変らない森の営み・・・
清水谷林道を下り、自然6号路(四反田谷)の登り口にさしかかりました・・・
今日は、この上の EXPO90・みのお記念の森 の駐車場に車を
とめたので、何としても閉門の4時 (4月からは夏時間で5時まで)には
戻らねばなりません。
しかし、ゆっくりと森の散策を楽しんできた為に、ふっと時計を見るともう
3時23分です・・・
あと37分で戻るには、相当急がねばなりません。
普通の方なら問題なくとも、何しろ足の遅い ゆっくり歩きのドンカメです
から、急にカメからウサギにといわれても無理な話なので焦ります・・・
この山道はそんなにも急坂ではありませんが、とにかく急ぐほどにきつく
感じ、すぐにハーハーハー・・・ と息が切れて、もう心臓がすぐに
パクパクです・・・
そんな時に近くで・・・ ホー ホケキョ!
いつもならその鳴き声に聞き惚れてしまうのですが、今日は自分が焦って
いて ひねくれ心 になっているのか?
どうしても・・・
ホー どっこいしょ! ホー よっこらしょ! ホー しんど~!
と聞えてくるのです・・・
気持ちが焦ると、鳥の鳴き声まで違って聞えてくる事を初めて知りました。
この周辺の森を散策するときに、時間制限のある車で来る事は 私には
無理があるのに、また同じ事を繰り返してしまい、大いに反省猿の気持ち
です。
右下の谷を流れる水の音が今日はいつになく大きく聞えます・・・
見ると清流が水しぶきをあげて岩にあたっていて・・・
そんな渓流の音色が大好きな私は、しばし耳を澄まして聞き入りました・・・
でも、それでなくとも時間が無いので足を止めるわけにもいかず、逆に
イライラがつのります。
半分ぐらいの所にきたときでした・・・
横の細い谷川の中に、何か大きなものが動いています・・・ ドキン!
こうなると気の弱い私としては、もう全てがここ一点に集中して、体が
こわばっているのが分かります・・・ なんなんだ?
よく見れば雌鹿が一頭、水を飲んでいるではありませんか・・・ シカか!
その時、振り返ったシカの目と私の目が合ったとたん、シカはその四足の
威力を発揮して、急斜面の山を一気に駆け上がっていってしまいました。
この四反田谷でシカを見たのは2回目ですが、前回はこの同じ谷川から
私の目の前の山道を通り、長谷山へ駆け上がっていきました。
その足音はダダダダ・・・ と 山肌を力強くけって、いつもその脚力には
感動してしまいます・・・
何しろ今 必死に登っているカメ足の自分をみて、実に羨ましい脚です。
突然のドキン! は パラダイムの転換をもたらしてくれました・・・
それは目を閉じると聞えてくる 小鳥達の合唱ハーモニーであったり、
春風を感じるなびくケヤキの梢、岩にはじけ散る清流の音色、シカが
駆け上がったばかりの森のざわめき・・・
浸り歩きの時に感じるいつもの変らない森の営みがありました。
それまでの焦るイライラ感や、車で来てしまったことへの自省、足の痛み、
汗だく、息切れ・・・ それが為に今日は森を違う目で見て感じていたの
です。
下の谷川を改めてみると、先ほどシカが水を飲んでいた所に 赤い丸い
物がいくつか見えます・・・
双眼鏡で見ると・・・
岩の上や谷間に 赤い花弁のツバキの花 が、まるで一つ一つ丁寧に
置いたようにありました。
その上方には大きなヤブツバキの木があり、沢山の赤い花を咲かせて
いて、その落花の先はまさに 芸術的で美しい 絵模様 が広がって
いるのです・・・
なんというこの絵画的なデザイン構成は・・・
すばらしい! きれいだ!
自然の紡ぎだす営みの美しさにはいつも驚嘆してしまいます。
小さな森のできごとを見るたびに感動し、私の心は無となり、癒されるの
です。
こんな発見と心の癒しも、あの先程の ドキン! があったお陰です・・・
無ければ、今頃はもっと道は先に進んでいたでしょうが・・・
反面・・・ 心の中はストレス、自分への怒りとパクパク心臓に足の
痛みと・・・いっぱいのマイナス感情を抱いて登っていたでしょうね。
でも、いざ現実に戻ると物理的にならざるを得ず、必死になって
ウサギに変身?
汗だくになってやっと車に到着です・・・ 見れば 4時03分・・・
閉門の為に係りの人が遠くに見え、ギリギリのセーフでした・・・ ほっ!
その時に、タイミングよく鳴いたウグイスの声は ホー ゴクローサン! と
聞えましたよ。
夕暮れで冷たくなったそよ風が、額の汗の上を通るたびに・・・
気持ちいい・・・!
森の営みはいつもと変らないのに、人の心の有様で全く違ったように
感じるものなのですね・・・
今日は谷川で水を飲んでいる鹿を しか(しっかり)と見たことだし?
お陰で、今日も いい一日 を過ごす事が出来ました・・・。
’13 3-28