給湯器の故障、エアコンの故障、パソコンの不具合……これまであらゆる電気製品のトラブルに見舞われてきた。そのたびに、自分ではどうにもならない無力感でいっぱいになる。その無力感がわたしを前へ、前へ、と推し進める。
さて、今回壊れたのは洗濯機である。
給水、排水、脱水まではひととおりこなすのに、肝心の、洗う動作のときに洗濯槽が回転しないのである。
スイッチを押したときに、なにやらいつもと違う音がすることにうっすら違和感を抱いたのは、2,3日前のこと。しかし見て見ぬふり、気づかぬふり。故障となったときの修理だの買い替えだのというわずらわしさから目を背けたかったのである。
しかし回転していない事実に気づいたら、もはやそんなことは言ってはいられない。現に、汚れが落ちていないのである。
幸いなことに、その日は夏休みで在宅。取扱説明書の後ろのページにある問い合わせセンターに電話をかけると、「お客様の携帯からはおつなぎできません」という無情の音声が流れてくる。0120から始まる電話番号にありがちなメッセージである。動揺しながら、近くの公衆電話を頭の中で検索するが、駅しか思い浮かばない。駅に向かって自転車を走らせる道すがら、きょろきょろしながら電話ボックスらしきものを探すが、もはや、昭和の遺産になってしまったのか、どこにも見当たらない。ようやくたどり着いた駅の電話はなんと、改札口の中にある。ここまで来て140円の入場券にこだわっている場合ではないが、念のため、脇の控え室にいた駅員さんに聞いてみると、こちらからどうぞ、とすっと通してくれた。(聞いてみるものね。)わたしの必死の形相にひいたのか、それとも規則でそうなっているのか、はたまた好意なのか……。
無事にサービスセンターとのやり取りを終え、家にたどりつき、修理業者からの電話を待つこと1時間。
その間にも、もしも修理が不可能だった場合に備え、あっちのヨドバシ、こっちのヤマダに電話して、一番早く配送してくれそうな店をチェック。最寄のコインランドリーの場所も確認する。そして、ようやくかかってきた電話にすがりつくように洗濯機の症状を説明し、本日中にきてくれるよう懇願してほっとひと息……。
夕方、都合をつけてきてくれた修理のお兄さん。
部品の在庫をスマホでチャッチャと調べ(何しろ8年前に買った“古い”型なのだ)、2日後に再び来てくれることになった。
かくして、夏休みの1日は、洗濯機の故障騒ぎで、ひとりひそかに騒々しく暮れた。
そしてその晩、夢を見た。
外は土砂降り。雨が降っているのに気づかずに、ベランダには洗濯物が干しっぱなしである。びしょびしょになった洗濯物を取りこみながらこう思った。
「あ~、洗濯機壊れているのにどうしよう……」この感覚が妙にリアルである。
夢の中で展開する場面はいつも荒唐無稽だが、そこで抱く実感には、微妙に現実とつながったリアリティーがある。
さて、今回壊れたのは洗濯機である。
給水、排水、脱水まではひととおりこなすのに、肝心の、洗う動作のときに洗濯槽が回転しないのである。
スイッチを押したときに、なにやらいつもと違う音がすることにうっすら違和感を抱いたのは、2,3日前のこと。しかし見て見ぬふり、気づかぬふり。故障となったときの修理だの買い替えだのというわずらわしさから目を背けたかったのである。
しかし回転していない事実に気づいたら、もはやそんなことは言ってはいられない。現に、汚れが落ちていないのである。
幸いなことに、その日は夏休みで在宅。取扱説明書の後ろのページにある問い合わせセンターに電話をかけると、「お客様の携帯からはおつなぎできません」という無情の音声が流れてくる。0120から始まる電話番号にありがちなメッセージである。動揺しながら、近くの公衆電話を頭の中で検索するが、駅しか思い浮かばない。駅に向かって自転車を走らせる道すがら、きょろきょろしながら電話ボックスらしきものを探すが、もはや、昭和の遺産になってしまったのか、どこにも見当たらない。ようやくたどり着いた駅の電話はなんと、改札口の中にある。ここまで来て140円の入場券にこだわっている場合ではないが、念のため、脇の控え室にいた駅員さんに聞いてみると、こちらからどうぞ、とすっと通してくれた。(聞いてみるものね。)わたしの必死の形相にひいたのか、それとも規則でそうなっているのか、はたまた好意なのか……。
無事にサービスセンターとのやり取りを終え、家にたどりつき、修理業者からの電話を待つこと1時間。
その間にも、もしも修理が不可能だった場合に備え、あっちのヨドバシ、こっちのヤマダに電話して、一番早く配送してくれそうな店をチェック。最寄のコインランドリーの場所も確認する。そして、ようやくかかってきた電話にすがりつくように洗濯機の症状を説明し、本日中にきてくれるよう懇願してほっとひと息……。
夕方、都合をつけてきてくれた修理のお兄さん。
部品の在庫をスマホでチャッチャと調べ(何しろ8年前に買った“古い”型なのだ)、2日後に再び来てくれることになった。
かくして、夏休みの1日は、洗濯機の故障騒ぎで、ひとりひそかに騒々しく暮れた。
そしてその晩、夢を見た。
外は土砂降り。雨が降っているのに気づかずに、ベランダには洗濯物が干しっぱなしである。びしょびしょになった洗濯物を取りこみながらこう思った。
「あ~、洗濯機壊れているのにどうしよう……」この感覚が妙にリアルである。
夢の中で展開する場面はいつも荒唐無稽だが、そこで抱く実感には、微妙に現実とつながったリアリティーがある。