すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【サッカー戦術論】広く攻め、狭く守るサッカーのキモはトランジションだ

2020-12-19 07:27:56 | サッカー戦術論
攻守に合わせて陣形は収縮する

 攻撃では「いかに広がるか?」だ。幅と深さを取り、チームは散開してゴールをめざす。

 一方、守備では「いかに縮むか?」。スペースを消し、チームは密度高く布陣し穴を作らない。

 とすれば問題は攻撃から守備、守備から攻撃に移るときのトランジション(切り替え)である。

素早く密度を高める守備

 例えば広がって攻めている状態からボールを失うと、カウンターを食らいやすい。そこでかのグアルディオラは偽SBを発明し、あらかじめ予防的カバーリングや予防的マーキングを行う。

 そしてボールを失えば素早いネガティブ・トランジション(攻→守の切り替え)から、リトリートせずその場でカウンタープレスをかける。

 あるいはそれがムリならミドルサードにリトリートし、スペースを消しブロックの密度を高めるポジショニングが行われる。

 とすれば敵は、相手が守備の態勢を崩しているうちに速く攻め切りたい。ゆえに素早いポジティブ・トランジション(守→攻の切り替え)から、敵の陣形の穴を突くカウンター攻撃をめざす。

速攻と遅攻の使い分けは?

 では逆に縮んで守っている状態からボールを奪えば? そのとき敵が守備のバランスを崩していればカウンター速攻を選択すべきだ。

 一方、敵の陣形が崩れておらずアンバランスでなければ、じっくりパスをつないで敵の陣形に穴を開ける遅攻を選択する。

 例えば選手が真ん中に集まって(オーバーロード)トライアングルやロンボ(ひし形)を作ってパスを回し、敵の守備者を中央へ引き寄せる。で、サイドにスペースを作ってそこを攻める。

 あるいは例えば右サイドでパスを回して敵の守備者を右サイドへおびき寄せ、一転、サイドチェンジを入れて逆サイドでの1対1に勝つことを狙う(アイソレーション)。

トランジションの速さがカギだ

 こうしてめまぐるしく攻守が変わる現代サッカーに「お休みの時間」はない。

 そこで有利を稼ぐためには、ネガティブ・トランジションとポジティブ・トランジションを速くすることだ。

 スピーディーに守備の態勢に入れば守りは固くなる。逆に素早く攻撃の態勢に入れば、敵の脆いゾーンを突きやすくなる。

 トランジションを操るチームこそが勝利に近づく。

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【サッカー戦術論】森保ジャパンはアドリブで演奏されるジャズか?

2020-12-19 07:27:56 | サッカー戦術論
個性重視といえば聞こえはいいが……

 選手の自主性を生かし、ピッチで化学反応を起こすーー。

 選手のその場のインスピレーションが尊重される森保ジャパンを見ていると、前にもちょっと書いたが「芸術とは何か?」について考えさせられる。

 いわば森保ジャパンは、音楽理論を知らずにアドリブでジャズを演奏しようとしているように思えるのだ。

ジャズはクラシックより優れた音楽か?

 例えば譜面を見ながら演奏するクラシック音楽は、あらかじめ譜面に書いてある通りに譜面をどこまで精緻に再現できるか? が求められる。

 一方、ジャズのライブでは奏者が譜面など見ずにその場のアドリブで演奏し、すばらしいフレーズを連発して「彼は天才だ」などと持て囃されたりする。

 ではあらかじめ決められたシナリオ(譜面)なしで演奏されるジャズは、奏者のインスピレーションが要求される時点でクラシックより優れた音楽なのだろうか?

 いや、クラシックにはクラシックのよさがあり、ジャズにはジャズのよさがあるのだ。

「アドリブ」と「無軌道」はちがう

 譜面なしのアドリブで選手がプレイする森保ジャパン。だが彼らは音楽でいえば監督の指示なしにインスピレーションで演奏しているというより、音楽理論を知らない状態で演奏しているに近い。

 クラシックの奏者がいくら譜面を見ながら譜面通りに演奏するといっても、もちろん彼らは音楽理論を踏まえた上で演奏しているからだ。

 一方の森保ジャパンはゲームモデルやプレー原則といった「音楽理論」に基づいてない。いわば行き当たりばったりでプレイしている。それは「華麗なアドリブ」とは程遠い。

譜面があっても芸術的にプレイできる

 クラシックの奏者は、譜面という「監督」が決めたゲームモデルやプレー原則の範囲で自分を個性的に表現している。

 そういう最低限の音楽理論(約束事)なしで選手が無軌道にプレイし、「選手の自主性を尊重している」と称する森保ジャパンとはちがう。

 ゲームモデルやプレー原則という「譜面」を踏まえた上でも、サッカーはいくらでも芸術的にプレイできる。これだけは確実である。

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