東京都の豊洲新市場の建物地下に盛り土がされていなかった問題で、犯人グループがようやく突き止められたとのことだ。小池百合子知事が今月1日の臨時記者会見で、盛り土問題の責任者8人の名前を挙げたのだ。
それによると、豊洲市場の土壌汚染対策として盛り土をすることは2009年2月に作成された「豊洲新市場の整備方針」に明記され、当時の石原慎太郎知事が決裁していた。今年9月の内部調査では「盛り土は有識者の専門家会議の提言」とされていたが、それ以前に都が機関決定していたとのことだ。
ところが、2011年8月の部課長級会議で、建物地下に盛り土を行わない、との方針が決まり、翌9月に当時の市場長が盛り土なしの設計を業者に発注することを承認、これが都の方針として最終決定されたという。
しかし、責任者の一人、中西副知事は”豊洲市場の敷地全面になされているものと受け止めていた”と述べ、盛り土の未実施は知らなかったと釈明した。誰かが責任を取らなくてはならないため、立場上、責任を取らざるを得ないとの判断である。
また、責任者の1人とされた中央卸売市場の元新市場整備部長、宮良真氏(退職)が”盛り土をしないことを了解した事実はない”などとする反論書を都に提出していた。
他の責任者6名の言い分は不明であるが、犯人と特定された8名の誰もが、監督責任の不在を認めるだろうが、地下空間の設置を直接指示したことを認めることはないだろう。
この現象は東京電力の福島第1原発の事故、JR西日本の尼崎脱線事故の場合と同様に、責任問題が有耶無耶になるとの懸念はあったが、責任者を同定したのは小池知事の手腕であろうか。しかし、あくまで立場上の責任者で、犯人とは異なる。犯人であれば、何らかのメリットを得る筈だが。
すなわち、建物下に盛り土をせずに、地下空間を設けるメリットに関しては何ら明らかにされていない。かろうじて、万が一汚染物質が出てきた場合、この地下空間を利用して対処するためとの説明はあったが、具体的にどのように利用するか、あるいはなぜ専門委員会へ相談しなかった、等の疑問は残る。
今回の不祥事を、行政の縦割りの弊害が個々の職員の無責任体質につながった結果であると解説する者もいるが、その一般論的な説明だけでは釈然としない。それは、役人は”自ら責任を問われるようなことは絶対しない”と確信するからである。盛り土をするとの石原都知事の決済や専門委員会の提言をなぜ無視したのか疑問が残る。
この疑問に対し都議からは疑問の声が発せられない。小池知事は、この疑問を十分認識しているであろうが、都庁の内部通報システムを整備することで対応すると言明し、これで幕引きとするつもりかも知れない。
一方、豊洲市場開設の遅れは、築地市場の建物劣化によるリスク増大や新市場の冷凍設備維持費用の増大等、を招き、早期解決が望まれる。小池知事も責任問題だけをやっている訳にはいかないだろう。
移転延期に伴う民間業者の損失補償については、有識者会議で検討する予定とのことである。補償金は都が支払うことになり、都議会の承認が必要になる。そこで、当然補償金が必要となった原因が再度議論になるだろう。先の8名が何のために盛り土をしなかったか、小池知事に代わり、都議の追及が期待される。しかし、都議会の自民党会派は内田元幹事長の意向次第であるとの評判である。ここでの追及が甘かった場合、豊洲移転に関わる内田氏の関与が勘繰られる。
更に、損害賠償金の支払いに関し、訴訟を誰かから起こされた場合、移転延期の原因は盛り土の不実行だけでは無いと言えども、先に名指しされた8名の責任者は幾ばくかの賠償金を支払らざるを得ないだろう。そうなると必死に抵抗する筈だ。逆にそこまでしないと、真相は分からないと言うことかも知れない。2016.11.12(犬賀 大好-285)
それによると、豊洲市場の土壌汚染対策として盛り土をすることは2009年2月に作成された「豊洲新市場の整備方針」に明記され、当時の石原慎太郎知事が決裁していた。今年9月の内部調査では「盛り土は有識者の専門家会議の提言」とされていたが、それ以前に都が機関決定していたとのことだ。
ところが、2011年8月の部課長級会議で、建物地下に盛り土を行わない、との方針が決まり、翌9月に当時の市場長が盛り土なしの設計を業者に発注することを承認、これが都の方針として最終決定されたという。
しかし、責任者の一人、中西副知事は”豊洲市場の敷地全面になされているものと受け止めていた”と述べ、盛り土の未実施は知らなかったと釈明した。誰かが責任を取らなくてはならないため、立場上、責任を取らざるを得ないとの判断である。
また、責任者の1人とされた中央卸売市場の元新市場整備部長、宮良真氏(退職)が”盛り土をしないことを了解した事実はない”などとする反論書を都に提出していた。
他の責任者6名の言い分は不明であるが、犯人と特定された8名の誰もが、監督責任の不在を認めるだろうが、地下空間の設置を直接指示したことを認めることはないだろう。
この現象は東京電力の福島第1原発の事故、JR西日本の尼崎脱線事故の場合と同様に、責任問題が有耶無耶になるとの懸念はあったが、責任者を同定したのは小池知事の手腕であろうか。しかし、あくまで立場上の責任者で、犯人とは異なる。犯人であれば、何らかのメリットを得る筈だが。
すなわち、建物下に盛り土をせずに、地下空間を設けるメリットに関しては何ら明らかにされていない。かろうじて、万が一汚染物質が出てきた場合、この地下空間を利用して対処するためとの説明はあったが、具体的にどのように利用するか、あるいはなぜ専門委員会へ相談しなかった、等の疑問は残る。
今回の不祥事を、行政の縦割りの弊害が個々の職員の無責任体質につながった結果であると解説する者もいるが、その一般論的な説明だけでは釈然としない。それは、役人は”自ら責任を問われるようなことは絶対しない”と確信するからである。盛り土をするとの石原都知事の決済や専門委員会の提言をなぜ無視したのか疑問が残る。
この疑問に対し都議からは疑問の声が発せられない。小池知事は、この疑問を十分認識しているであろうが、都庁の内部通報システムを整備することで対応すると言明し、これで幕引きとするつもりかも知れない。
一方、豊洲市場開設の遅れは、築地市場の建物劣化によるリスク増大や新市場の冷凍設備維持費用の増大等、を招き、早期解決が望まれる。小池知事も責任問題だけをやっている訳にはいかないだろう。
移転延期に伴う民間業者の損失補償については、有識者会議で検討する予定とのことである。補償金は都が支払うことになり、都議会の承認が必要になる。そこで、当然補償金が必要となった原因が再度議論になるだろう。先の8名が何のために盛り土をしなかったか、小池知事に代わり、都議の追及が期待される。しかし、都議会の自民党会派は内田元幹事長の意向次第であるとの評判である。ここでの追及が甘かった場合、豊洲移転に関わる内田氏の関与が勘繰られる。
更に、損害賠償金の支払いに関し、訴訟を誰かから起こされた場合、移転延期の原因は盛り土の不実行だけでは無いと言えども、先に名指しされた8名の責任者は幾ばくかの賠償金を支払らざるを得ないだろう。そうなると必死に抵抗する筈だ。逆にそこまでしないと、真相は分からないと言うことかも知れない。2016.11.12(犬賀 大好-285)