箕面の森の小さなできごと&四季の風景 *みのおハイキングガイド 

明治の森・箕面国定公園の散策日誌から
みのおの山々を歩き始めて三千余回、季節の小さな風景を綴ってます 頑爺<肇&K>

怒りの涙!

2020-08-25 | *編集・春/4月

怒りの涙!

 8日ほど前、大日橋から見た雲隣の森の野生桜・エドヒガンは見事で

した。

今日(5日)は同じところに立って、逆の箕面川を挟む北の斜面を見上げ

ると、山頂近くまで数十本のエドヒガンが美しく咲き誇っているのが見え

ます・・・   きれいだな~

なんでもエドヒガンの現存する最古木は山梨県にあり、その周囲は

12Mで、樹齢はなんと 2000年とか・・・  

気が遠くなるような年月ですね。

それが毎年時期が来ると、きれいな桜の花を咲かせ、しかも2000回

も!   ただ ただ 畏敬の念をいだきます。

 

杉の茶屋横から、雲隣展望台への山道を登ります・・・

昨日の大雨の影響で、快晴の青空が広がっているものの、足元は

濡れ落ち葉で滑りやすく、山土に足をとられたりと気を使って登ります。

途中の中腹で一休みをしながら振り向くと・・・

ワー  すごい!

思わず声をあげてしまいました・・・

先程見上げていた北の斜面のエドヒガン群が、私の前方の同じ目位置

あたり、左右の森の随所に咲く桜とあわせて、見事に山肌がピンクに

染まっています・・・

更に東側を見ると、雲隣の森に点在するエドヒガン、ヤマザクラが

満開です。  

きれいだな・・・!

森のあちこちに大輪の花火が打ちあがったようで、観光地や街中で見る

ソメイヨシノなどの整然と植樹された桜並木と違う、ランダムな森の桜見

です・・・  

手前にはイロハモミジの小さな若葉が出始めていて、その初々しさに

思わず見とれてしまいます・・・

 

岩場を過ぎ、こもれびの差し込む気持ちのいい森を登っていくと、

まもなく展望台が見えてきます・・・

近づくと何か ゴソ ゴソ ゴソと音がします・・・  

すると突然に頭上から ピー ギャー ギャーという動物の甲高い

警戒の鳴声・・・

すると一斉に ギャー ギャー バサ バサ ボキン! 枝を折る音など

がして 一騒ぎが起きました・・・

みると猿の群れです・・・

私は一瞬たじろぎましたが、何食わぬ顔をして空を見上げたり、足元を

見たりして猿と目を合わせずに、ゆっくりと階段を占拠している猿群を

かき分け展望台に上がりました。

 

すると安心したのか?  小猿が 一匹 二匹と木の枝から地上に降り

きて、それまでのように遊び始めました・・・

しばらくして数えてみると 約30匹の群れです・・・

私はリュックを下ろして帽子をとり、薄くなった頭皮を暖かい太陽の

光に当ててやりながら (笑)  展望台からの眺めを楽しみました。

 春霞(かすみ)と言う言葉どおり、大阪湾も大阪市街地もボンヤリと

しているものの、墨絵のような幻想的な世界です。

 

目の前の石のベンチの上では母子猿? が毛つくろいを始めました・・・

仲のいいこと・・・  

周りをみると6組の猿たちが、おもいおもいに春の暖かい日差しを

浴びながら、ノンビリと毛つくろいをしています・・・

なんと微笑ましい光景でしょうか・・・

見ていると、たまに交代しながら交互に毛つくろいをやっています・・・

しかし母子と思いきや、他の大人猿と交代したり、左右の組と交代して

みたり、大きな大人同士だったりと、どういう組み合わせなのか分から

なくなりました (笑)   

群全体が一つの大きな家族のようです。

 

そんな中を、じっとしていなくてはしゃぎ回っているのは、まだ生まれて

僅かの幼少猿たちです・・・ 人間世界とよく似ています。

何がそんなに楽しいのかと思うぐらいに、何匹かでお互いに絡み合い、

上になったり下になったり、他の子供たちと追いかけっこをしたり、

小枝にしがみついたかと思うと落ちたり、取っ組み合いのケンカでも

しているのかと思いきや遊びだったり、見ていて飽きません・・・

しかし、私はふっとジーンとくるものがありました・・・

それぞれがみんな温かいスキンシップに溢れているのですから・・・

人間の家族が忘れてしまったような、温かい触れ合いを感じます。

いい家族?  群れです。

 

先程、最初に歯をむき出して私を威嚇していたボス猿はどこへ?

いました いました・・・

ノソ ノソ ノソと階段を上ってくると、私の目の前でゴロリと横になり、

更に仰向けになると、オスの象徴が否応でも目に付きました (笑)

でも群れの中ではひときわ大きく貫禄十分です・・・

先程とは打って変わって穏やかな顔つきです・・・

 

そこへ  あそんで !  遊んで! と言わんばかりに二匹の小猿が

やってきました・・・

ところがすぐに大人のメス猿なのか? がやって来て、ボス猿の

毛つくろいを始めました・・・

見ていると余程気持ちがいいのか、ダラ~ としたその風袋は

ボスの面目台無しだな! (笑) と思うぐらいに至福感に覆われて

いて、私も一度でいいからあんな具合にいかないかな・・・ と、

指をくわえて羨ましく見ていましたよ  (笑)

遊んでもらえなかった小猿たちは、また元気にじゃれあいながら

追いかけっこを始めています・・・

 

そこへ先程から弱いものいじめばかりしていて気になっていた

若いヤンチャ猿が割っては入り、二匹の小猿を邪魔し始めました・・・

そしてそのうちの一匹の小猿に襲い掛かるようにのしかかります・・・

逃げ惑う小猿を必要以上に追い掛け回し、その小猿の悲鳴が響き

渡っている時です・・・

ノ ソ っと、ボス猿が起き上がると、急にドスのきいた大きな声で

激しく ギャ ギャー と、叫び声を上げました・・・

そしてそのヤンチャ猿を睨みつけたのです・・・

さすが  ボス!

ヤンチャ猿は一瞬でおとなしくなりました・・・

ボスはそしてまたゴロリとなると、今度は別のメス猿に毛つくろいを

させています・・・   偉い!

そんな猿群れ一家の生活を見ていると、古い昔の人間社会の縮図を

見ているようで羨ましく、いろいろ考えてしまいました・・・

 

その時でした・・・

ボス猿が急に起き上がると、下へ下りていきました・・・

まもなくして・・・

   *  ここや ここや・・・  ワー!  サルがおるやんか!

      びっくりやな!  おい・・・   はよどかせよ!

      昼飯食われへんやないか・・・  そやかて・・・

先頭の数人がそう言っている間もなく、沢山の中高年の男女が

ハイキングスタイルで上ってきました・・・ その数は約20人ぐらい・・・

   *  ワー ごっついサルや!  恐いで!  危ないぞ!

 

見るとあのボス猿は、歯を剥き出しにして怒り、戦闘モードです。

でも、その人の多さに群れの多くはどうしようか? と、ボスの指示を

待っているようで、回りを ウロ ウロとしています・・・

私はあわててリュックをかつぎ、席を空けようと下におりて歩き始め

ました。

  

何人かの人に・・・  

・  こんにちわ!  と、挨拶をしましたが、誰一人として返事が返って

きません・・・

(以前も森の中で、こんな団体さんを見かけて挨拶したのですが、

その時も返事が全く返ってこなかったことがありました・・・ 

私の声が小さかったのかな? )

 

私が風呂ケ谷へ向って歩き出し、しばらくして後を振り返った時、

強烈な衝撃を受けました・・・

何人かの大人が、長い枝やステッキを振り回しながら、猿たちを

乱暴にも、力づくで追い払っているのです・・・

しかも 力いっぱいに棒を振り下ろしながら・・・

ハヨ どけ!  どかんかい!  ぶっ殺すぞ!

などと罵声を浴びせているのです・・・

 

なんてひどい事をする人達なのでしょうか・・・

あの猿たちが、何か悪い事でもしたというのでしょうか?

自分たちが昼飯を食べるからといって、そんな追い出しかたはないで

しょう・・・

あれほど平和にくつろいでいた猿たちが余りにも可哀想です・・・

そもそもこの森は、この動物達のものです・・・  私たちはその森を

使わせてもらっているにすぎません・・・  

余りにも横暴な人間です。

私はその棒を振り下ろしながら、追いかけ回っている人達を、

遠めで見ながら、腹の底から 怒 り が込み上げてきました・・・

涙がでてきました・・・

  ごめんな!

私は同じ人間として、誰に言うともなしに、さっきまであんなに楽しく

遊んでいた猿の群れに、心からの謝りの言葉を口に出していました。

 

暗い気持ちで再び風呂ケ谷へ下りて行くと、前方の山道沿いに、

今度は別の10匹ぐらいの猿の群れがいました・・・

猿たちは一様に警戒の目を私に向けましたが、私の仕草に安心した

のか、すぐにまた木の実を食べたり、ひだまりで毛つくろいを始めたり

して、横を通ってもごく自然にしています・・・

ありがとう!   通らせてもらうよ!

 

木漏れ日の差し込む谷間の一角で、私は休憩にしました・・・

それにしても私の心は曇天のごとく沈み、いつも楽しみな

コーヒータイムもうつろでした・・・

目を閉じて心を落ち着かせていると、何種類かの小鳥たちがさえずって

います・・・

そんな鳥たちのハーモニーを無我の境地になって?  聞くともなしに

聴いていると・・・

突然に右の尾根から ホー ホケキョ ケキョ ケキョ と、ひときわ

森に響き渡る美しいウグイスの鳴声です・・・

しばらくすると、今度は左の尾根から ホー ホケキョ と、再び別の

ウグイスの鳴声です・・・

それからしばらくの間、交互に美しい競演を聴かせてくれるのです・・・

 

私の心はいつしか快晴の気分に変っていきました・・・

この自然から与えられる心の癒し、慰めはすごいものです・・・

私は改めて、猿たちのいる自然豊かな箕面の森に感謝を捧げる

のでした・・・

本当に ありがとう!  ですね。

 09-4-5 (完)

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