(昭和中期では)
笠岡東中や大島中地区の人が、笠高・笠商・淳和に通学する時、
笠岡工業生と対面する。
ほぼ決まった時間に同じ場所で高校生同士が対面する。
女学生はそこで工業生に恋心を持つことがある。
その一瞬が、毎朝の喜びとトキめきで、
吉田拓郎風にいえば♪ あゝそれが青春、の時を過ごす。
その一瞬以上の恋はなかった(と思うが、違うかも)。
(昭和・戦時中では)↓
人命が軽すぎた時代の青春。
笠岡東中や大島中地区の人が、笠高・笠商・淳和に通学する時、
笠岡工業生と対面する。
ほぼ決まった時間に同じ場所で高校生同士が対面する。
女学生はそこで工業生に恋心を持つことがある。
その一瞬が、毎朝の喜びとトキめきで、
吉田拓郎風にいえば♪ あゝそれが青春、の時を過ごす。
その一瞬以上の恋はなかった(と思うが、違うかも)。
(昭和・戦時中では)↓
人命が軽すぎた時代の青春。
にがく、酸い青春 新川和江
「少女たちの戦争」 中央公論新社 2021年発行
旧制の女学校の一年生の晩春の頃だったと思う。
水戸の聯隊に入営していた兄に、月に一、二度、
ぼた餅やちらしずしを重箱に詰め、母と一緒に面会に行くのである。
水戸から聯隊行きのバスに乗るのだが、とある停留所を通過する時、
長身の学生が路上に立っているのを見た。
高等学校も高学年の学生であるらしかった。
かれはそのバスには乗らなかったが、発車したバスの窓から見ている私と、目が合った。
一瞬のことだったけど、かつて体験したことのないときめきが、私の胸に生じた。
兄と面会し、帰ろうとしたとき、私の足が、思わず釘付けになった。
巨きな桜の木の下に、あの学生が立っていたのだ。
母に促され、その前を通り過ぎる時、
二度と会えないだろうそのひとの、学生服の胸ポケットに縫いつけられた、
白い小布の名札を見た「〇〇」と姓だけが読みとれた。
せめて名前だけでも知りたいと、いっしょけんめいだったのだ。
家に帰ると、春だというのに、火鉢を抱えこんで部屋に閉じ籠ってしまった。
・・・
そのひとも何処かで、静かな老年を迎えているのであろう。
それとも、学徒出陣で、南の空に散華したか。
私の通う女学校の教室が七つもつぶされ、
旋盤やターレット、ミーリングといった機械が運び込まれて、兵器工場と化するも、それから間もなくのことだった。
敵の航空母艦に突っ込んで行く特攻機の、心臓部に取り付ける気化器という部品だった。
そのひとの死に私は、加担していたのかも知れなかった。
敵の航空母艦に突っ込んで行く特攻機の、心臓部に取り付ける気化器という部品だった。
そのひとの死に私は、加担していたのかも知れなかった。