マリーのアトリエ

札幌時計台近くのハンドメイドショップ、マリヤ手芸店のスタッフブログです。

70年前のろうけつ染め

2009-01-10 11:04:52 | Legacy of Mariya

現在、マリヤ手芸店で開催中の「本間テイ」作品展、
今日は、ろうけつ染めの作品を紹介します。
本間テイさんは、刺しゅう用の糸やリボンも自分で染めていたくらいですから、
染色工芸に造詣の深かった方なのでしょう。
もともと日本画を勉強されていた方なので、ろうけつ染めも力作ばかりです。
この作品も360×180㎝という大作です

「白雲卿」(1938年作) 第13回(昭和13年)道展出品作品

当時の道展では、工芸作品の出品がまだ少なかったそうで、
絵画に負けない大きな作品を、ということで制作したそうです。
いったい、どれだけの「ろう」と染料を使ったのでしょう


 
70年経った今でも、赤やブルーがきれいに残っています
当時、ドイツで開発された最新の科学染料を使っています。
今は自然がいいということで、草木染がもてはやされていますが、
昔は、科学染料は大変貴重で高価なものだったそうですよ。
年月を経ても色が残るという点では、やはり科学染料はすばらしいものなんですね。
マリヤの社長も、ドイツの染料の会社の人に見せてあげたいくらいだ、と言っていました。
ちなみに現在のマリヤの社長は、本間テイさんから数えて3代目です。
創業80年以上になるマリヤ手芸店に残る、貴重な資料や作品を、
大切に受け継いで、保存しています


 
掛け軸風の、獅子を描いたろうけつ染め作品。
これも色のぼかし具合がきれいですね。




当時、脱ろう(ろうを洗い流す作業)の技術があまりなく、
蝋が残った為に、少しくすんでしまった作品もありますが、
それもまた、経年の風合いを出していい感じです
このような大きなろうけつ染めの作品は、なかなか見る機会がないと思います。
その他にも皮に染色した作品など、すばらしい作品が展示されています。
お近くにいらっしゃったら、ぜひお立ち寄りくださいね


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光線刺しゅう

2009-01-09 09:43:43 | Legacy of Mariya

「水辺」(1935年作)
今回も本間テイさんの作品展から。
昭和初期に、人造絹糸と呼ばれた糸(レーヨン)を使った刺しゅうです
光を反射して美しい光沢を見せる、この新素材の糸を使った刺しゅうを
マリヤでは「光線刺しゅう」と呼んでいました。
「光線刺しゅう」という言葉は、本間テイさんが独自に作ったものらしいのですが、
なんだかハイカラな響きで、おもしろいですね



リボン刺しゅう同様、この作品も糸を自分で染めて細かい色合いを出しています。
ミシン糸くらい細い糸でびっしり刺してあって、これはすごい力作です
たいへんな、手間と時間をかけて制作されたのでしょう



鳥の羽毛の感じが、良く出ていますね
きっと絵の上手な方だったのでしょう
土台の布も、絹地をぼかし染めして、池の水の濃淡を現しています。



「風景」(1935年作)
この作品も、絵画のような刺しゅう作品です
夕暮れの美しい空は、絹地を染めたもの。雲は筆で描いてあるのでしょうか。



この作品も、濃淡をつけてビッシリ刺しています
きっと、この光沢のある、新しい素材の糸の可能性をとことん
追求してみようと思ったのでしょう。
これらの作品は、本間テイさんが30代の頃に制作したものです。
きっと、熱心に創作に打ち込む毎日だったのだと思います。
70年以上前の、人造絹糸を使った刺しゅう作品はあまり例のない
貴重なものですし、見事な技術も一見の価値あがありますよ


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80年前のリボン刺しゅう

2009-01-08 08:39:34 | Legacy of Mariya
マリヤ手芸店の3階にはギャラリーがあって、
様々な手工芸作品の展示スペースとしてご利用頂いています
2009年の年明けは、1月4日から27日まで、
マリヤ手芸店の創設者、本間テイさんの作品を紹介する、
特別展を開催しています



本間テイさん(1898~1977)は日本画、刺しゅう、染織工芸などを学んで、
良家のお嬢さんなどに、その技法を教えていたのがマリヤ手芸店の始まりだったそうです。
当時は一般には入手困難だった、輸入物の刺しゅう材料や染料などを使っていて、
生徒さんにその材料をお分けいていたのが、だんだん本格的な手芸店となっていきました
マリヤは、現在でも普通の糸針ボタンなどの洋裁関係は扱っていない
不思議な手芸店なのですが、創業当時からマニアックだったんですね



本間テイさんが制作された、すばらしい手工芸作品をマリヤでは大切に保存して、
毎年、ギャラリーに展示して皆さまに見て頂く機会を設けています。
(虫干しも兼ねているそうです
今回は、リボン刺しゅうの力作をご紹介しますね
ミレーの「落穂拾」をすべてリボン刺しゅうで刺した作品です(1930年作)



細かい色の濃淡がきれいですね
輸入物の生成りのシルクのリボンを、すべて自分で染色したそうです。
科学染料が出たばかりの頃で、工場などでしか手に入らなかった
ドイツの化学染料を小分けしてもらったんですって
80年ほど経っていますが、今も美しい色合いがそのまま残っています



色だけでなく、落穂の枯れた感じやスカートのひだ、遠くの馬の描写など、
リボンの風合いをうまく使って表現しています。
今は、リボン刺しゅうっていうと、お花のモチーフをちょこっと刺す程度ですよね。
こんな風に、全面リボンで埋めつくした絵画のような作品は、
大変貴重なのではないでしょうか



薔薇」(1927年作)
こちらも自分でリボンを染色して刺した作品です
薔薇や葉の微妙な色合いが、美しいです
手工芸の歴史を垣間見ることができる、本間テイさんの力作ばかりですので
機会があったら、ぜひ見にいらしてくださいね


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