11月9日、大方の予想を裏切り米国次期大統領にトランプ氏が決まった。同氏は問題発言が多いが、その一つに、”地球温暖化はでっち上げ”との主張がある。しかし、様々な角度からの検討の結果からして、地球温暖化は温室効果ガスの影響であることは間違いないであろう。
地球温暖化対策を話し合う国連の会議、気候変動枠組条約第22回締約国会議(COP22)が北アフリカのモロッコで7日開幕され、今月4日に発効したパリ協定の実行に必要なルール作りの議論が始まった。日本は、国会承認が遅れたため、この議論に正式に加わることが出来なかったが、COP22のメズアール議長は”日本はこれまでも温暖化対策において資金や技術面で貢献してきた”、と賛辞を述べ、この会議でも重要な役割を果たす期待を表明した。その通りで、これまで、京都議定書等で世界を主導してきた日本抜きでは考えられないだろう。
米国と中国は今月初め、2020年以降の地球温暖化対策「パリ協定」を批准したと発表した。これにより温暖化対策の国際会議に、2大排出国の米国と中国が始めて参加したのだ。両国の同協定批准で、190カ国・地域余りが同意した協定は年内発効の可能性が高まった。これで、地球温暖化対策は万全となり、温度上昇は抑えられるだろうと期待されるが、筋書き通りには進まないであろう。
米国議会は、排出ガスの規制は国内の製造業の競争力を弱めると反対の立場であったが、環境問題に熱心なオバマ大統領が反対を押し切ったため、ようやく参加となったのだ。
中国は、毎年冬北京等の大都会におけるPM2.5発生で有名であり、対策が急がれる筈であるが、片や世界の製造業の立場を死守するため、本気で取り組むようには思えない。単に国際的に一流国になったこと示す見せかけの姿勢か、オバマ現大統領に擦り寄るためとの説もある程である。中国が、例え本気で取り組んだとしても、北京に青い空を取り戻するためには、何年もかかるであろう。
さて、トランプ次期大統領は、パリ協定破棄を公約に掲げて当選した。パリ協定は即時退出来ないことを規定しているが、脱退できないとしても消極的な姿勢は変わらないであろう。
パリ協定の合意事項の中では、工業化前すなわち産業革命前と比して世界の平均気温の上昇を 2℃より十分に下回る水準に抑制し、1.5℃以内に抑えるよう努力するという長期目標を決めている。京都議定書は、数値目標の「達成」を先進国に義務づけていたが、パリ協定はすべての国に対して、自国の目標を作成・提出し、目標達成のための国内措置を実施することを義務とした。
一見、パリ協定ではより厳しい条件が課せられたように見えるが、そもそも、達成されなくても罰則の無いことは京都議定書と同じで、それが一番の問題である。国際的には、自国はこのように高い目標を掲げて努力していると宣言しても、自国の都合により何もしなくてもよいわけだ。COP22は、2018年までに詳細ルールを作ることを合意して19日閉幕したが、米国でのトランプ大統領の誕生を始めとする保護主義の高まりの中、見通しは極めて暗い。
日本は、昨年暮れ、エネルギー・環境イノベーション戦略策定ワーキンググループの設置を決めた。そして、今年3月、内閣府の有識者会合は、革新的な技術を開発して温室効果ガスの排出を大幅に減らすことを目指す「エネルギー・環境イノベーション戦略」の案をまとめた。COP22の開催とは関係なく、それと同じ目標である気温上昇幅を2度以内に抑えるためには、50年までに300億トン以上減らす必要があるとし、更なる省エネを目指した自動車、エネルギーの蓄積技術、効率的な二酸化炭素の分離・回収技術、人口知能やビッグデータなどの活用によるエネルギーシステムの最適化、等を検討課題に掲げた。
COP22に正式参加出来なかったと言って嘆くことはない。単なる目標設定ではなく、実質的に効果のある検討や実行が必要だ。地球温暖化による異常気象の発生は年々増加するだろう。これらの技術はいづれ世界から注目され、日本の立場が再認識される。2016.11.23(犬賀 大好ー288)
地球温暖化対策を話し合う国連の会議、気候変動枠組条約第22回締約国会議(COP22)が北アフリカのモロッコで7日開幕され、今月4日に発効したパリ協定の実行に必要なルール作りの議論が始まった。日本は、国会承認が遅れたため、この議論に正式に加わることが出来なかったが、COP22のメズアール議長は”日本はこれまでも温暖化対策において資金や技術面で貢献してきた”、と賛辞を述べ、この会議でも重要な役割を果たす期待を表明した。その通りで、これまで、京都議定書等で世界を主導してきた日本抜きでは考えられないだろう。
米国と中国は今月初め、2020年以降の地球温暖化対策「パリ協定」を批准したと発表した。これにより温暖化対策の国際会議に、2大排出国の米国と中国が始めて参加したのだ。両国の同協定批准で、190カ国・地域余りが同意した協定は年内発効の可能性が高まった。これで、地球温暖化対策は万全となり、温度上昇は抑えられるだろうと期待されるが、筋書き通りには進まないであろう。
米国議会は、排出ガスの規制は国内の製造業の競争力を弱めると反対の立場であったが、環境問題に熱心なオバマ大統領が反対を押し切ったため、ようやく参加となったのだ。
中国は、毎年冬北京等の大都会におけるPM2.5発生で有名であり、対策が急がれる筈であるが、片や世界の製造業の立場を死守するため、本気で取り組むようには思えない。単に国際的に一流国になったこと示す見せかけの姿勢か、オバマ現大統領に擦り寄るためとの説もある程である。中国が、例え本気で取り組んだとしても、北京に青い空を取り戻するためには、何年もかかるであろう。
さて、トランプ次期大統領は、パリ協定破棄を公約に掲げて当選した。パリ協定は即時退出来ないことを規定しているが、脱退できないとしても消極的な姿勢は変わらないであろう。
パリ協定の合意事項の中では、工業化前すなわち産業革命前と比して世界の平均気温の上昇を 2℃より十分に下回る水準に抑制し、1.5℃以内に抑えるよう努力するという長期目標を決めている。京都議定書は、数値目標の「達成」を先進国に義務づけていたが、パリ協定はすべての国に対して、自国の目標を作成・提出し、目標達成のための国内措置を実施することを義務とした。
一見、パリ協定ではより厳しい条件が課せられたように見えるが、そもそも、達成されなくても罰則の無いことは京都議定書と同じで、それが一番の問題である。国際的には、自国はこのように高い目標を掲げて努力していると宣言しても、自国の都合により何もしなくてもよいわけだ。COP22は、2018年までに詳細ルールを作ることを合意して19日閉幕したが、米国でのトランプ大統領の誕生を始めとする保護主義の高まりの中、見通しは極めて暗い。
日本は、昨年暮れ、エネルギー・環境イノベーション戦略策定ワーキンググループの設置を決めた。そして、今年3月、内閣府の有識者会合は、革新的な技術を開発して温室効果ガスの排出を大幅に減らすことを目指す「エネルギー・環境イノベーション戦略」の案をまとめた。COP22の開催とは関係なく、それと同じ目標である気温上昇幅を2度以内に抑えるためには、50年までに300億トン以上減らす必要があるとし、更なる省エネを目指した自動車、エネルギーの蓄積技術、効率的な二酸化炭素の分離・回収技術、人口知能やビッグデータなどの活用によるエネルギーシステムの最適化、等を検討課題に掲げた。
COP22に正式参加出来なかったと言って嘆くことはない。単なる目標設定ではなく、実質的に効果のある検討や実行が必要だ。地球温暖化による異常気象の発生は年々増加するだろう。これらの技術はいづれ世界から注目され、日本の立場が再認識される。2016.11.23(犬賀 大好ー288)