寝転がって気ままに想う事

 世の中ってこんなもんです・・
面白可笑しくお喋りをしましょうか ^^

祇園の恋人(六)

2010年05月05日 11時36分40秒 | 日記
京都の代表的な鴨川の東側に高瀬川があります。木屋町通り…そのあたり一帯を先斗町と呼ぶ花街があります。祇園に限らず花街は意外と早めに店仕舞いします。時刻は午前1時半この先斗町に小さなスナックがありました。木屋町通りから少し東側に入った小さな路地裏でした。
途中四条大橋のたもとに一人の女性が待ち人顔で佇んでいました。 誰だと思います?
そうです♪
菜水さんでした。 鴨川の河川敷にはあちらこちらに菜の花が真っ盛りです。五月とは言え深夜の風がまだ肌寒さを感じるこの季節。菜水さんは寒さを紛らすために菜の花を眺めていました、京都名物川床にはまだ少し早いその河岸にはボンヤリ明かりが点っていて今が盛りの菜の花を映し出していました…佐川本部長から連絡を貰いあわててきたものの時間が早すぎたのでした…しばらくは川面に映るネオンを眺めていよう…菜水さんは高鳴る胸を押さえそう思っていました。『佐川さん…』初めて出合ったお座敷で佐川本部長を見た瞬間体に背筋がビビッときたのを今も忘れられませんでした。何か話かけられても上の空で相槌をしたのでした。涼やかな瞳、無邪気な笑顔、とてもまともに顔を合わすことさえ出来ないくらいでした。『こんなことって…』私は色街の芸伎、相手は一流企業の本部長、所詮は叶わぬ夢と幾度も自分に言い聞かせてきました。それでもあの【都をどり】の明けで後ろ姿を見た一瞬私は芸伎を忘れていました。あとはどのようなことを喋ったか覚えていませんでした。初めて祇園の外で出会った佐川本部長は品の良い着こなしでさりげなく私をエスコートして下さ
いました。あれから二週間いえ十五日です。彼とは毎日毎日メールを交わしました。それが唯一の手段でしたから…
佐川本部長は両首脳を見送り急ぎ足で四条大橋までやってきました。菜水さんはすぐにわかりました。橋の欄干に佇む清楚な後ろ姿にむねが高鳴りました。しかし後ろから佐川本部長は菜水さんに声を掛けるのをためらいました。あまりにも清楚で可憐な後ろ姿を声を掛けることで崩れさることよりももう少しこのままで見取れていたい気持ちがあったからです。相思相愛…使い古された言葉では言い表せない程二人の気持ちは密でした。やがて二人は寄り添うように先斗町へと歩いて行きました…
コメント
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