~ 珈琲の香り~

あなたの淹れた
珈琲の香りが懐かしく
何故か思い出さそうとしている
ブラックで苦味が好きな私と
ミルクも砂糖もたっぷり
あなたとのティタイム
お気に入りの珈琲カップは
趣味の陶芸で私が焼いたもの
赤茶でまだら模様に
わざと歪めた飲み口は
風合いが面白いと笑っていた
いつからか二人の会話がかみ合わず
バラバラに離れた気持ちを紡げず
ひとりで珈琲を楽しんでいる
窓から眺める空は どこまでも蒼く
ひらひらと落ちてく舞葉は色づいて
薄紅い山茶花が誇らしく咲いている
旅の雑誌はいつもの場所で
何も変わってはいない
いつか
まるで何事もなかったように
同じ景色を見ることが出来るのか
珈琲の香りにそっと聴いてみたい
(この詩は某新聞に投稿し、掲載されました)