日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

新国立競技場は誰の責任か

2015年07月15日 09時33分24秒 | 日々雑感
 新国立競技場の建設が2520億円の予算で、有識者会議により承認された。有識者の集まりであるので、さぞかし有意義な議論により、有意義な建物が出来上がると思っていたが、とんでもないようだ。
 予算の膨大さばかりで無く、予算には組み込まれていない廃土の処理問題や工事要員確保等費用が更に増える可能性が十分高いことも既に指摘されている。十分検討して予算の組んだところで、予算以下で済んだ公共施設の建設などこれまでに聞いたことがない。多分3000億円を超えることになるのではないだろうか。
 有識者とは、森善朗元ラグビー協会会長、河野一郎日本スポーツ振興センター(JSC)理事長、下村博文文科相、舛添要一東京都知事等である。なるほど、色々な知識を持ち合わせているような人々の集まりである。しかし、上記の問題が指摘されているにも関わらず、この会議に建築の専門家が誰もいないことに、出席者全員が疑問に思わなかったのであろうか。
 メンバーの筈の建築家の安藤忠雄氏は、個人の都合によりこの会議には出席しなかったとのことである。個人の都合と言うのは、どうも裏がありそうであるが、安藤氏はお偉方の言いなりにはならない反骨精神のある人物と信じている。
 以前、安藤氏の講演会に出席したことがある。氏の経験上での話は面白かった。ある建築物を計画していたが、国の許認可権を有する複数の組織の許可を得なければならなかったが、遅々として進まなかった。そこで、氏はある組織に許可を得に行った際、「もう他の組織の許可を得た。残るはお宅だけだ。」と嘘をついて許可を得た。国の組織は、まず自ら進んで責任をとることはしない、他の組織が許可したなら、追従しようとの無責任体質であり、また、各組織は縦割り組織であるので、わざわざ他の組織に確認することはしない。従って、嘘はばれずに、無事建設は完了した、との話だ。
 オリンピックを招致したいために、大勢の人間が集まり、立派な国立競技場もその場の雰囲気で何と無く決まってしまったに違いない。誰が責任者と言えないところが、日本的である。各組織に属するお役人も、自分の縄張りをしっかり決め、余計なことは考えない、口出ししないとの体質が身に沁みているのであろう。国立競技場の設立総責任者は下村文科相であるとの話ではあるが、彼が予算を決められるわけではないし、責任過多であろう。彼としてはオリンピックを招致したのは東京都であるので、舛添要一東京都知事が総責任者であると言いたところであろう。新たに、遠藤利明五輪担当相が任命されたが、遠藤氏がすべて決められるとは到底思えない。やはり、総責任者としては安倍首相しか考えられない。
 予算2520億円の財源、そして予想される更なる膨らみ、オリンピック後の維持費等、問題点は山積みであるが、期限が迫っているとの理由で安倍首相も承認してしまった。
 ラグビーのワールドカップ開催を別の既存の競技場に移せば、1年の余裕が生まれ、計画を見直すことが出来る。安倍首相がここで見直しを支持すれば、国民の支持率は一挙に上がるに違いない。リーダーシップが発揮されたと、集団自衛権の件でも支持が広がる筈であるが、この好機を逃してしまった。安倍首相は、国民より森元首相の方が気になると見える。(犬賀 大好-146)