『チョコだるま』
真珠まりこ著、ほるぷ出版(ほるぷ創作絵本)、2008年
もうすでに1ヶ月近く前の話になってしまっているのですが・・・。
先月(11月)の28日のこと。宮崎県南部に位置する日南市南郷で、『もったいないばあさん』シリーズ(講談社)などで知られる絵本作家、真珠まりこさんの読み聞かせ講演会が開催されました。地元の日南市立図書館による「図書館まつり」というイベントの一環として企画、開催されたものでした。
その講演会会場での絵本の販売を、勤務先である書店でやってもらえないだろうか、というご依頼を、Facebookを通じて真珠さんからじきじきにお受けいたしました。勤務先のある宮崎市からはちょっと距離はあったものの、これはいい機会なのでぜひお引き受けしたい、ということで、勤務先の常務とともに販売に出向きました。
会場である「南郷ハートフルセンター」は、街の中心部からは幾分離れたところに位置していて、周辺に立つ人家も少なめに見えました。果たしてどれくらいの方が集まるのだろうか・・・と正直心配だったり(地元の皆さま、ごめんなさい)いたしましたが、開演時間が近づくにつれて親子連れなどが次々に来場し、気がつけばキャパ300人の会場はほぼ満席という状態に。
代表作『もったいないばあさん』シリーズをはじめとする主要な絵本の読み聞かせや執筆にまつわるエピソードが語られたり、もったいないばあさんの絵描き歌や「もったいないばあさん音頭」を皆で歌ったり・・・と、講演会は大盛況のうちに終わったのでした。
終了後には真珠さんのサイン会が行われたこともあり、絵本の販売のほうもありがたいことに大盛況。中には売り切れてしまう書目が出るという事態も起こりました(まことに申し訳ないことでした・・・)。真珠さんは来場者一人一人に気さくにお声がけをしつつ、それはもうたくさんのサインをこなしておられました。
会場に隣接する南郷図書館の司書さんや職員さんたちも列の後ろに並んでは、嬉しそうに絵本にサインしてもらっていたのも微笑ましかったり。常務とわたくしも、しっかりそれぞれ購入する絵本を選んでサインしていただいたのでした。
すべてが終わったあと、常務とわたくしは真珠さんとしばし歓談。帰りには嬉しいお土産まで頂戴し、まことに思い出に残る一日となりました。真珠さんにはひたすら、感謝申し上げる次第であります。
そのとき、わたくしが選んでサインしていただいたのが、今回取り上げる『チョコだるま』でした。まだ未読だった上、これからの季節にぴったりという感じがいたしましたので・・・。
特製のホットチョコレートが飲めることで町の人びとに人気の「マルタさん」の菓子店。その店内に立つのが、チョコで作られた雪だるま「チョコだるま」。ホワイトチョコの体に、ブラックチョコの顔と手、マーブルチョコのボタンが付いた「チョコだるま」は、お店にやってくるさまざまなお客さんのいとなみを見ることを楽しみにしていた。そんなある日、町のお金持ちが、子どもの誕生日プレゼントにするので、と「チョコだるま」をたくさんのお金を出して買い、持ち帰っていったのだった・・・。
「チョコだるま」のモノローグという形で進んでいく本作。その前半は、「マルタさん」のお店にやってくるお客さんたちのいとなみが丁寧に綴られます。
幸せそうな恋人たち。些細なきっかけでけんかしてしまった母子。いつも一人でやってきては「うちのばあさん」の思い出を語るおじいさん。「チョコだるま」の姿を見て喜ぶ子どもたち・・・。
それぞれの人たちの、ささやかだけれども大切な人生のひとコマ。それを、「マルタさん」のお店と「チョコだるま」がしっかりと彩り、幸せなものにしていることが伝わってきて、暖かな気持ちになりました(とりわけ、けんかしてしまった母子のエピソードはホロリとしたなあ)。そのことが、後半の展開を一層、嬉しいものにさせていました。そして、柔らかな線と色彩で描かれた絵も、作品の持つ暖かみを引き立てておりました。
まさに、いまの時期にうってつけといっていい素敵な絵本です。読んだら間違いなく、甘くて美味しいチョコレートが味わいたくなることでしょう。特にホットチョコレートを。
ちなみに。真珠さんが『チョコだるま』に書いてくださったサインは、こんな感じでした。
可愛らしいチョコだるまが描かれたサイン入りの絵本。これはもう、家宝として大切にさせていただきます!
もひとつちなみに。真珠さんから頂戴したお土産の中に、『おはなしチャイルド』2015年9月号に収録の『おたからパン』がありました。次回出す予定の絵本は、この作品だと伺いました。
こちらも読後、無性に焼きたてのパンが食べたくなること間違いなしの楽しい作品でありました。絵本としての刊行が楽しみです。