別府での初日夕方。別府駅前とは目と鼻の先にあるビジネスホテル「別府ステーションホテル」にチェックインいたしました。
わたしの旅では、飲み食いはあくまでも外でやりますので、宿泊先は眠ることさえちゃんとできればそれで十分。食べきれないほど豪勢な夕食はなくとも、お手頃価格で泊まることができる駅チカのビジネス系ホテルは、実にありがたい存在なのであります。
とはいえそこは、泉都別府のビジネスホテル。ちゃんと天然温泉の大浴場がございますし、ホテルの入り口にもしっかりと “手湯” があったりいたします。
チェックインしてしばし休憩したあとはいよいよ、お楽しみの呑み歩きに出陣であります。わたしはホテルを出ると、まずはアーケード街にある薬屋さんに立ち寄って「液キャベ」を一本買いました。呑んだあと、寝る前にコレを服用して寝れば、二日酔い防止になるというわけであります。買った「液キャベ」に、薬屋さんはビタミン錠を数個つけて渡してくださいました。ありがとうございます。
呑み歩きの前にまたひとっ風呂浴びようということで、別府を代表する歴史ある共同浴場にして、呑み屋街のそばに位置している「竹瓦温泉」に立ち寄ることにいたしました。とはいえ、このあたりも周囲に風俗店が集中しているエリア。オトコ1人であるわたしを狙いすまして声をかけてくる呼び込みのオニイサンたちを巧みに(笑)かわしつつ、竹瓦温泉にやってまいりました。
明治時代に開業し、昭和13年に建てられた堂々たる建物で観光名所にもなっているこちらもまた、ありがたいことにわずか100円で入浴できます。
脱衣場のすぐ下、やはり別府に多い半地下式の浴場に階段を降りて入っていきますと、浴槽にはすでに多くの入浴客がお湯に浸かっていて、憩いのひとときを過ごしておられました。わたしもその中に加わってお湯に浸かります。ここのお湯もけっこう熱めではあるのですが、この日はすでに3ヶ所で、熱々のお湯に浸かってまいりましたので、もうだいぶ慣れたのかゆっくり浸かることができました。いやあ、実に気分がいいですなあ。
そんな浴槽の脇で、入浴している方々へさかんに声をかけておられるおじさんがいました。県外から来た人と見るや「どっから来たの?」と声をかけたり、ちょっとでっぷりした体格のお兄さんを見受けるや、その肩をポンポンと叩きながら「お!三保ヶ関部屋?」などと言ったりしていて、まことに陽気で屈託がありません。
そのお顔といい声のかけ方といい、なんだか見覚え聞き覚えがございました。これはもしかしたら・・・ああ!このおじさん、もしかしたらあのお方じゃないのか?
脳裏にひらめいたのは、ちょうど1年前の昨年(2017年)2月に放送されたNHKのドキュメンタリー番組『ドキュメント72時間』で、竹瓦温泉を取り上げた回でありました(2017年2月10日放送の「別府 百年の温泉で」。番組サイト「2017年バックナンバー」を参照)。番組の撮影が始まったのは放送1ヶ月前の昨年1月9日。その前日にはわたしも竹瓦温泉に入っていて、番組の撮影が入ることが貼り紙で告知されておりました(下の写真)。好きなドキュメンタリー番組ということもあり俄然興味は湧いたものの、さすがに入浴姿を映されて全国放送されるのもこっぱずかしいので、その日に入ることは避けたのでありましたが・・・。
・・・で。この回に、入浴客をつかまえてはまことに気さくに、かつ陽気に話しかけていたおじさんが登場していたのですが、いま目の前におられるおじさんこそ、まさしくその『72時間』に登場していたおじさんに違いありません。番組を観ながら、「ああ面白いなあ、このおじさん。今度別府に出かけるときにでも見かけるといいなあ」などと思ったりしていたのですが、まさかこうも簡単に巡り会えるとは!
わたしの中ではすでに、一種の “伝説” となっていた方を目の前にしてにわかに胸は高鳴り「あのー、もしかしてNHKの番組に出ておられた方ですか?」などとお声がけしたい気持ちが湧き上がってはきたのですが、生来の引っ込み思案で小心者なわたしはなかなか、話しかけることができずにおりました。それに、もしこれが人違いだったりしたらまことに失礼ではありますし。・・・いや、もう99.9パーセント間違いないとは思いましたが・・・。
すると、件のおじさんがこうおっしゃいました。
「去年NHKを観てた人は、オレが誰なのか一発でわかる」
おお!やっぱりそうだったか!!そうとわかれば、もうためらうことはございません。「やっぱりそうでしたか!わたしも観てましたよ、あの番組!」と話しかけたのをキッカケに、そのおじさんとしばし、お話しすることができました。
「アレが放送されてから、北海道から来た人にも声かけられた。これはサスガ、全国放送じゃなあ、と。ローカル放送じゃこうはいかんわ」
おじさんがそうおっしゃいました。わたしの周りでも観ているという人が多い、けっこう人気のある番組だけに、やはり影響力は大きかったようですね。
よくここを利用されてるんですか?とお訊きすると、
「そう!きょうも朝、昼に入って、これで3回目」
とおっしゃいます。おお、やはり竹瓦温泉の超常連さんでおられるんですねえ。竹瓦温泉のほかにもあちこちの共同浴場を利用なさっておられるようで、午前中に入った不老泉も行きつけなのだとか。
ここは駅から近いとこにいい温泉がいっぱいあるのがいいですねえ、とわたしが言うと、おじさんは、
「田の湯温泉には入ってみた?」
と訊いてこられました。「田の湯温泉」もやはり、別府駅から歩ける場所にある共同浴場なのですが、わたしはまだ入ったことがございませんでした。「一度入ってみてごらん。ここと同じように浴槽が1つあってな」と、おじさんは教えてくださいました。
「そこの窓は閉めちゃダメ!湯気でみんなの服が濡れちゃうから!」
開け放たれていた脱衣場の窓を閉めようとした入浴客を、おじさんはそう言ってたしなめました。浴場と脱衣場は区切りがなく一体となっているので、窓を開けていないと湯気がこもり、脱衣場にある服が濡れてしまうというのが、その理由でありました。この時期は脱衣場の窓を開けっ放しにしてると冷えるんじゃないかなあ・・・などと思っていたのですが、なるほど、ちゃんと意味があるんだなあ。おじさんはこうやって、入浴についてのマナーを教える役目も、積極的になさっておられるようなのであります。
「70になると “高齢者優待入浴券” っつうのが貰えるようになる。いま68だから、あと2年じゃ」
とおじさんがおっしゃいました。別府市では70歳以上の方々に、竹瓦温泉をはじめとする市内10ヶ所の市営温泉を180回利用できるという「高齢者優待入浴券」が交付されるのだとか(別府市のホームページを参照)。それはますます、おじさんの温泉通いに拍車がかかることでありましょう。いいなあ。オレも歳とったら、別府に移住しようかなあ・・・。
おじさんとの会話をキッカケにして、やはりお湯に浸かっておられた県外からの入浴客の方とも、会話をすることができました。見知らぬ方との、お湯を介しての一期一会の出会いが味わえるというのも、こういう古くから続く共同浴場の楽しさだと、つくづく思います。
湯から上がり、着衣を身につけていると、やはりお湯から上がったばかりの件のおじさんが、開け放たれた脱衣場の窓からパンツ一丁のままで、外にいる子どもさんに「何年生?」などと、あくまでも屈託なく声をかけておられました。もうこのあたりで知らない人はいないんじゃないですか?というわたしの問いに、小さく頷かれたおじさんでありました。
『72時間』で、もとは福岡の人ながら仕事で体をこわし、湯治のため別府へ移住した、と紹介されていたおじさんでしたが、いまやすっかり別府人としてお元気に暮らしておられるんだなあ、ということが伝わってきて、なんだかしみじみ嬉しい気持ちになりましたねえ。
じゃあお先に失礼いたします、ありがとうございました・・・とアタマを下げたわたしに、おじさんは、
「ウン、ぜひまた来なさい」
と穏やかにおっしゃってくださいました。ええ、ぜひまたここに参上して、おじさんともっと言葉を交わさなきゃな・・・と強く思ったのでありました。
“伝説” となっていたお方との巡り会いを果たすことができ、ウキウキ気分で竹瓦温泉を出たわたし。さあ、この調子で酒場でも、嬉しいひとときを過ごしたいものであります。ホテルを出て空を見ると、ありがたいことに雲の切れ間からは青空が覗いておりました。いいぞいいぞ。
わたしは、今回別府に来たらまず入らなきゃ、と目星をつけていた居酒屋「美乃里」(みのり)を探しあて、入ってみました。
わたしがこのお店のことを知ったのは、これもちょうど1年前のことでした。昨年の別府行きのあと、宮崎市内にある行きつけのバーに、別府にある立命館アジア太平洋大学(APU)に通っているという女子学生さんが、お友だちとともに立ち寄ってこられました。1人で呑むのがけっこう好きだという、なかなか美形のお嬢さん。そんな彼女と別府ネタを語りつつ呑むことができて、すごく嬉しかったのでありましたが・・・。で、その女子学生さんから「ここがオススメですよ」と教えていただいたお店(全部で3軒ございました)の中で、一番立ち寄ってみたいと思っていたのが、この「美乃里」さんだったというわけなのであります。
中に入ると、8人がけのカウンターに、テーブル2つが並んだ小上がりという、思いのほかこじんまりとした店内。まだ開店まもない時間帯で、わたしがこの日最初の客のようでした。メニューを見ると、奇をてらわない親しみやすく家庭的な献立が並んでいて、お酒のアテに良さげな一品から麺類、ご飯ものまで品数も豊富。そしてカウンターの上には、美味そうな料理がてんこ盛りになった大皿が。わたしはその大皿の中で真っ先に目についたポテトサラダを、生ビールとともに注文いたしました。
「お客さん、宮崎からですか?」と、カウンターの中におられたお店のお姉さんがわたしに訊いてこられました。話すときのアクセントで、宮崎のヒトではないかと気づいたといいます。ああ、自分では意識しないけど、やはり生まれ育ちはコトバに出るもんなんだなあ。ともあれ、初めて入るお店にいささか緊張気味だったわたし、これでだいぶ和みました。お店はいつからやってらっしゃるんですか?と訊ねると「4年くらい前からです」とのこと。けっこう新興のお店であります。
そして、生ビールとともに出てきたポテトサラダをさっそくパクリ。
具材はシンプルながらしっかりとした味わいで、しっかりお酒のアテになるような美味しさです。ポテサラが美味いお店は、ほかのメニューもまず間違いなく美味しいはず。期待に胸躍らせつつ、カウンター奥のホワイトボードにある「本日のおすすめ」から〆さばを注文いたしました。肉厚の身には脂もしっかり乗っていて、噛み締めると口の中に旨味がいっぱいに広がり、さば好きには嬉しい限りであります。こちらは、大分の麦焼酎によく合いました。
〆さばを突っついていると、カウンターの中にもう1人、中年の男性が入って来られました。どうやらこの方がご主人のようです。ご主人もまた、他所から初めてやってきた一人呑みのわたしに、気さくな感じで話しかけてこられました。このお店はいい、というおススメをもらって来てみました、とわたしが言うと、ご主人は、
「ほんと、ありがたいことですわ」
と、少しばかり照れるようにおっしゃいました。
カウンターの上に乗っかっていた大皿の料理でもう一つ気になっていたのが、ハンバーグ。お次にそれを注文して食しました。こちらは画像を撮り忘れたのが残念なのですが・・・じゃがいもと人参を添えて出てきた煮込みハンバーグもまた美味しく、食べごたえもたっぷりでした。
しばらくの間、カウンターにわたし一人しかいなかった店内でしたが、その後次から次へとお客さんが入ってきて、いつしかもう満席状態。そのほとんどが、どうやら地元の常連さんたちのようでした。そのためでしょうか、店内は大いに賑わいながらも、なんだか和やかな空気が流れているように思われました。
このままずっと座っていたい気にもなりましたが、そうもいきません。わたしは最後にだし巻き玉子をいただきました。ふんわりとした優しい口当たりと味わいで、気分を和ませてくれました。
この、賑やかながらも和やかなお店の雰囲気、そしてお料理の見た目や味わいに、あるお店のことを思い浮かべておりました。別府で50年以上にわたり、観光客、そして地元の皆さんに親しまれながらも、2014年に惜しまれつつ閉店した大衆食堂にして大衆酒場「うれしや」です。わたしも一度だけですがこの「うれしや」を訪れ、その味と雰囲気に惚れ込んでおりました(そのときのことは「別府・オトナの遠足2014(第1回)老舗大衆酒場で惚れ酔い気分」に書きました)。それだけに、閉店したことを知ったときには実に寂しい思いがしたものでした(閉店についてはやはり拙ブログの記事「別府の名大衆食堂にして名酒場だった『うれしや』の閉店を惜しむ」を)。
実は、今回「美乃里」さんに入ろうと思ったのは、先にこのお店を教えてくださったAPUの女子学生さんから「このお店は前に『うれしや』で働いていた人がやってるんです」というお話を聞いたからでした。実際入ってみれば、活気がありながらも和やかな雰囲気といい、お料理の味わいや見た目といい、確かにどことなく「うれしや」を彷彿とさせるものがありました。お店が開業した時期も4年前といいますから、これも「うれしや」が閉店した時期と重なります。
以前「うれしや」におられたんですか?そうお訊きしようとも思ったのですが、ご主人もお姉さん2人も、お店いっぱいのお客さんへの対応に忙しくなっていたので、ここは遠慮することにいたしました。まあ、それは次の機会に、ということにいたしましょう。
そうこうしていると、さらに2人連れのお客さんが。とはいえ、満席状態の店内には2人分の席は空いていませんでした。少し前にわたしの隣にいた男性がお帰りになって1人分は空いていたので、ここでわたしが引き揚げれば2人分は空きます。あ、ならわたしはこのあたりで失礼しますのでお勘定を・・・とわたしが慌てて席を立とうとすると、ご主人は、
「あ、まだ焼酎残ってますよ」
と、カウンターの上にあったコップを指しました。そこにはまだ、呑んでいなかった麦焼酎が半分くらい残っておりました。わたしは椅子に座りなおして残りの焼酎をしっかりと頂きました。もしかしたら、「そんなに慌てて帰らなくてもいいよ」というお心遣い、だったのでありましょうか。
あらためて席を立ち、お勘定を済ませてお店を出る時、ご主人は、
「ぜひまた来てください」
とおっしゃってくださいました。ええ、ぜひまたお邪魔するつもりであります。
別府に来たら必ず立ち寄りたい、と思えるお店を再び見いだすことができたヨロコビをしみじみ噛みしめつつ、「美乃里」をあとにしたわたしでありました。・・・このお店をわたしに教えてくれた、美形の女子学生さんと再会できなかったのは、ちとザンネンではございましたが(笑)。
昔ながらの細い路地が入り組んでいる風情を味わいつつ、別府の呑み屋街をしばし散策したわたしは、2軒目となるバー「オードビー」に入りました。マスター氏とその娘さんの2人で営む、開業から30年以上になるゆったりした雰囲気のバー。わたしも2年前に初めて訪れ、たちまちお気に入りとなりました。昨年別府に来た時には、2晩続けてお邪魔したくらいであります。
カウンターに腰を下ろすなり、娘さんは「どうもお久しぶりです」と声をかけてくださいました。年に1回しか来ないヨソ者のわたしを、しっかりと覚えてくださっておりました。
ここに来ると飲みたくなるのが、マスター氏が考案された別府八湯(浜脇・別府・鉄輪・堀田・観海寺・柴石・明礬・亀川)をイメージしたオリジナルのカクテルです。別府オリジナルの麦焼酎をベースにした8品のカクテルは、それぞれの温泉エリアの個性をイメージした色合いと美味しさで、別府の温泉情緒を盛り上げてくれます。
この日は浜脇温泉を訪れたので、まず最初の一杯は「Hamawaki」を。アンズの種を原料にしたリキュール、アマレットを麦焼酎と合わせたもの。ちょっとまったりとした味わいが、かつて遊廓もあったという浜脇温泉の雰囲気を思い起こさせてくれます。
次に頂いたのが、この日メインで歩き回った別府温泉をイメージした「Beppu」。大分特産のカボス果汁や抹茶リキュールを合わせた和テイストのカクテルで、こちらもレトロ感あふれる別府の街の雰囲気に合っています。
カクテルを楽しんだあとは、おまかせでお選び頂いたウイスキーの水割りを口にしつつ、ゆっくりと憩いました。
今回は別府に1泊したら、明日には豪雨被害のお見舞いも兼ねて日田に向かうことを話すと、娘さんは、
「それが一番嬉しいことだと思いますよ。2年前の地震のあと、同じように別府に来てくださる人たちがいてくれたことはすごく嬉しく思いましたから」
とおっしゃいました。そう、別府も2年前の熊本地震では大きな揺れに見舞われた上、その後しばらくの間は観光客の減少に苦しみました。それを乗り越え、別府は再び全国屈指の温泉郷として復活したのです。かつて天領だった日田も、きっと豪雨災害から立ち上がることができるに違いありません。
「オードビー」もいつしか、カウンターがお客さんで埋まり賑わいをみせておりました。こちらもどうやら、その多くは地元の常連さんのようでした。その中の中年男女グループから、大きなフラワーバスケットがマスター氏に贈られました。なんとマスター氏、翌日の11日が78歳のお誕生日なのだとか。これは実に、嬉しいタイミングで来ることができました。
みんなでお花を囲んで記念撮影しよう!ということになり、グループの1人である女性の方が、
「宮崎のお兄さんも一緒にどうぞ!」
と声をかけてくださいました。かくて、そのときお店にいた皆さんに混ぜていただいて記念撮影をしたのですが、撮った写真を見ると、なんとわたしが真ん中近くに写っているというありさま。ううむ、これはなんだか申し訳ないですねえ・・・とわたしが言うと、グループの皆さんは「まあ、コレはコレでいいんじゃないですか(笑)」とおっしゃってくださいました。何はともあれ、こうやって居合わせた見知らぬ方々との楽しい交流ができるのも「オードビー」での楽しみです。
こうして「オードビー」でもまた、楽しい時間を過ごすことができました。
わたしが勝手に「心の師」と仰いでいる酒場詩人・吉田類さんがよくお使いになる言葉に「酒縁」というのがあります。文字通り、お酒がとり持つ人と人との縁(えにし)が「酒縁」。わたしも大好きな言葉であります。
この夜の「美乃里」でも「オードビー」でも、わたしはとても素敵な「酒縁」を結ぶことができました。また次回もこの2軒に足を運んで、素敵な「酒縁」との巡り合わせを楽しみにしたいと思っております。
最近は呑んだあとのシメを食べなくなってきたわたしでありますが、旅先では別。「オードビー」を出たあと、アーケード街にあるラーメン店「やなぎ家」さんでラーメンをいただきました。一見こってりしているようで、その実あっさりした旨味のラーメンは、呑んだあとにもうってつけでありました。
楽しく嬉しい夜を満喫し、ホテルに戻って床についたわたしでありましたが・・・未明に猛烈なムカつきで目を覚ましました。そう、二日酔いであります。なんたることか、せっかく「液キャベ」を買っておきながら、それを寝る前に飲んでおくのを忘れていたのであります。でも、自分ではけっして飲み過ぎてはいないつもりだったのですが・・・。楽しい時間を過ごすうち、ついつい杯を重ねていたのでありましょうか。
慌てて「液キャベ」を飲んだものの時すでに遅し。その後は喉から胃腸に至る猛烈なムカつきに七転八倒しつつ、朝を迎えることになってしまったのでありました。おかげで思いっきり寝不足のまま。ううう。
それでもなんとかムカつきも治まり、ホテルをチェックアウトしたわたしは、さっそく日田に向かうべく別府を離れることにいたしました。
今回は短い滞在時間、それも最後にはちょいとしくじりはいたしましたが、それでも別府はまた楽しい思い出を、わたしの中に残してくれました。
ありがとう別府!そして、また来年!
ということで、次回からは日田篇であります。およそ20年ぶりとなる日田の訪問もまた、楽しい思い出を作ることができました。
「別府ステーションホテル」ホームページ→ http://www.station-hotels.com/
「竹瓦温泉」温泉データ→ 別府市ホームページ「竹瓦温泉」https://www.city.beppu.oita.jp/sisetu/shieionsen/detail4.html
バー「オードビー」の紹介記事→ 別府市観光情報サイト 温泉ハイスタンダード!地獄極楽別府「Eau de vie (オードビー)」http://www.gokuraku-jigoku-beppu.com/entries/eau-de-vie
(次回につづく)
わたしの旅では、飲み食いはあくまでも外でやりますので、宿泊先は眠ることさえちゃんとできればそれで十分。食べきれないほど豪勢な夕食はなくとも、お手頃価格で泊まることができる駅チカのビジネス系ホテルは、実にありがたい存在なのであります。
とはいえそこは、泉都別府のビジネスホテル。ちゃんと天然温泉の大浴場がございますし、ホテルの入り口にもしっかりと “手湯” があったりいたします。
チェックインしてしばし休憩したあとはいよいよ、お楽しみの呑み歩きに出陣であります。わたしはホテルを出ると、まずはアーケード街にある薬屋さんに立ち寄って「液キャベ」を一本買いました。呑んだあと、寝る前にコレを服用して寝れば、二日酔い防止になるというわけであります。買った「液キャベ」に、薬屋さんはビタミン錠を数個つけて渡してくださいました。ありがとうございます。
呑み歩きの前にまたひとっ風呂浴びようということで、別府を代表する歴史ある共同浴場にして、呑み屋街のそばに位置している「竹瓦温泉」に立ち寄ることにいたしました。とはいえ、このあたりも周囲に風俗店が集中しているエリア。オトコ1人であるわたしを狙いすまして声をかけてくる呼び込みのオニイサンたちを巧みに(笑)かわしつつ、竹瓦温泉にやってまいりました。
明治時代に開業し、昭和13年に建てられた堂々たる建物で観光名所にもなっているこちらもまた、ありがたいことにわずか100円で入浴できます。
脱衣場のすぐ下、やはり別府に多い半地下式の浴場に階段を降りて入っていきますと、浴槽にはすでに多くの入浴客がお湯に浸かっていて、憩いのひとときを過ごしておられました。わたしもその中に加わってお湯に浸かります。ここのお湯もけっこう熱めではあるのですが、この日はすでに3ヶ所で、熱々のお湯に浸かってまいりましたので、もうだいぶ慣れたのかゆっくり浸かることができました。いやあ、実に気分がいいですなあ。
そんな浴槽の脇で、入浴している方々へさかんに声をかけておられるおじさんがいました。県外から来た人と見るや「どっから来たの?」と声をかけたり、ちょっとでっぷりした体格のお兄さんを見受けるや、その肩をポンポンと叩きながら「お!三保ヶ関部屋?」などと言ったりしていて、まことに陽気で屈託がありません。
そのお顔といい声のかけ方といい、なんだか見覚え聞き覚えがございました。これはもしかしたら・・・ああ!このおじさん、もしかしたらあのお方じゃないのか?
脳裏にひらめいたのは、ちょうど1年前の昨年(2017年)2月に放送されたNHKのドキュメンタリー番組『ドキュメント72時間』で、竹瓦温泉を取り上げた回でありました(2017年2月10日放送の「別府 百年の温泉で」。番組サイト「2017年バックナンバー」を参照)。番組の撮影が始まったのは放送1ヶ月前の昨年1月9日。その前日にはわたしも竹瓦温泉に入っていて、番組の撮影が入ることが貼り紙で告知されておりました(下の写真)。好きなドキュメンタリー番組ということもあり俄然興味は湧いたものの、さすがに入浴姿を映されて全国放送されるのもこっぱずかしいので、その日に入ることは避けたのでありましたが・・・。
・・・で。この回に、入浴客をつかまえてはまことに気さくに、かつ陽気に話しかけていたおじさんが登場していたのですが、いま目の前におられるおじさんこそ、まさしくその『72時間』に登場していたおじさんに違いありません。番組を観ながら、「ああ面白いなあ、このおじさん。今度別府に出かけるときにでも見かけるといいなあ」などと思ったりしていたのですが、まさかこうも簡単に巡り会えるとは!
わたしの中ではすでに、一種の “伝説” となっていた方を目の前にしてにわかに胸は高鳴り「あのー、もしかしてNHKの番組に出ておられた方ですか?」などとお声がけしたい気持ちが湧き上がってはきたのですが、生来の引っ込み思案で小心者なわたしはなかなか、話しかけることができずにおりました。それに、もしこれが人違いだったりしたらまことに失礼ではありますし。・・・いや、もう99.9パーセント間違いないとは思いましたが・・・。
すると、件のおじさんがこうおっしゃいました。
「去年NHKを観てた人は、オレが誰なのか一発でわかる」
おお!やっぱりそうだったか!!そうとわかれば、もうためらうことはございません。「やっぱりそうでしたか!わたしも観てましたよ、あの番組!」と話しかけたのをキッカケに、そのおじさんとしばし、お話しすることができました。
「アレが放送されてから、北海道から来た人にも声かけられた。これはサスガ、全国放送じゃなあ、と。ローカル放送じゃこうはいかんわ」
おじさんがそうおっしゃいました。わたしの周りでも観ているという人が多い、けっこう人気のある番組だけに、やはり影響力は大きかったようですね。
よくここを利用されてるんですか?とお訊きすると、
「そう!きょうも朝、昼に入って、これで3回目」
とおっしゃいます。おお、やはり竹瓦温泉の超常連さんでおられるんですねえ。竹瓦温泉のほかにもあちこちの共同浴場を利用なさっておられるようで、午前中に入った不老泉も行きつけなのだとか。
ここは駅から近いとこにいい温泉がいっぱいあるのがいいですねえ、とわたしが言うと、おじさんは、
「田の湯温泉には入ってみた?」
と訊いてこられました。「田の湯温泉」もやはり、別府駅から歩ける場所にある共同浴場なのですが、わたしはまだ入ったことがございませんでした。「一度入ってみてごらん。ここと同じように浴槽が1つあってな」と、おじさんは教えてくださいました。
「そこの窓は閉めちゃダメ!湯気でみんなの服が濡れちゃうから!」
開け放たれていた脱衣場の窓を閉めようとした入浴客を、おじさんはそう言ってたしなめました。浴場と脱衣場は区切りがなく一体となっているので、窓を開けていないと湯気がこもり、脱衣場にある服が濡れてしまうというのが、その理由でありました。この時期は脱衣場の窓を開けっ放しにしてると冷えるんじゃないかなあ・・・などと思っていたのですが、なるほど、ちゃんと意味があるんだなあ。おじさんはこうやって、入浴についてのマナーを教える役目も、積極的になさっておられるようなのであります。
「70になると “高齢者優待入浴券” っつうのが貰えるようになる。いま68だから、あと2年じゃ」
とおじさんがおっしゃいました。別府市では70歳以上の方々に、竹瓦温泉をはじめとする市内10ヶ所の市営温泉を180回利用できるという「高齢者優待入浴券」が交付されるのだとか(別府市のホームページを参照)。それはますます、おじさんの温泉通いに拍車がかかることでありましょう。いいなあ。オレも歳とったら、別府に移住しようかなあ・・・。
おじさんとの会話をキッカケにして、やはりお湯に浸かっておられた県外からの入浴客の方とも、会話をすることができました。見知らぬ方との、お湯を介しての一期一会の出会いが味わえるというのも、こういう古くから続く共同浴場の楽しさだと、つくづく思います。
湯から上がり、着衣を身につけていると、やはりお湯から上がったばかりの件のおじさんが、開け放たれた脱衣場の窓からパンツ一丁のままで、外にいる子どもさんに「何年生?」などと、あくまでも屈託なく声をかけておられました。もうこのあたりで知らない人はいないんじゃないですか?というわたしの問いに、小さく頷かれたおじさんでありました。
『72時間』で、もとは福岡の人ながら仕事で体をこわし、湯治のため別府へ移住した、と紹介されていたおじさんでしたが、いまやすっかり別府人としてお元気に暮らしておられるんだなあ、ということが伝わってきて、なんだかしみじみ嬉しい気持ちになりましたねえ。
じゃあお先に失礼いたします、ありがとうございました・・・とアタマを下げたわたしに、おじさんは、
「ウン、ぜひまた来なさい」
と穏やかにおっしゃってくださいました。ええ、ぜひまたここに参上して、おじさんともっと言葉を交わさなきゃな・・・と強く思ったのでありました。
“伝説” となっていたお方との巡り会いを果たすことができ、ウキウキ気分で竹瓦温泉を出たわたし。さあ、この調子で酒場でも、嬉しいひとときを過ごしたいものであります。ホテルを出て空を見ると、ありがたいことに雲の切れ間からは青空が覗いておりました。いいぞいいぞ。
わたしは、今回別府に来たらまず入らなきゃ、と目星をつけていた居酒屋「美乃里」(みのり)を探しあて、入ってみました。
わたしがこのお店のことを知ったのは、これもちょうど1年前のことでした。昨年の別府行きのあと、宮崎市内にある行きつけのバーに、別府にある立命館アジア太平洋大学(APU)に通っているという女子学生さんが、お友だちとともに立ち寄ってこられました。1人で呑むのがけっこう好きだという、なかなか美形のお嬢さん。そんな彼女と別府ネタを語りつつ呑むことができて、すごく嬉しかったのでありましたが・・・。で、その女子学生さんから「ここがオススメですよ」と教えていただいたお店(全部で3軒ございました)の中で、一番立ち寄ってみたいと思っていたのが、この「美乃里」さんだったというわけなのであります。
中に入ると、8人がけのカウンターに、テーブル2つが並んだ小上がりという、思いのほかこじんまりとした店内。まだ開店まもない時間帯で、わたしがこの日最初の客のようでした。メニューを見ると、奇をてらわない親しみやすく家庭的な献立が並んでいて、お酒のアテに良さげな一品から麺類、ご飯ものまで品数も豊富。そしてカウンターの上には、美味そうな料理がてんこ盛りになった大皿が。わたしはその大皿の中で真っ先に目についたポテトサラダを、生ビールとともに注文いたしました。
「お客さん、宮崎からですか?」と、カウンターの中におられたお店のお姉さんがわたしに訊いてこられました。話すときのアクセントで、宮崎のヒトではないかと気づいたといいます。ああ、自分では意識しないけど、やはり生まれ育ちはコトバに出るもんなんだなあ。ともあれ、初めて入るお店にいささか緊張気味だったわたし、これでだいぶ和みました。お店はいつからやってらっしゃるんですか?と訊ねると「4年くらい前からです」とのこと。けっこう新興のお店であります。
そして、生ビールとともに出てきたポテトサラダをさっそくパクリ。
具材はシンプルながらしっかりとした味わいで、しっかりお酒のアテになるような美味しさです。ポテサラが美味いお店は、ほかのメニューもまず間違いなく美味しいはず。期待に胸躍らせつつ、カウンター奥のホワイトボードにある「本日のおすすめ」から〆さばを注文いたしました。肉厚の身には脂もしっかり乗っていて、噛み締めると口の中に旨味がいっぱいに広がり、さば好きには嬉しい限りであります。こちらは、大分の麦焼酎によく合いました。
〆さばを突っついていると、カウンターの中にもう1人、中年の男性が入って来られました。どうやらこの方がご主人のようです。ご主人もまた、他所から初めてやってきた一人呑みのわたしに、気さくな感じで話しかけてこられました。このお店はいい、というおススメをもらって来てみました、とわたしが言うと、ご主人は、
「ほんと、ありがたいことですわ」
と、少しばかり照れるようにおっしゃいました。
カウンターの上に乗っかっていた大皿の料理でもう一つ気になっていたのが、ハンバーグ。お次にそれを注文して食しました。こちらは画像を撮り忘れたのが残念なのですが・・・じゃがいもと人参を添えて出てきた煮込みハンバーグもまた美味しく、食べごたえもたっぷりでした。
しばらくの間、カウンターにわたし一人しかいなかった店内でしたが、その後次から次へとお客さんが入ってきて、いつしかもう満席状態。そのほとんどが、どうやら地元の常連さんたちのようでした。そのためでしょうか、店内は大いに賑わいながらも、なんだか和やかな空気が流れているように思われました。
このままずっと座っていたい気にもなりましたが、そうもいきません。わたしは最後にだし巻き玉子をいただきました。ふんわりとした優しい口当たりと味わいで、気分を和ませてくれました。
この、賑やかながらも和やかなお店の雰囲気、そしてお料理の見た目や味わいに、あるお店のことを思い浮かべておりました。別府で50年以上にわたり、観光客、そして地元の皆さんに親しまれながらも、2014年に惜しまれつつ閉店した大衆食堂にして大衆酒場「うれしや」です。わたしも一度だけですがこの「うれしや」を訪れ、その味と雰囲気に惚れ込んでおりました(そのときのことは「別府・オトナの遠足2014(第1回)老舗大衆酒場で惚れ酔い気分」に書きました)。それだけに、閉店したことを知ったときには実に寂しい思いがしたものでした(閉店についてはやはり拙ブログの記事「別府の名大衆食堂にして名酒場だった『うれしや』の閉店を惜しむ」を)。
実は、今回「美乃里」さんに入ろうと思ったのは、先にこのお店を教えてくださったAPUの女子学生さんから「このお店は前に『うれしや』で働いていた人がやってるんです」というお話を聞いたからでした。実際入ってみれば、活気がありながらも和やかな雰囲気といい、お料理の味わいや見た目といい、確かにどことなく「うれしや」を彷彿とさせるものがありました。お店が開業した時期も4年前といいますから、これも「うれしや」が閉店した時期と重なります。
以前「うれしや」におられたんですか?そうお訊きしようとも思ったのですが、ご主人もお姉さん2人も、お店いっぱいのお客さんへの対応に忙しくなっていたので、ここは遠慮することにいたしました。まあ、それは次の機会に、ということにいたしましょう。
そうこうしていると、さらに2人連れのお客さんが。とはいえ、満席状態の店内には2人分の席は空いていませんでした。少し前にわたしの隣にいた男性がお帰りになって1人分は空いていたので、ここでわたしが引き揚げれば2人分は空きます。あ、ならわたしはこのあたりで失礼しますのでお勘定を・・・とわたしが慌てて席を立とうとすると、ご主人は、
「あ、まだ焼酎残ってますよ」
と、カウンターの上にあったコップを指しました。そこにはまだ、呑んでいなかった麦焼酎が半分くらい残っておりました。わたしは椅子に座りなおして残りの焼酎をしっかりと頂きました。もしかしたら、「そんなに慌てて帰らなくてもいいよ」というお心遣い、だったのでありましょうか。
あらためて席を立ち、お勘定を済ませてお店を出る時、ご主人は、
「ぜひまた来てください」
とおっしゃってくださいました。ええ、ぜひまたお邪魔するつもりであります。
別府に来たら必ず立ち寄りたい、と思えるお店を再び見いだすことができたヨロコビをしみじみ噛みしめつつ、「美乃里」をあとにしたわたしでありました。・・・このお店をわたしに教えてくれた、美形の女子学生さんと再会できなかったのは、ちとザンネンではございましたが(笑)。
昔ながらの細い路地が入り組んでいる風情を味わいつつ、別府の呑み屋街をしばし散策したわたしは、2軒目となるバー「オードビー」に入りました。マスター氏とその娘さんの2人で営む、開業から30年以上になるゆったりした雰囲気のバー。わたしも2年前に初めて訪れ、たちまちお気に入りとなりました。昨年別府に来た時には、2晩続けてお邪魔したくらいであります。
カウンターに腰を下ろすなり、娘さんは「どうもお久しぶりです」と声をかけてくださいました。年に1回しか来ないヨソ者のわたしを、しっかりと覚えてくださっておりました。
ここに来ると飲みたくなるのが、マスター氏が考案された別府八湯(浜脇・別府・鉄輪・堀田・観海寺・柴石・明礬・亀川)をイメージしたオリジナルのカクテルです。別府オリジナルの麦焼酎をベースにした8品のカクテルは、それぞれの温泉エリアの個性をイメージした色合いと美味しさで、別府の温泉情緒を盛り上げてくれます。
この日は浜脇温泉を訪れたので、まず最初の一杯は「Hamawaki」を。アンズの種を原料にしたリキュール、アマレットを麦焼酎と合わせたもの。ちょっとまったりとした味わいが、かつて遊廓もあったという浜脇温泉の雰囲気を思い起こさせてくれます。
次に頂いたのが、この日メインで歩き回った別府温泉をイメージした「Beppu」。大分特産のカボス果汁や抹茶リキュールを合わせた和テイストのカクテルで、こちらもレトロ感あふれる別府の街の雰囲気に合っています。
カクテルを楽しんだあとは、おまかせでお選び頂いたウイスキーの水割りを口にしつつ、ゆっくりと憩いました。
今回は別府に1泊したら、明日には豪雨被害のお見舞いも兼ねて日田に向かうことを話すと、娘さんは、
「それが一番嬉しいことだと思いますよ。2年前の地震のあと、同じように別府に来てくださる人たちがいてくれたことはすごく嬉しく思いましたから」
とおっしゃいました。そう、別府も2年前の熊本地震では大きな揺れに見舞われた上、その後しばらくの間は観光客の減少に苦しみました。それを乗り越え、別府は再び全国屈指の温泉郷として復活したのです。かつて天領だった日田も、きっと豪雨災害から立ち上がることができるに違いありません。
「オードビー」もいつしか、カウンターがお客さんで埋まり賑わいをみせておりました。こちらもどうやら、その多くは地元の常連さんのようでした。その中の中年男女グループから、大きなフラワーバスケットがマスター氏に贈られました。なんとマスター氏、翌日の11日が78歳のお誕生日なのだとか。これは実に、嬉しいタイミングで来ることができました。
みんなでお花を囲んで記念撮影しよう!ということになり、グループの1人である女性の方が、
「宮崎のお兄さんも一緒にどうぞ!」
と声をかけてくださいました。かくて、そのときお店にいた皆さんに混ぜていただいて記念撮影をしたのですが、撮った写真を見ると、なんとわたしが真ん中近くに写っているというありさま。ううむ、これはなんだか申し訳ないですねえ・・・とわたしが言うと、グループの皆さんは「まあ、コレはコレでいいんじゃないですか(笑)」とおっしゃってくださいました。何はともあれ、こうやって居合わせた見知らぬ方々との楽しい交流ができるのも「オードビー」での楽しみです。
こうして「オードビー」でもまた、楽しい時間を過ごすことができました。
わたしが勝手に「心の師」と仰いでいる酒場詩人・吉田類さんがよくお使いになる言葉に「酒縁」というのがあります。文字通り、お酒がとり持つ人と人との縁(えにし)が「酒縁」。わたしも大好きな言葉であります。
この夜の「美乃里」でも「オードビー」でも、わたしはとても素敵な「酒縁」を結ぶことができました。また次回もこの2軒に足を運んで、素敵な「酒縁」との巡り合わせを楽しみにしたいと思っております。
最近は呑んだあとのシメを食べなくなってきたわたしでありますが、旅先では別。「オードビー」を出たあと、アーケード街にあるラーメン店「やなぎ家」さんでラーメンをいただきました。一見こってりしているようで、その実あっさりした旨味のラーメンは、呑んだあとにもうってつけでありました。
楽しく嬉しい夜を満喫し、ホテルに戻って床についたわたしでありましたが・・・未明に猛烈なムカつきで目を覚ましました。そう、二日酔いであります。なんたることか、せっかく「液キャベ」を買っておきながら、それを寝る前に飲んでおくのを忘れていたのであります。でも、自分ではけっして飲み過ぎてはいないつもりだったのですが・・・。楽しい時間を過ごすうち、ついつい杯を重ねていたのでありましょうか。
慌てて「液キャベ」を飲んだものの時すでに遅し。その後は喉から胃腸に至る猛烈なムカつきに七転八倒しつつ、朝を迎えることになってしまったのでありました。おかげで思いっきり寝不足のまま。ううう。
それでもなんとかムカつきも治まり、ホテルをチェックアウトしたわたしは、さっそく日田に向かうべく別府を離れることにいたしました。
今回は短い滞在時間、それも最後にはちょいとしくじりはいたしましたが、それでも別府はまた楽しい思い出を、わたしの中に残してくれました。
ありがとう別府!そして、また来年!
ということで、次回からは日田篇であります。およそ20年ぶりとなる日田の訪問もまた、楽しい思い出を作ることができました。
「別府ステーションホテル」ホームページ→ http://www.station-hotels.com/
「竹瓦温泉」温泉データ→ 別府市ホームページ「竹瓦温泉」https://www.city.beppu.oita.jp/sisetu/shieionsen/detail4.html
バー「オードビー」の紹介記事→ 別府市観光情報サイト 温泉ハイスタンダード!地獄極楽別府「Eau de vie (オードビー)」http://www.gokuraku-jigoku-beppu.com/entries/eau-de-vie
(次回につづく)