すちゃらかな日常 松岡美樹

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【CL 23/24 E組 第1節】奇跡のゴールで崖から落ちずにすんだ 〜ラツィオ 1-1 アトレチコ・マドリー

2023-09-20 09:25:14 | CL/EL/EURO(世界規模のサッカーリーグ)
後半アディショナルタイムの劇的な幕切れ

 欧州チャンピオンズリーグ2023/24が開幕し、9月19日(日本時間20日)にグループEの第1節が行われた。日本代表MF鎌田大地が所属するホームのラツィオ(イタリア)と、アトレティコ・マドリード(スペイン)が対戦した。

 アトレチコが前半29分に先制し、かたや、無得点のラツィオは崖に追い詰められていた後半アディショナルタイムだった。直前に行われた最後のコーナーキックに上がって参加していたラツィオのGKイバン・プロベデルが、なんとクロスに合わせた点取り屋さながらの豪快なヘッドを叩き込む。ラツィオは劇的な幕切れで引き分けに持ち込んだ。彼らは崖から飛び降りずにすんだ。

 グループEは彼らのほかにフェイエノールト、セルティックが同居する。ラツィオは第1節で負けず、勝ち点1を取れたのは限りなくデカい。なお彼らのポゼッション率は51%だった。

 スタメンは鎌田がいつもの右インサイドMFだ。ほかにマティアス・ベシーノがアンカー、10番のルイス・アルベルトが左インサイドMFを務める。

 3トップはフェリペ・アンデルソン、チーロ・インモービレ、マッティア・ザッカーニが先発。最終ラインは右からアダム・マルシッチ、パトリック・ガバロン、アレッシオ・ロマニョーリ、ルカ・ペレグリーニだ。

前半12分に鎌田が初シュートを放つ

 ゲームの立ち上がり。戦術家・サッリ監督が指揮を執るラツィオはうまくボールを運んでいるが、なかなか前線に槍の切っ先が入らない。彼らのフォーメーションは4-3-3。一方のアトレティコは5-3-2だが、彼らは3-1-4-2でビルドアップする。また2-3-4-1のような形からも組み上げる。

 まずラツィオが攻勢を強める。前半12分、ルイス・アルベルトからのダイアゴナルなパスを鎌田がフリックし、インモービレとのワンツーからミドルシュートを放つ。だがGKオブラクが止める。鎌田の初シュートだ。

 この流れで15分頃、いったんアトレチコは完全に自陣に引いた。28分にはラツィオのマルシッチからのアーリークロスに、ルイス・アルベルトがワンタッチで痛烈なシュートを打つ。これはゴール右に外れた。

 続く29分だった。スペインの軍団に思わぬ幸運が訪れる。アトレチコが敵ボックスの左外からボールを落とす。呼応したパブロ・バリオスが強烈なシュートを放つと、鎌田が出した足にボールが当たってゴールに入ってしまった。シメオネのチームが先陣を切って勝ち名乗りを上げた。

 しかしその後も相変わらずサッリの配下がボールを握り、39分頃にはアトレチコを押し込んだがゴールは取れず。パスミスが多くうまく行かない。かたやアトレチコは攻撃が終わるといったん帰陣し陣形を整える。こまめにその作業を繰り返す。かくて前半が終わった。ラツィオの前半のポゼッション率は60%だった。

サッリの辞書にはプレスがない?

 後半に入ってまず47分だ。ラツィオのボールになると、アトレチコはまた完全に自陣に引いた。そしてボールを奪うと遠路、攻め上がってくる。これはこの日のイタリアチーム対策なのか? それとも彼らのゲームモデルなのだろうか?

 ならばラツィオは逆に敵を引きつけている時の自陣でボールを奪い、すぐ速いカウンターをかけたい。なぜならこのとき敵陣はお留守だからだ。だが、なかなかうまく行かない。というよりおそらく彼らにはそういうカウンターのノウハウがないのだ。ああ、また敵に完全に引かれてしまった。

 サッリが考えるサッカーは基本的にはポゼッションスタイルだが、攻めが個人による単発でなかなか形にならない。連動した二の矢、三の矢のメカニズムがなく、チームがどうも機能してない。セリエAのときと同じだ。敵を崩す劇的で有効な動きがない。集団としての機能がまだ未完成なのだろう。

 52分、セットプレー崩れから、ボックス外で鎌田が左足からミドルシュートを放つが入らず。こぼれ球をボックス右のチーロ・インモービレが保持し、一連の流れでパトリシオ・ガバロンが右足を振った。だが右外側のサイドネットに当たって入らない。

 アトレチコ陣でラツィオの選手が複数人数でボールへプレスに行くと、ポーンと一発でサイドチェンジされた。彼らはプレッシングのいなし方に慣れているようだ。続く55分には敵GKのボールをアンデルソンがカットし、ボックス内からインモービレが至近距離でシュートするもGKにセーブされた。

 ラツィオの選手は、敵ボールホルダーの足元へもっとプレスに行けばいいのに行かない。なぜかプレスがゆるい。そして62分にサッリ監督は鎌田に代えて、同じポジションのマテオ・ゲンドゥージを投入した。

カウンターが身についてない遅攻のラツィオ

 66分には、アトレチコのセットプレーから得点機を作られる。グリーズマンが左足で浮き球のクロスを入れたが、ボールは跳ね返された。だがそのこぼれ球を回収したモラタが至近距離でシュートを放つ。しかしディフレクションしたボールはポストを叩いた。

 ラツィオが一度攻められてからのカウンターの場面だ。ボールを奪った。速く攻めたい。だが前にボールを出すところがあるのに出さない。なぜか敵がすっかり帰陣するのを待ってからパスを出している。これがサッリの教えなのだろうか? というよりその教えがまだ未消化で、迷いながらプレイしているのだろう。

 また彼らはアトレチコがディフェンディングサードに組んだ守備ブロックの外周を、「コ」の字型にボールを回している。いちばんダメな攻撃のパターンだ。攻めが停滞している証拠である。そもそもブロックを作られる前に攻めたいし、もっとゴールに向かってワンツーをかますなどして直線的に崩したいのだが…………。

 ラツィオは攻めが遅いので、常に引いた敵のブロックの外側から攻めることになる。もっと速い攻めが欲しい。前からプレスをかけるなど、工夫したい感じだ(それともサッリの辞書にはないのだろうか?)。

ポジティブトランジションが致命的に鈍い

 アトレチコは1-0で勝つつもりだから帰陣が速い。これに対しラツィオは遅攻オンリーなので、いつも敵が全員引いてから作ったブロックを相手にすることになる。これでは不利だ。ハマっている。

 また彼らは撤退守備しかしない。前から行かない。前からハメられる局面はたくさんあるのに、そのすべを知らないのだろうか。彼らは単純なブロック守備しかしない。

 そして84分頃からオープンな展開になり、ラツィオが攻めた。だが可能性のないボックス外からのシュートで終わった。

 彼らは負けているのだから、ボールを奪ったら爆発的なスプリントをして押し上げないとダメだ。ポジティブトランジションが鈍い。遅攻に偏っている。そのため敵ブロックの外周でボールを回すか、遠目から効力のないシュートを打つだけに終わっている。この点は改善しないとダメだ。

 かくて後半アディショナルタイムだ。ついにサッリのチームがゴールを攻略する。劇的な幕切れだった。最後のコーナーキックははじき返されたが、ルイス・アルベルトがゴール前にダイアゴナルなクロスを入れる。ラストプレイのコーナーキックのために上がっていたラツィオのGKイバン・プロベデルが、前に飛び込みヘッドで豪快にゴールへ突き刺した。

 まるで奇跡のような引き分けだった。おそらく鎌田は「持っている」のだろう。続く第2節は10月4日(日本時間5日)に行われ、ラツィオは古橋亨梧ら5人の日本人選手がいるセルティックと対戦する。

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