日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

日銀金融緩和と限界

2016年08月24日 09時36分54秒 | 日々雑感
 日本銀行は7月29日の金融政策決定会合で、株価指数に連動する上場投資信託(ETF)の買い入れ額をほぼ2倍に増やす追加の金融緩和を決めた。今回の金融緩和でETFの買い入れ額は、今の年3.3兆円から6兆円に拡大するが、大規模緩和で市場に流すお金の量は80兆円で変えず、マイナス金利幅の拡大なども見送ったとのことだ。

 金融緩和の手法にETFの買い入れを増やす手があるとは、経済素人の私は全く知らなかった。多分、未だ、いろいろな手が残っているのであろうが、その波及効果は次第に小さいものになってくるのではなかろうか。

 今回決めたETFの買い増しは、日銀が損を抱えるリスクはあるものの、株価を下支えする効果が期待できるとのことである。株価の下支えと言えば、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が有名である。アベノミクスの成長戦略の一つとして、年金運用改革があった。GPIFの投資対象に対する株式比率を 従来の2倍の50%に引き上げ、国民年金と厚生年金の積立金、140兆円の半分が株式市場へ投入されたとのことである。

 ETFの6兆円は、GPIFの70兆円に比べれば1割以下であるが、個人投資家からすれば莫大な額であり、株価下支えの効果は抜群であろう。しかし、政府はアベノミクスのエンジンを最大限に吹かすと繰り返し述べ、市場は大幅な緩和拡大を期待していたが、6兆円規模では少ないと失望感が広がったとのことである。6兆円でも少ないとは、市場も金銭感覚が麻痺してきたに違いない。

 昨年の今頃、日経平均の株価は2万円を超えていたが、今年8月には1.7万円以下と低迷している。円高と原油安がその原因とのエコノニストの分析であるが、日本の株価は外国次第となり、アベノミクスの第3の矢である国内の成長戦略は歴代の政権と変わりなく、またしても失敗となりそうな気配である。

 日銀の国債保有額が400兆円に迫る中、限界が見え始めたようだ。日銀の購入額は新規発行額を超え、市場に流通する国債の3割超を買い占めているのだそうだ。IMFのマレー副報道官は、先月28日、日銀の金融政策について、国の借金を日銀が代わりをしているだけとの懸念が強まれば、金利の急騰などの深刻な市場の反応が起こるリスクがあると、釘を刺したそうだ。

 日本の国債は、ほとんどが日本人が保有しているため、家庭内における貸し借りと同じで、全く問題ないとの主張がある。消費税の再延期により日本の財政に関する世界の市場の評価が低下したが、相変わらず円高が進んでいるところを見れば、なるほどと納得してしまう。

 しかし、国債離れも着実に進んでいる。三菱東京UFJ銀行が、国債入札に特別な条件で参加できる[国債市場特別参加資格者」の資格を7月13日に返上すると財務省に届け出た。この資格を有すれば財務省と意見交換できる利点があるが、すべての入札に4%以上を応札し、一定割合以上を落札する義務を負うそうだ。資格返上は国債購入のメリットが無くなったということであろう。現在、資格を有するのは、メガバンク2社と証券会社19社となったが、彼らが右に倣へすると国債の人気は一気に下がるに違いない。当然そうはならないように財務省は裏で必死に引き留めているに違いない。

 日銀は8月3日、6月15,16日に開いた金融政策決定会合の議事要旨を公表した。巨額の国債を買う今の緩和手法を続けることに複数の政策委員から懸念が示されそうだ。政策委員は定期的に交代するが、金融緩和の懐疑派が辞め、積極派に交代しているとの話もある。それでも疑問が持たれてきたようである。そこで、これまでの緩和策の総括的な検証を9月の会合で行う予定とのことである。黒田総裁も安倍首相の意向を受けて異次元の金融緩和を続けてきたが、いよいよ方向転換を迫られるかも知れない。2016.08.24(犬賀 大好-262)