TOMATOの手帖

日々の生活の中で出会う滑稽なこと、葛藤、違和感、喪失感……などをとりとめもなく綴っていけたらと思っています。

道を聞かれる

2022年10月21日 | エッセイ
朝の冷え冷えとした空気に合わせてコートを着込んで出かけたらなんとまあ日中は暑いこと。
来年の壁紙型のカレンダーや、せっかく遠出をしたのだからとどっさり買い込んでふくれあがったエコバッグふた袋。
それらを両手に抱え込んでよたよた歩いていたら、道を聞かれた。
「さっき乗った電車の中から見えた郵便局に行きたいんですけど、どっちに行ったらいいでしょうか」と、同年輩の女性である。
わたしの恰好を見て、明らかに買い物帰りの地元民と見たらしい。
電車を降りてまで見知らぬ土地の郵便局に行きたいってちょっと不思議な気がしたが、「そこの大通りをひたすら15分ほど歩いて行けば着きますよ」と答える。
知ってはいても説明しづらい場所というのがあるが、このたびは単純な道筋なので聞かれたほうもホッとする。
お礼を言われて別れたのだが、こんな些細なことに対しても、最近では、役に立ったという実感を感じられて、もっと大げさに言うと、良い行いをしたという自己満足感で、いっとき、いい気分になる。
職場で、新しいパソコンソフトの操作におたおたするたびに、もはや高齢者はお呼びじゃない気分になることの多くなった昨今。
こんなふうに本心からのありがとうをいただいたりする機会があると、大げさな言い方だが、存在価値がふわっと一瞬高まるような気がするのである。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする