親子三代の間伐!
今日(11日)は建国記念日の休日と言う事もあり、立ち寄った
箕面ビジターセンターの駐車場もいつになく満車でした・・・
自然2号路、3号路が今改修工事中の為に通行が制限されていますが
、山道を歩きやすいように整備してくれている事は、行政の予算難の
時代に、有り難い事です。
3号路から山伏の修験道に入り上っていくと、後から次々とハイカーの
方々がこられます・・・
いずれも中高年の二人連れ、五人連れ、そして十数人のパーテイなどで
、みなさんはお喋りに夢中で賑やかな森です・・・
私は後ろからせっつかれるのが苦手なので、ましてドンカメと呼ぶ位に
鈍なカメ歩きですから、後方にハイカーの人影を見るといつも一休みに
して過ぎ去るのを待つことにしています・・・
今日はその一休みの多いこと・・・ (笑)
今日のコース選択を間違えたかな? と、少し後悔していたのに、やがて
ピタリと誰も来なくなり、シ~ンとした穏やかな冬の森に戻りました。
耳を澄ませば鳥たちが楽しそうに飛び回っています・・・
(古くなった自分の頭では、いまだに鳴き声と名前が一致せず、諦めて
とっくに覚えるのを止めてしまいましたが、文章に表現できないのが少し
悔しい思いです) (笑)。
冷たい風が吹くたびに木立が大きく揺れて、私はその都度帽子を深く
かぶり、襟を立てて寒さをしのぎます・・・
冷たい風!
でもこの凛とした冬の森は大好きです。
植物も、動物も、昆虫も、鳥たちも・・・ 森で生きるものたちが、じっと
厳しい寒さに耐えながらも生きている姿には、感動さえ覚えるのです。
山の中腹まで上ると、丸太を半割にして作った木のベンチがあり、休憩
できる所があるので、私はここでいつも一休みにします。
この周辺の木に何枚かの表示物がかかっています・・・ 何かな?
近づいてみると・・・
「無断伐採禁止・・・ ここは国有林です。
無断で木を伐採すると違法行為で処分されます。
既に警察に通報してあります。
無断で木を伐採している所を見かけられた方は、最寄の森林管理署、
森林事務所、警察署に通報を願います・・・」 の旨。
確かに周辺を見ると、切り倒されたヒノキやスギの木などが積み上げて
あり・・・ 更に、7~8本のヒノキが私の腰あたりの高さでカットされて
います。
つまりノコギリで幹をグルリと全て切り込んでいて、給水の役目を果たす
樹皮が分断されているので、枯れ果てるのはもう時間の問題です。
なぜ? 誰が? 個人が勝手にやったのかな?
そんなことを考えながら再度冷静に周りを見てみると、どうやら無造作に
やっているのでなく計画性があり、ここを切り開いて見晴らしのいい
休憩場にしたい為・・・?
それに山道沿いの歩くのに障害となる危ない木や、込み合っている
樹木の間伐をしているような気がしました。
やっておられる方のお気持ちは分からないわけではありませんが、
何しろここは国有林ですから、許可のない伐採はやはり違法と言わねば
なりませんね・・・
天上ケ岳周辺の西斜面には、国によって伐採されたスギの間伐材が
切り倒されたままに放置されているのが見えます。
森が開けて明るくなり、気持ちのいい散策が楽しめますが、一方で立派
に育ったおびただしい数の大きな杉の倒木を見るたびに、何か
活用方法はないものなのか?
儲からないと言う事で、なんでもかんでも経済性至上主義の世の中に
なってしまうと思うと、つい悲しくなってしまいます。
天上ケ岳(499.2m)の役の行者像に参拝の後、堂屋敷跡から北への
尾根筋を通り堂屋敷山(553.4m)へ向かう途中のことです・・・
先のほうで コン コン コン・・・ バサ~ バサ~! の音・・・
どうやら森の中で誰かが何かをしている様子です・・・
ゆっくりと近づいていくと、急に上方から バサ っ とスギの小枝が落ち
てきました・・・
ビックリして上を見上げると一人のおじいさんと目が合いました・・・
みるとナタを片手にスギの枝払いをしている所でした・・・
樵(きこり)だ!?
(きこりなんて言葉は今どき 死語に近いのに、なぜか瞬間的に頭を巡り
、後で自分の古い頭を笑いましたが・・・)
* やあ~ いま何時ですか?
・ 今ですか? (私は時計を見ながら・・・)
いま12時5分前ですよ・・・
* もう昼か・・・
(そういいながら木の上から下りてこられました・・・)
* あんた! 一人で歩いてまんのんか?
・ ええ! いつも一人です・・・ 人と歩くと気を使うし、それに山の中
ぐらい自分の気持ちに沿って自由気ままに歩きたいものですから!
* 分かる 分かる・・・! そりゃええこっちゃ!
それが一番やな・・
・ 枝払いですか・・・ しかし大変なお仕事ですね!
* いやいや これやっとかんとな、節ばっかりなって売れんように
なるさかいな・・・ 何しろこの木を出荷するまで親子三代
かかりますさかいな・・・ 大きな声では言えんけどな、細い木で
50年以下のは安い建売り用やな・・・ 本建築物やと、
100年以上育てんとあきまへんのや・・・
・ それはまた気の長い話ですね・・・
* しゃあさかいな、もう今どき誰もやらしまへんがな・・・
東南アジアからごっつい安い材木がドンドン入ってきよる
からな・・・
この辺の山持ちももう誰もやらへんから荒れ放題やな・・・
下草刈ったり、間伐したり手入れせんと山はすぐに荒れてしま
うさかいな・・・
・ 私の夢の一つに、小さくていいから自分の山が一つ欲しいな~ と、
思っていたんですが、それを聞くと大変なんですね・・・(笑)
私のは、もっぱら自分用に森で静かに浸る為のものなんですがね・・
ところでここは民有林ですか・・・
* そうや! ここの前から国有林やさかいな、一本たりとも許可
ないと切れまへんわ・・・ しかし切る時はものすごい機械と
人出で一気にやりよるな・・・ 採算なんか度外視でな・・・
搬出もヘリコプターやしな・・・ わしら個人ではとうてい
やれんわな!
* わしもな、若い頃はサラリーマンと兼業やった、定年後に
やっと出来るようなったがな・・・
確かに山は税金は安いけど、管理が大変なんや・・・
この木見てみ・・・!
鹿に表皮を食われてこれはもうダメやな・・・
・ こんな所に鹿ですか!?
* 鹿が多いな・・・ もう何本もやられてしもたわ・・・
・ 私も昼間に谷川で水飲んでる鹿を見かけますが、そんなに多いん
ですか・・・?
* 顔見たら可愛い顔してるんやがな・・・
食いもんがないんやろな・・・
それに昔はオオカミや鹿を餌とした天敵がいたけどな,今は
恐いもんなしやから増えるんやな・・・
・ この前に止呂々美の山の方で猟師が沢山鉄砲持って狩りをして
ましたけど・・・
* あれは殆どがイノシシ狩りですわ・・・ 許可制で期間も限ら
れてまんねん・・・イノシシはボタン鍋で高こう売れまんねん・・・
しかし鹿肉はあきまへんわ!
(ここでも採算の問題か・・・)
・ イノシシというと、この前に雪の日にここを通ったらイノシシの大きな
足跡がくっきりとついていてビックリしましたけど・・・
* この辺も多いな・・・ ミミズ探して掘り返すんでな・・・
それに葛の根っことか野菜も何でも雑食やからな・・・
しかし猪肉はミミズの塊りみたいなもんやな!
・ そうだ! 一つ教えてもらいたんですが・・・
スギやヒノキの植林をする時に、なぜあんなに積めて苗を植えるん
ですか・・・? さっきもその先の国有林の間伐材を放置してある
のを見て、そう思っていたんですが、もっと最初から空けて植えて
おけば、こんなにも間伐作業に追われなくても良さそうなものなの
にと、単純にそう思ったのですが・・・
* ハハハハ・・・ そりゃ簡単や・・・ 植林は最初1m以下の
間隔で苗を植える、太陽があまり林床を照らすと草や他の
植物が育ちすぎてスギやヒノキの苗が育たない・・・
その内に苗が育つ順に間引きしてその間隔を広げていくんや
10m間隔ぐらいまでな・・・
そうすると下に他の植物が育たんし、木と木が擦れん程度に
間隔空けていくからまっすぐに伸びるんや・・・
そんで途中の枝を切っていってやると節のないええ木が
できていくんやな・・・
・ なるほど! すると間伐も枝払いも木の生産には欠かせない労働
なんですね!
* そうや! 三代かけてな・・・ 昔から子供が生まれたら
スギやヒノキを植えたもんや・・・ その子の子供、つまり自分
の孫が嫁に行く頃になってやっとその木を切って家を建てて
やるんやな・・・
・ いい話ですね・・・!
(そんな話を聞きながら、私も子供の頃にそんな話を当たり前に聞いて
いた事を思い出していました・・・)
* そろそろ昼休みにしまっさ! ほな気いつけてな・・・
さいなら!
山を持っている人を羨ましく思ってきたけれど、維持管理にそれなりの
苦労を思うと、自分の夢の一つが急にしぼんでいくようで、寂しくも思い
ました (苦笑)。
( 気になったので帰宅してデータを見てみると、ちなみに日本の
森林面積は2500万ヘクタールで、国土の66%が森、その40%が
植林された杉やヒノキの人工林とか、国有林が790万H。 日本は毎年
一億立方メートルの木材を使用し、その量は甲子園球場いっぱいに
積み上げたら、富士山の二倍の高さにまでのぼるとか・・・
うち75%が外国からの輸入材・・・ と、ありました。 )
国土の三分の二が森なのに、使用材の四分の三が輸入材とは、
これいかに? 考えさせられる一日でした・・・
私はそれからexpo90箕面の森に立ち寄り、四反田谷の冬枯れの
小鳥村(名付けは私です) を楽しみ、箕面林道から四季の森を経て、
箕面川ダム湖を周って帰路につきました・・・
国有林でも民有林でも、こうして箕面の森の散策を楽しませていただけ
るのは、私にとってこの上ない至福の時間であり幸せなことです・・・
そろそろスギ花粉が飛び始めたようで、私の鼻がムズムズして知らせて
います・・・ 当分スギやヒノキ林は歩けそうにありません。
それにしても念願の山がどこかに持てたとしても、その間伐や枝払い
中に・・・ いや、ゆっくりとそこに浸るにしても、私のように花粉症で
クシャミや鼻水、目に涙でクシャ クシャになれば、全く仕事にはならない
でしょうし、ゆっくりと浸るどころではないようですから、
私の山もち夢はもうここで完全に粉砕もののようです・・・ (笑)
09-2-11 (完)