TOMATOの手帖

日々の生活の中で出会う滑稽なこと、葛藤、違和感、喪失感……などをとりとめもなく綴っていけたらと思っています。

マスク美人

2023年09月14日 | エッセイ
通院している眼科医院に、女優の石田ゆり子さんに似た美人のスタッフがいる。
マスク越しのお顔といい、髪型といい、雰囲気といい、ゆり子さんを彷彿とさせるものがある。
眼底検査や視力検査が彼女にあたると、ほのかにうれしい。
しかし幸か不幸か、わたしは彼女がマスクをはずしたまるごとの顔を目撃したことがない。

職場では、新型コロナが5類になっても医療機関に準じるということでマスク着用が義務となっている。
肩にかかった長い髪をシュッと後ろにはらう姿が粋な職員がいる。
コミュニケーションの取り方もやわらかく、言動も穏やかで、グループリーダーにふさわしい女性職員である。
つけまつげの恩恵か、マスクから出た目もパッチリと力がある。
とある日、彼女が水を飲もうとマスクをはずした瞬間、下からあらわれたお顔がわたしの思い描いていたよりも、ニューッと細長く、うろたえたことがある。
勝手に美化しておいて大変失礼な話だが、今年6月に彼女が異動してきてから、彼女のマスク無しのお顔をそれまで見たことがなかったのである。
皺・シミを隠す効果があるために、マスクをできるだけはずしたくない、はずした顔を見られたくない、すっぴんだし……、と思っているわたしのような人も多いだろう。

さて、眼科のゆり子さんだが、彼女のマスクという仮面をはがしてみたいというイジワルな気持ちと、いやいや、もうしばらくの間は、ゆり子さんのままでいて欲しいという気持ちがせめぎあっている。

コメント
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