読んで、観て、呑む。 ~閑古堂雑記~

宮崎の某書店に勤める閑古堂が、本と雑誌、映画やドキュメンタリー、お酒の話などを、つらつらと綴ってまいります。

【閑古堂の映画千本ノック】1本目『フレンチ・コネクション』 フリードキン監督の乾いたタッチが魅力的な刑事映画の傑作

2023-10-08 17:10:00 | 映画のお噂
突然ではございますが、これから「閑古堂の映画千本ノック」と称する、個人的なイベントを始めることにいたします。
原則として1日に1本映画を観ては、その紹介と感想、あるいは映画をダシにした雑談や勝手なことを綴っていく・・・というものであります。取り上げる作品はその時その時の気分次第。手持ちのBlu-ray、DVDをメインにしつつ、映画館やデジタル配信で観た作品も対象に加えることにいたします。

なんでまた、そのような酔狂なコトを始めることにしたのかといえば、「映画好き」などと言っているくせに、キチンと観ていない作品があまりにも多いことに、自分でもげんなりしたからであります。
誰もが知っているような、映画史に輝く名作、傑作、ヒット作と言われている作品であっても、まともに観ていないままになっている作品がなんと多いことか。そこで、これからしばらくは本腰を入れ、集中して映画を観ていくことにしようと思い立ちました。
とはいえ、根がめんどくさがりにできているゆえ、あまりハードルを上げると続かなくなる可能性大であります。なので、過去に観た作品の再鑑賞や、長篇だけでなく短篇・中篇作品も1本としてカウントすることにいたします。また、別の都合や事情により映画を観ることができない日も出てくることでしょうから、そういう時にはことさら無理や無茶はせず、まずは気長に続けていくことを優先させたいと思います。

そういうわけで当分のあいだ、読書量のほうがガタ減りしてしまうのは避けられないでしょう。ですが、限りある時間とエネルギーの中で何かに力を入れようとするのであれば、別の何かを犠牲にせざるを得ません。いっぺんに2つ以上のことがやれるはずもないのですから。なので、これからしばらくは映画中心の生活にシフトしていきたいと考えております。
(などと言いつつ、映画の合間合間に細々ながら、本も読むことになるでしょうけど)
なお、なるべく幅広いジャンルの作品を観ていくつもりではありますが、それでも普段からよく観ているジャンル(具体的にはSFものや特撮もの、ドキュメンタリーなど)に偏りがちなラインナップになるかと思います。そこはどうか平にご容赦を。

前置きが長くなりました。1本目に取り上げるのは、8月に逝去した巨匠ウィリアム・フリードキン監督の代表作のひとつである『フレンチ・コネクション』であります。
『フレンチ・コネクション』The French Connection(1971年 アメリカ)
カラー、104分
監督:ウィリアム・フリードキン
製作:フィリップ・ダントニ
製作総指揮:G・デイヴィッド・シャイン
原作:ロビン・ムーア
脚本:アーネスト・タイディマン
撮影:オーウェン・ロイズマン
音楽:ドン・エリス
出演者:ジーン・ハックマン、ロイ・シャイダー、フェルナンド・レイ、マルセル・ボサッフィ、フレデリック・ド・パスカル、トニー・ロー・ビアンコ
Blu-ray発売元:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント(現:ウォルト・ディズニー・ジャパン)

ニューヨーク警察薬物対策課の敏腕捜査官で、強引な捜査手法から「ポパイ」とあだ名されるドイル刑事(ジーン・ハックマン)。相棒であるラソー刑事(ロイ・シャイダー)とともに麻薬密売を摘発していく中で、フランス・マルセイユに拠点を置く麻薬密輸組織の黒幕シャルニエ(フェルナンド・レイ)により、3200万ドル相当のヘロインが密輸されるということを知ったドイルは、マフィアとの取引のためアメリカに潜入したシャルニエの行方を執念深く追っていく・・・。

1960年代初頭に実際に起こったという、麻薬密輸組織の摘発劇をモデルにして作られた刑事アクション映画の傑作。興行的に大ヒットしただけでなく、批評面でも高く評価され、アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞、編集賞の5部門で受賞する栄誉に浴しました。
悪を追い詰めるためには手段を選ばず、猪突猛進で突っ走る「ポパイ」ことドイル刑事を演じるジーン・ハックマンは、エネルギッシュな風貌と相まってこれ以上ないくらいのハマりっぷりで、アカデミー主演男優賞受賞も当然というべきでしょう。
その猪突猛進ぶりが頂点に達するのが、語り草になっているクライマックスのカーチェイス場面です。シャルニエが差し向けた殺し屋が乗り込んだ列車を追って(一般人から強引に奪った)車に乗りこみ、派手にクラクションを鳴らしつつ高架下を猛スピードで飛ばしまくるドイル・・・。あらためて観てもスリリングで迫力満点な場面で、よくこんな撮影ができたもんだなあと感心させられました。
ドイルの相棒・ラソーを演じるのが、のちに『JAWS/ジョーズ』(1975年)の主演で大スターとなるロイ・シャイダー。本作ではドイルとは対照的な、沈着冷静に捜査にあたるラソーを好演して、アカデミー助演男優賞にノミネートされました。
そして、マルセイユの麻薬密輸組織の黒幕・シャルニエを演じているのが、フェルナンド・レイ。スペイン生まれの役者さんですが、ここではいかにもフランスっぽい洒脱さを持った黒幕を貫禄たっぷりに魅せてくれています。尾行してくるドイルを巧みにかわし、地下鉄でまいてしまうシーンは傑作であります。

もともとはドキュメンタリーを手がけていたというフリードキン監督は、リアルで乾いたタッチの演出を丹念に積み重ねることにより、作品に深みと陰影をもたらしております。
本作をとりわけ忘れ難いものにしているのが、ラストのシークエンス。ドイル率いる警官隊が、ついにシャルニエ一味とその取引相手を廃墟に追い詰めて一網打尽でめでたしめでたし・・・と思いきや、意想外のアクシデントによってダークな幕切れに・・・。この突き放したかのようなラストによって、本作は単純明快な刑事アクションにはない余韻を残してくれます。
50年近く経っても色褪せることのない、実に魅力的な映画であります。


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