寝転がって気ままに想う事

 世の中ってこんなもんです・・
面白可笑しくお喋りをしましょうか ^^

銀座の恋人(完)

2010年05月23日 10時34分46秒 | 日記
片山課長はビールを配りながら、ここだけの話しを始めました。 *何がここだけだよ、長原部長は思いました。片山のここだけ、はみんな知ってる話だよな(笑)
まっいいか!どうせ東京駅までの暇つぶしだしな…
『部長どうぞ!』 長原部長にビールを勧めながら片山課長もグビリと飲みました。
その仕草がまるで講談師が始めに喉を湿らす様に見えたので長原はクスリと笑ってしまいました。
片山課長は意に介せずピーナッツをパクリと囓るや、 『最近宮崎役員がまた女を替えたんですよ。』
と切り出した。
宮崎役員と言えば長原部長が所属している事業部のトップです。
ただし業界きっての遊び人ですから長原部長はそんなに驚きませんでした。
『…』まだ社内の状況に疎い江本だけはキョトンとしていました。
長原部長は『またか』なんて顔でしたが…(笑)
片山課長はそんな長原部長を無視して江本の方を向いて喋り始めました… 『銀座に京ってクラブがあるんだけど部長知ってますか?』
いきなり振られて長原部長はビールを吹きました。
京と言えば小雪の店の名前だからです。
『知らないなぁ~』悟られないようハンカチで顔を拭いながら長原部長は言いました。
…でしょうね♪そんな顔で片山課長は話を続けました。 『その京に確か小雪て名前の子がいてその子が役員にぞっこんなんですよ(笑)』
『……』
『役員も参っちゃって逃げていたんだけどいろいろプレゼント攻勢に会ってとうとう掴まったらしいよ(笑)』
『あ~役員みたいにモテたいねぇ~』片山課長は羨ましそうにそう言いました。
『小雪て幾つですか?』興味津津の江本が訊きました。『そうだなぁ見た感じ24、5かなあ』
『…』
『小雪が…』長原部長は知らなかったのでした。 銀座の京は宮崎役員の馴染みだったのでした。
そこの小雪と宮崎役員が同棲している、片山課長の話は続きます。
長原部長はただ呆然としているだけで小雪の顔や姿が頭の中をグルグル駆け回っていました。
『役員がプレゼントしたんですか』 江本はなんも知らないから無邪気に聞いて来ます。
『違うよ。女の子がプレゼントしたんだよ』
『それもさぁ。結構高価な物だよ』 『バックとかですか?』
『あぁバックもあったしライターもあったよ』
『片山課長は見たんですか』
『あぁ役員に見せてもらったよ』
『バックは今でも役員が使っているけどライターは誰かに上げちゃったらしいよ』
『へぇ~役員は気前がいいですね(笑)』
江本が感心しながらビールを飲みました。
『あっ!』長原部長は思わず叫びました。
『片山君、カルチェだろう!』
必死な顔に片山課長は引きましたね(笑)
そしてマジマジと長原部長の顔を眺めていると胸倉を掴まんばかりの勢いで、 『ゴールドのカルチェだろ!』と叩き込んで来ます(笑)
呆気にとられた片山課長は身を捩る様にしながら、、『ピンポーン♪』 とおどけケラケラと笑い出しました。
長原部長は身体中の力が抜け落ちてしまいました(笑) その様子を見ていた江本は何がなんだか分からないままにいましたが、 片山課長はピンときていました。
『このおっちゃん柄にもなく…』
抜け殻同然の長原部長を冷淡な目で眺めていました。その時アナウンスが新横浜を通過したことを告げました。車窓から見える空はどんより曇り空…窓ガラスに雨粒がぽつぽつしてきました。
『今夜の東京は雨だね』
片山課長は冷ややかに言いました。 座に重い空気が漂ってきました。
『でも明日は晴れでしたよ』
江本が明るく返すと、
長原部長は頷いて『泣いたカラスがもう笑った』そんな言葉があったなぁ…
窓に目を向けるとちょうど有楽町駅のネオンが鈍く光っていました。
『明日は晴か…』もう一度呟くと
三人は降りる支度を始めました。
コメント
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