では
表現できない、残酷で幻想的な怪談物語です。
「押絵と旅する男」はこちらから読むことができます。
興味のある方はどうぞ。
今はインターネットで無料で小説が読めちゃうんですね。
デジタルな世の中はやっぱり便利です。
※写真はすべて「野村サークル50周年展」の作品です。