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ヘフリガーの訃報

2007年03月20日 00時57分42秒 | バッハ
最近、どうも往年の名歌手の逝去をよく聞きます。19日の夕刊でエルンスト・ヘフリガーの訃報に接しました。1919年のお生まれということで、享年87才ということでした。
さて、ヘフリガーと言えば、私は二つの演奏を思い浮かべます。第一にマーラーの大地の歌。ワルター盤です。今一つは、言わずと知れたバッハの『マタイ受難曲』。1958年のカール・リヒターの不滅の名盤と言われるものです。今回は、後者について述べてみたいと思います。リヒターの1958年のマタイは多くの人が絶賛し、人類の至宝とまで言われているようですが、私も同感です。私はこの演奏では、①リヒターの尋常ではない緊張感あふれる指揮。②リヒターのつぼを心得た聴かせる指揮。③ヘフリガー、キート・エンゲン、フィッシャー=ディースカウ、ヘルタ・テッパーなどに代表される独唱者の充実振り。以上の3点をいつも感じます。①は全編を貫いていますが、とく終わりに近くなっての「げにこの人は神の子なりき」と歌う合唱に至るまでの道筋は他の演奏に比類なきものになっています。②はリヒターは歌唱もうまく歌わせています。アルトの「わが頬の涙」は以前にも述べた私の好きなアリアですが、この歌わせ方は、リヒターは素晴らしく、他の演奏を聴くとどれも、気持ちが見えないとか、愚鈍な演奏とかとどうしても思ってしまうのですね。以上の二つのリヒターの演奏を支えているのは、この独唱陣です。フィッシャー=ディースカウも切れ味抜群。エンゲンの暖かみもあるイエスもいいです。テッパーも真摯な歌唱は耳を引きます。しかし、やはりヘフリガーのエヴァンゲリストの存在が全体を締めていますよね。言い尽くされてはいますが、なんと言ってもイエスが捕縛されたあと、例の雄鳥が三度鳴くときにイエスを比定するくだりの歌唱は、涙を絞り出すような類い希な心を打つものになってます。また、最後の方のイエスが「エリ、エリ、ラマ、アサブダニ」「わが神、なんぞわれを捨てたまいし」のイエスが人間とも思えるような悲痛な叫び。この二つの歌唱が忘れられないものになってます。しかし、全編を通して、ヘフリガーの名唱があるからこそのリヒターの名演となったことは紛れもない事実であります。
そんなわけで、今夜はリヒターのこのマタイを聴き、改めてヘフリガーの歌唱に敬意を表した次第です。もうひとつあげた大地の歌ですが、まったく性格の違う二つの曲ですが、ここにおいて、ヘフリガーはまるでエヴァンゲリストのような大地の歌を歌っているように聞こえるのですね。ヘフリガーは何を歌ってもエヴァンゲリストを思い出してしまう、決して何を歌っても同じという意味ではなく、それほど彼のエヴァンゲリストは素晴らしいものだったのですね。
冥福をお祈りいたします。

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2 コメント

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ヘフリガーは素晴らしかったですね (mozart1889)
2008-08-21 14:24:04
こんにちは。
ヘフリガーの絶唱、ホンマに素晴らしいと思います。魂のエヴァンゲリストですね。いつ聴いても感動的、引きこまれます。
ヘフリガーの歌唱は他にはシューベルトの歌曲集くらいしか知らないんですが、清潔感漂う、誠実な歌だったと思います。エエ歌手でしたね。
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どうもです。 (mikotomochi58)
2008-08-21 16:23:08
mozart1889 様
コメント・TBありがとうございます。
実は、このCD、かなり長いこと聴いていません。やはり、身構えるところがあるんでしょうかね。いくら南無大師遍照金剛でもね(笑)。エヴァンゲリストは、へフリガーがベストでしょうね。味わい深く、立派で、崇高ささえ感じます。オペラでもそうなんですが、長い曲となれば、近頃は聞き通すことがなかなかできなくてつらいところです。
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