しろみ茂平の話

郷土史を中心にした雑記

坊つちやん

2022年05月03日 | 銅像の人
場所・愛媛県松山市・道後温泉本館前




「星のあひびき」  丸谷才一  集英社 2010年発行

『坊つちやん』のこと

あの日本で一番有名な中篇小説を何十回目かにまた読んで、
妙なことが頭に浮かんだ。
坊つちやんに優しい「清(きよ)と云ふ下女」は坊つちやんの実の母なのではないかと思ったからである。
そして、一体どうして今までこのことに気づかなかったのだろうと不思議な気さへした。
さう思ふくらゐ、清が実の母なら話の辻褄が合ふのである。





みんなが100年間そのことにちっとも思ひ当たらなかった、ここで考へてみる。
まず作者の書き方に問題がある。
老獪であり巧妙である。
じつに上手に隠してゐる。
漱石は頭がよいことになってゐる。
事実、よかった。
しかし作家としての彼はノイローゼ患者で、執筆はノイローゼの治療のための療法だった。


もう一つ、伝記的な条件がある。
漱石は、誕生後すぐに里子に出され、そこから戻るとまた某家へ養子に出されたあげく、8才か9才のころ実家に戻った。
このことのせいで漱石は自分を捨子として意識し、
やがて捨猫の物語「吾輩は猫である」を書いた。


戦前の日本では忠義が大事な徳目だった。
わたし自身もまた、長いこと、清を忠義者としてとらへてゐた。
清が実の母だから坊つちやんをかはいがるといふごく自然な見方を排除したのだろう。


撮影日・2015.10.3 

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みんな軍国少女ですよ

2022年05月03日 | 昭和20年(終戦まで)
軍国少年や軍国少女のコアな世代は、およそ大正14年生~昭和4年生と思っている。
周囲が軍事一色の時代に育ち、分別つくまもなく年少兵になったり、
竹槍で本気で米兵を殺す(それ以外の世代は訓練に出る意識)愛国少女、
いちばん時代にほんろうされれている。
脚本家・橋田壽賀子は、その大正14年の生まれ。
・・・・・
高等女学校生であればわかぬでもないが、
女子師範学校が、一般的に限度の時代に日本女子大にまで進んだ筆者が、
軍国少女であったのは残念であるし、橋田壽賀子は度が過ぎた調子者であったように思う。
おそらく、嬉々として”お国のため”に労働した大学生は(高女も含め)少数のはずだ。
・・・・・





「渡る世間にやじ馬ばあさん」 橋田壽賀子 大和書房 2021年発行

太平洋戦争、死んでも忘れられない光景がある

あの太平洋戦争の頃はみんな軍国少女ですよ。
私なんかガチガチの軍国少女でした。
聖戦だと言われていたから、日本はよい戦争をしているんだ、
そう思っていました。


鬼畜米英だとか、お国のためには我慢しなければならないということを、
とことん教えられ洗脳されていましたから、食べる物がなくても、
ちっともつらいとは思わなかった。
いやお国のためなら死んでもいいと、本気で思ってた。
疑うことも知らず、そういうのが当たり前だと、
誰もが同じ価値観を持った時代でしたから。


戦争が始まったのは堺高等女学校の二年生。
二年後に日本女子大学校国文科に入学。
そのうち、授業どころじゃなくなって、学徒動員が始まった。
毎朝炒り豆と焼き米を持ってもんぺをはいて、
防空頭巾をかぶって、女子大の寮から工場へ行くわけですよ。
それで点呼があって、一斉に配電盤のビスを留める作業をやるのね。
悲壮感なんてありませんでした。
”ああ、きょうも一日、お国のために働いた”
って実にさわやかでしたよ。


やがて空襲がひどくなり学校は閉鎖、大阪に戻り、
海軍経理部に動員されました。
昭和20年の7月に,堺市が空襲を受け、急いで下宿先から堺に向かったけど
一面の焼け野原で実家はあとかたもなく焼けちゃって、熱風で近づけないんですよ。
いまも目に浮かぶのは、
あちこちに黒焦げの死体が折り重なるようになっていた光景です。


これから一ヶ月ほどがたって、あの”玉音放送”。
将校さんたちもいて、校庭に二百人ぐらいいたかな。
何がなんだかわからなくて、将校さんらに聞いても、
”戦争が終わった”とだけで、日本が負けたとは絶対に言わないんですよ。
でも、アメリカ兵が日本に上陸するという噂が広まって、
どうせ死ぬんだったら、
アメリカ兵がやってきたら刺し違えて死んでやろうと、
そんな恐ろしいことを本気で考えていました。


敗戦のときが20歳。
あの戦争から今年で60年。
戦争に協力したという責任は、やはり感じるんです。
その気持ちが強くて『おしん』の亭主には、
若者を戦場に送った責任をとらせて自殺させたんです。
私の思いを、せめて託したいと思ったんです。


「女性セブン」2005年8月11日号


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